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2017 01,15 03:41 |
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◆発声&運動トレーニングトピックス◆ vol.048 2017.01.16号より
☆発声や運動トレーニングに関する最新の知見や気になるトピックスをご紹介します 「Aerobic Exercise as a Warm-Up for Singing: Aerodynamic Changes」 Monica McHenry, Joseph Evans Department of Speech-Language Pathology, School of Health Sciences and Practice, New York Medical College, Valhalla, New York Journal of Voice Vol 30, Issue 6, 2016, p693-697 16人の大学院生と6人の学部生に30分間のトレッドミルのトレーニングを実施、有酸素運動ウォームアップが歌唱に及ぼす影響を調査した、という研究。 結果、ほとんどの参加者が、有酸素運動後の歌唱時に有意な空気力学的変化を示した、とのこと。 今後は早朝の高音発声など特殊な状況のウォームアップを考える必要があるだろう、と著者らは結んでいます。 トレッドミルというのは室内でランニングを行うためのトレーニングマシンです。ルームランナーといった方が分かりやすいかもしれません。 ランニングで呼吸数が多くなることで呼吸筋が活発に動き、結果歌唱時にも呼吸筋が動きやすく空気力学的検査の数値が上がった、というところでしょう。 つまり呼吸筋を動かしたところがいいわけで、それならストレッチでもブローイングでもいいことになりますね。 ランニングが歌唱に良いというからには、やっぱり他との比較検討が必要でしょう。 PR |
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2017 01,04 08:35 |
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◆発声&運動トレーニングトピックス◆ vol.047 2017.01.04号より
☆発声や運動トレーニングに関する最新の知見や気になるトピックスをご紹介します 「The Impact of Vocal Cool-down Exercises: A Subjective Study of Singers' and Listeners' Perceptions」 Kari Ragan School of Music, University of Washington. Journal of Voice Vol 30, Issue 6, 2016, p764.e1-764.e9 60分の発声負荷後、クールダウンなしとクールダウンありで声に差があるかどうか、20名の女性歌手にVHIで自己評価をしてもらい、 熟練聴取者にその歌手の歌声と話し声の評価をしてもらった、という研究。 結果、歌手は、自己評価でクールダウンに肯定的な回答をしたが、熟練聴取者がクールダウン後の声を識別できる率は46%であった、とのこと。 歌手には様々な変数要因があるため、声へのクールダウンの効果を定量化することは難しい、と著者らは結んでいます。 発声は筋肉運動である、という視点から考えると、運動後のクールダウンは必ず必要と思われるのですが、意外にその差は第三者からは分かりにくい程度なのかもしれません。 著者の言うように変数が絡んでいることもあるでしょうが、評価法を工夫する余地もまだあるでしょう。 |
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2017 01,04 08:29 |
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◆気になるボイスコラム◆ vol.047 2017.01.04号より
☆声にこだわりを持つ筆者がこだわってお届けします☆ 前回の続きです。人工音声はいまやどんどん進化しています。コンピュータの声も、だんだん人の声と区別がつかなくなるでしょう。 人工音声の技術が進むと今後どうなるのでしょうか。ちょっと考えてみたいと思います。 といってもずっと先のことは分かりません。あまり先のことは実感もわかないですし、外れる公算が大きいですから意味も乏しくなってしまいます。 ですからおよそ10年後、今の技術から推定して現実的に可能で、市販できて広まりそうなこと。それはなにか。 とりあえず、すでに失われた過去の人の歌声を蘇らせることなんかどうでしょう。 もちろんある程度の声のサンプルが揃っていることが前提です。 ボーカロイドと同じ原理で、音をつなぎ合わせて作り出せると思われますが、技術が進めばボーカロイドの時のようにすべての音の組み合わせが揃っていなくても、 サンプルから推定して、足りない渡り部分の音は作り出せるようになるのではないかと思います。 これにより、例えばビートルズやマイケル・ジャクソンなどの、多くの人々にとって懐かしく、 もう一度聴きたいと願うようなアーティストに、新しい現代の曲を歌わせたり、新譜を歌わせる、といったことができます。 もちろん楽曲の新発売というようなことではなく、お遊びアプリとしての使い方、 例えば、個人的にこの人にこの曲を歌わせてみたい、あるいは自分で作った歌を歌わせてみたい、という使い方になるでしょう。 ラインナップの揃え方では充分商品として通用すると思います。 