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2015 03,16 06:00 |
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◆発声のワンポイント解説◆ vol.004 2015.03.16号より
☆発声にまつわるわかりにくい用語・概念や発声エクセサイズのコツなど、テーマを毎号ひとつ選んでワンポイント解説します☆
発声トレーニングとかボイトレというと、たいていの指導者に「とにかく腹式呼吸ができなければダメ」と言われます。たくさん出ているボイトレ本をみてもほとんどが判で押したように「腹式呼吸で!」と書いてありますね。さながら腹式呼吸は神聖不可侵の神話のようです。でもその理由となると、力強い声になるから、声が深くなるから、大きく吸えるから、というものから、集中力が高まるから、どっしりするから、気が高まるから、支えとして不可欠だから、というものまで。これだけ多種多様ではちょっと説得力に欠けるというものです。
発声に呼気が必要なのはいうまでもありませんが、実はそこに腹式・胸式の差はありません。腹式の方が肺活量が多くなるということもありません。腹式だと声が続くというのも間違い。そもそも肋間筋などの胸式呼吸のための筋と横隔膜などの腹式呼吸のための筋の間に特に機能の差はありません。生物学的に考えても差をつける意味がありませんよね。要は息さえきちんと出ていれば声はちゃんと出るのです。胸式と腹式と二つあるのは、たぶん呼吸が生命維持に不可欠なので一方が使えなくなった時の予備システムだと思います。ちなみに通常は男女の差なく誰でも多かれ少なかれ両方の呼吸を同時にしています。その割合が人により異なるだけです。
ではなぜ腹式がこんなに推奨されるのでしょう。
問題は筋肉の場所です。胸式呼吸で主に使う筋肉は肋間筋ですが、呼吸補助筋として喉頭のそばにある胸鎖乳突筋や斜角筋も使います。胸式呼吸をすると多かれ少なかれこれらの補助筋にも力が入りますので、場所が近い喉頭筋にもつい一緒に力が入ってしまいます。そのため胸式で発声すると声道が狭くなって声が小さくなったり、響かなかったり、長く続かなかったり、ということが起こってしまいがちなのです。一方、腹式呼吸で使う横隔膜や腹筋群は喉頭から遠いため、こちらのほうは喉頭の動きに影響しません。従って呼吸によって声道が狭くなることもありません。腹式が胸式よりも有利な点はここにあります。逆に言えば、喉頭に余分な力さえ入らなければ、胸式であっても一向に差し支えないということになります。胸鎖乳突筋や斜角筋だけが働くようにコントロールすれば良いのです。
ただしウォームアップやトレーニング、呼吸のコントロールのしやすさ、ということまで考えると確かに腹式の方がやりやすいと思います。腹筋群は場所的に見やすいですし、筋肉も大きいので確認が容易ですから。
つまり腹式呼吸に良い点があるのは確かですが、その主なメリットはトレーニングがしやすい、ということに尽きます。ですから胸式の方が自分には合っているとか、腹式は練習しにくい、という方は胸式を選んでいただいて全く構いません。腹式呼吸というものは神話化せねばならないほど絶対的なものではないのです。
次回はこの続編、「腹式呼吸トレーニングの誤解」をお届けします。
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