2024 11,23 06:57 |
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2016 04,04 06:39 |
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◆気になるボイスコラム◆ vol.029 2016.04.04号より
☆声にこだわりを持つ筆者がこだわってお届けします☆ 前にもちょっと書きましたが、声のことに興味を持って色々考えたり試したりして日々を過ごしているうちに、人の声を耳にするたびに声の質などが気になるようになりました。 そのうちさらに病が高じて、その人の喉頭がどんな状態になっているか、どの部分をどう動かしているか、自動的に頭にポワーンと思い浮かぶようになりました。 妙な習性が身についたものだと思います。 さてそうなると解剖的にみて、どの人の発声法がもっとも素晴らしいか、考えてしまうものですよね。 人それぞれあると思いますが、私がこれまで聴いた中で、他の追随を許さずトップと思われるのは故 藤山一郎さんです。これはもうダントツです。 youtubeなどでもたくさん動画が見られますから、一度ご覧になっていただけるとご参考になるでしょう。 https://m.youtube.com/watch?v=P-QUP13GAeA https://m.youtube.com/watch?v=MCdT05hLYFA とにかく発声が非常に安定しています。長いフレーズでも息が苦しそうな様子が全くない。余裕綽々です。 高音になると大抵の歌手は声帯や声道を締めすぎてしまい、声量が落ちてしまったり、くぐもってしまったり、かすれたりします。藤山さんはそれが全くありません。 高音でも声量は全然落ちません。相当な高音になっても、くぐもった感じにも全くなりません。実にストレートに地声と全く同じ声が出ています。 これは書くと簡単そうですが、実際藤山さんレベルにできる人はほとんどいません。 さらに音程の揺れも全くなく、スパッと目標の高音音程を出しています。しかもどんな音程でも息や雑音の混じらない綺麗な声を出しています。 声は非常に響きのある軟らかい声です。本当に完璧な発声法です。奇跡としか言いようがありません。 おそらく藤山さんは、声帯と喉頭周囲の筋肉のコントロールが恐ろしく巧みで、発声に際してピンポイントに声門閉鎖に関わる筋だけを収縮させることができたのだと思います。 そうでなければあのストレートな高音はだせないでしょう。もちろん口蓋帆挙筋や咽頭収縮筋、輪状甲状筋のコントロールも自在。 だからこそ口腔・咽頭腔を広げて声を存分に共鳴させたり、目標の音程をスパッと出せたりしたのでしょう。 さらに藤山さんは歌によってクルーナー唱法を用いていたとのこと。 クルーナー唱法とはマイクロフォン使用を前提として、声を張り上げず、滑らかに耳元でささやくように歌う唱法だそうです。 最初に確立したのはビング・クロスビーで、フランク・シナトラに受け継がれていったそうです。 代表的なものはビング・クロスビーの「ホワイト・クリスマス」だそうですのでご参考まで。 https://m.youtube.com/watch?v=NF9FEtI4Li4 この唱法をも使いこなし、しかも長いフレーズでも安定して発声できるとは、クレバーであり、かつ呼吸筋のコントロールも自在であったことになります。 クレバーで声帯・喉頭周囲筋・呼吸筋全てのコントロールは完璧。藤山さんはどのようにしてその奇跡とも言える発声法を身につけられたのでしょうか。 そしてその発声法は無意識にできてしまったものなのでしょうか、自覚的に掴んだものなのでしょうか。 藤山一郎さんは明治44年生まれで、東京音楽学校(後の東京藝術大学音楽学部)を首席で卒業されているのだそうです。 おそらくその折に発声法のトレーニングを積まれたのでしょう。東京音楽学校の新しい歴史を作る逸材、といわれたそうです。 藤山さんはその後、傾いた実家の借金を返すために流行歌手として活躍したのそうですが、 時に「増永丈夫」の本名でクラシック音楽の声楽家・バリトン歌手としても活躍されたそうです。 オペラなどのクラシック曲の発声と流行歌の発声をバランスをとりながら模索し、正当な音楽技術と知的解釈をもって歌謡曲の詠唱に独自の境地を開拓した、 との功績により平成4年に国民栄誉賞を受賞しています。 そこからするとおそらく無自覚な天才性により身につけた、というよりは、自覚して使えるように身につけた、と思われます。 ただ晩年になっても全く衰えないその発声法の維持についてはやはり天賦の才としか言いようがありません。 藤山一郎さんが亡くなられてもう23年経ちます。まだ藤山さんを超える発声法の持ち主には寡聞にしてお目にかかれていません。 藤山さんは100年に1人のレベルの傑物なのでしょうか。藤山一郎さんレベルの奇跡の発声法が気になります。 PR |
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