ところで、歌だけじゃつまらない、どうせならあの憧れの俳優や歌手と会話できたらいいのに、と思われる向きがあるかもしれません。 確かにそうです。ただ結論からいうと、コンピュータに実在の特定の人らしく自由にしゃべらせることはかなり難しいでしょう。 コンピュータに、実在の特定の人の声をもっと完全に出させることはできると思います。 必要なものはある程度の量の音声サンプル、そして3-D CTを使った声道の立体構造のデータです。 このデータがあれば、その人の声の特徴をシミュレーションして声の響き具合などを計算で割り出せます。おそらく完全に近い形で声を再現できるでしょう。 しかし声が再現できればその人のしゃべりになるかというと、残念ながらそうはいきません。 しゃべり声には、速さとか間とか、使う言葉のくせとか、なまりとか、イントネーションとか、いろいろと個人特有の特徴があります。 ですから、コンピュータがいくらその人と同じ声を出せても、その人らしいしゃべりを創出することは非常に難しいと思われます。 もちろんその人のしゃべりの膨大なサンプルがあり、その特徴を自動分析してコンピュータが自己学習する、といったことは理論的にはできなくないかもしれません。 ただそれができるようになるのはまだかなり先のことでしょう。 とはいうものの、長い会話は無理ですが、もっと簡単な、「おはよう」とか、「いってらっしゃい」「お疲れさま」みたいな短いフレーズの会話なら、 今のシステムの延長で充分実現できると思います。 iPhoneのSiri程度の簡単な会話ですね。 その程度の会話であっても憧れの俳優やタレントの声と、一方的でなく双方向でお話できる、となれば、意外に売れるんじゃないでしょうか。 さて、タイトルの電気羊という謎のワードですが、人工知能の精度を判定する方法としてチューリング・テストというものがあります。 チューリング・テストとは、人間の判定者が、人工知能と会話をして、人間と区別できなければ、その人工知能は本物の知能があると考えて良い、というものです。 しかし人工知能は「電気羊」のような実在しないものについて訊かれた場合、「見たことないが不味そうだな」とか「人造ウールでひと儲けするのか」みたいに想像力豊かな応答ができず、 「電気羊など現実に存在しない」というようなぎこちない反応を返してしまいがち、と言われています。 つまり人工音声は今後も進化を続けるでしょうが、コンピュータに電気羊の歌をリクエストしても「知らない」と歌ってはくれないでしょう。 コンピュータは過去のデータから類推してしゃべることはできても、何もないところから創造することは苦手なのです。 少なくとも今の技術の延長線上ではそう考えられます。残念ながらボーカロイドは電気羊の歌は歌わないのです。 |
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2016 12,19 07:25 |
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◆発声&運動トレーニングトピックス◆ vol.046 2016.12.19号より
☆発声や運動トレーニングに関する最新の知見や気になるトピックスをご紹介します 「The Effects of Expiratory Muscle Strength Training on Voice and Associated Factors in Medical Professionals With Voice Disorders」 Yuan-Ching Tsaie, ShihWei Huang, Wei-Chun Che, Yi-Ching Huang, Tsan-Hon Liou, Department of Physical Medicine and Rehabilitation, Shuang Ho Hospital, Taipei Medical University, Taipei, Taiwan Journal of Voice Vol 30, Issue 6, 2016, p759.e21-759.e27 音声障害のある医療従事者29人を、5週間25回のトレーニングを行なう呼吸訓練グループと対照グループに分け結果を比較した、という研究。 結果、肺機能に変化はなかったが、/ Z /発声・/ S /無声呼気・アンケート結果には有意な差がみられたとのこと。 今後は症例数を増やし、長期治療の有効性を検討したい、と著者らは結んでいます。 呼吸訓練、とひとくちにいっても、どんな指示をしたか、どんなフィードバックをしたか、ということで結果はまるで違ってくると思われます。 同じトレーニングでも一生懸命やるかどうかで差が出ますよね。このあたりは指示ひとつ、励ましひとつで変わってしまいます。 ここをコントロールせずに効果の有無を云々してもちょっとピントがずれている、と言わざるをえません。 |
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2016 12,19 06:16 |
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◆気になるボイスコラム◆ vol.046 2016.12.19号 より
