メルマガ「発声は面白くて深い!」記事
隔週刊メルマガ「発声は面白くて深い!Let's声の筋トレ」の主要記事です 発声運動エクセサイズ研究会発行
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HN:
渡邉 佳弘
HP:
発声運動エクセサイズ研究会
性別:
男性
職業:
言語聴覚士、学術博士
自己紹介:
発声運動エクセサイズ研究会代表
このメルマガをきっかけとして、幅広い方々に面白くて深い発声という現象に興味を持っていただければ幸いです
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2016
07,04
03:57
【コラムその35】 歌と言葉の起源が気になる
CATEGORY[声のコラム]
◆気になるボイスコラム◆ vol.035 2016.07.04号より
☆声にこだわりを持つ筆者がこだわってお届けします☆
歌と言葉の起源が気になります。
かねがね不思議に思っていたのですが、言葉は一体どこから来たのでしょう。そして歌は?人間はもともと声を出せるようにはできています。 ですから人類で一番最初に言葉を使い始めた人が、物の意味と声のパターンを結びつけることを発明したとしても、それはあることかもしれません。
でもそれなら子音やら母音やらはどこから来たのでしょう。多種多様な発音を組み合わせた単語など、誰も話していないところでとてもじゃないが思いつける気がしません。 さらにアクセントだってあるわけです。人間は放っておけば言葉を話すわけではないことはアヴェロンの野生児の例が既に証明しています。 最初はごく簡単な発声で、だんだん音が複雑に進化したにしても、やっぱり子音など思い浮かばない気がします。 チンパンジーに言語を教えた研究では、母音は言えても子音がどうしても言えなかったという話です。
そして歌はどうでしょう。なぜ歌という不思議なものがあるのでしょう。 言葉はコミュニケーションの道具であり、生活上の必要性から生まれたのでしょうが、歌はどんな必然性があるのでしょう。 農耕だと作業中の暇つぶしとか楽しみとかありそうですが、原始狩猟生活には必然性はなさそうです。 にも関わず現在狩猟生活をしている民族にも歌はあります。それどころか地球上に数千ある全ての自然存在の言語で歌がない体系はただのひとつもないとのことです。 いったい歌ってなんでしょう。気になります。
それについて東京大学の岡ノ谷一夫先生が面白い説を提唱していらっしゃいます。 岡ノ谷先生は動物行動学者で、ジュウシマツの鳴き声を研究しているうちに、鳴き声には地鳴きと歌があり、 歌はヒトの言語と同じように、いくつかの音の並びからできていること、その音素を一定の基準で組み合せて歌っていて、それを求愛行動に使っていることを発見したのだそうです。
現存の生物でいわゆる音声言語を持っているのは人間だけです。しかし歌を持っているのは、人間だけじゃありません。 小鳥やクジラなどが道具としての歌を後天的に学習して身につけています。聴覚に問題がある小鳥は歌を習得できないそうです。 つまり初めにあったのは歌の方である可能性が考えられます。小鳥という見本があるので、それを真似して歌うところからなら簡単に始められそうです。 やっぱり小鳥と同じように求愛に使っていたのかもしれません。その歌の一部を切り取って言葉とした、とするなら全く自然でありうることです。 岡ノ谷一夫「さえずり言語起源論ー新版 小鳥の歌からヒトの言葉へ」(岩波科学ライブラリー) は一読をお薦めします。
とすると歌が全ての言語にあるのも、どうして歌が人を惹きつけるのか、ということもうなずけます。 求愛に使っていたなら、歌手の皆さんがモテるのも、遥かな昔、言語のない時代から延々と続いてきた人の性向ということになりますね。 とすると良い声を出して上手に歌を歌えば、遺伝子レベルで多くの人を惹きつけることができるというわけです。 言葉よりも歌の方が我々には響く、ともいえるでしょう。実に発声の重要性が再認識される面白い話です。歌と言葉の関係がますます気になります。
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