☆声にこだわりを持つ筆者がこだわってお届けします☆ ちょっと謎っぽいタイトルですが、その話はとりあえず置いといて。 要するにコンピュータで作る人工音声のお話です。 コンピュータがしゃべる声ってどんなイメージでしょうか? ちょっと古典的ですが、一音一音とぎれとぎれで抑揚なくしゃべる、といったイメージが浮かびますよね。 ピンとこない方は一度やってみてください。確かにいかにも機械的な感じでしょう。誰でもこんなシーンを映画やテレビで一度は見たことがあると思います。 さて、ここで疑問です。どうしてとぎれとぎれ声だとコンピュータの声、という気がするのでしょうか。 昔テレビで観たから、というのなら、テレビのディレクターはどうしてそんな設定にしたんでしょう。ちょっと気になります。 そもそもコンピュータで人工的に声を作り、コンピュータ自身にしゃべらせようというのはずいぶん昔から色々と試みられていました。 コンピュータやロボットがしゃべったら面白いし便利だろうな、という訳です。 コンピュータで「ピー」というような音を出すことは昔でもさほど難しくありませんでした。でもこれでは声になりません。 声は色々な高さの音の集合です。では人間の声を分析して、色々な高さの音を重ねて出せば人間と同じ声になるじゃないか。 というわけで音を重ねたら、ちょっと独特な機械的響きですが、なんとか声に聴こえるような音を出せました。この方法をフォルマント合成といいます。 さてこれでコンピュータがしゃべれるようになったかというと、さにあらず。 例えばこの方法で「あ」と「め」を組み合わせて出しても、自然な「あめ」に聴こえず、「あ」「め」とバラバラに聴こえてしまうのです。 しかも「雨」なのか「飴」なのかわからない、というおまけつき。 実は人間がしゃべる「あめ」は、「あ」と「め」の間に「渡り」という部分があって、この「渡り」の間にも声は出ているのです。 フォルマント合成方式では渡りがないためバラバラに聴こえてしまった、という訳です。ですからこの「渡り」の部分に声を当てはめないといけないのです。 ところがこの音の組み合わせは膨大な数に上ります。50音ぐらいならいいのですが、膨大な組み合わせを全てコンピュータが処理して実行するのは当時としてはとてもじゃないが無理、 しかも抑揚の情報まで入れるなんて夢のまた夢、ということになりました。 でもせっかくなので、とりあえずとぎれとぎれでいいからしゃべらせようじゃないか、となって、コンピュータはとぎれとぎれの言葉を発し始めました。 それをリアル志向の映画がネタにしました。そして、コンピュータの声ってああなのか、と人々に刻み込まれた、というわけです。 しかし、そこから時代は移って2007年、ボーカロイドというコンピュータ人工音声システムが発売されました。 これは音符と歌詞を入力すると「初音ミク」というキャラクターが人工音声で歌ってくれるというソフトです。 しかも音の強弱・ビブラート・息継ぎなどを設定すると、人間が歌っているような、なめらかな旋律に編集できる、というので瞬く間に世界中に広まりました。 どうしてそんなに自然な人工音声が作れたかというと、実は実際の声優さんの声を使っているのです。 つまり声優さんに実際に声を出してもらって、それを録音してつなぎ合わせたというわけ。そして音がバラバラに聴こえる弱点を補うために、全ての組み合わせの「渡り」部分も収録しました。しかも何通りもの高さで。 それなら確かに自然になるでしょう。単純な力技と言われればそうですが、コンピュータの記憶容量と処理速度が飛躍的に向上したからこそできたことです。 この方式を「素片連結型」といいます。これで制作された楽曲はボーカロイド曲とよばれ、盛んに自作曲が動画サイトに投稿されるようになりました。 ちなみに最初から単語や文を録音して場面によって切り替えて合成する方式もあります。 これはもっと自然でなめらかですが、当然容量は比べものにならないくらい膨大になります。今はまだ実用的な方式とはいえません。 ただししゃべる言葉が「10時です」のように限られていればどうってことはありません。すでに時計とかカーナビとかの家電などで実用化されています。iPhoneのSiriもこれです。 このように人工音声はどんどん進化し、人の声に近づいてきています。コンピュータはいずれ人のようにペラペラとしゃべり出すのでしょうか。 今はマウスやタップで操作するだけのパソコンやスマホとも、言葉で自由に会話できるようになるのでしょうか。 人工音声の技術が進むと今後どうなっていくのでしょう。後編では現実にどんなことができるようになるのか、そんなお話をしたいと思います。 電気羊の歌、という謎のタイトルの意味も後編で。 |
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2016 12,05 05:14 |
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◆発声&運動トレーニングトピックス◆ vol.045 2016.12.05号 より
☆発声や運動トレーニングに関する最新の知見や気になるトピックスをご紹介します 「Voice Training and Therapy With a Semi-Occluded Vocal Tract: Rationale and Scientific Underpinnings」 Ingo R. Titze The University of Iowa, Iowa City, and National Center for Voice and Speech, The Denver Center for the Performing Arts, Denver, CO Journal of Speech, Language, and Hearing Research, November Vol. 49, 2016, 448-459. コンピュータ・シミュレーションで44種の声道・声帯のモデルを設定、 リップトリル・舌トリル・ハミング・チューブ発声法などの声道半閉塞法を行なった際の声道の形状や圧を計算した、という研究。 結果、口唇付近での半閉塞は声門上部と喉頭の圧を上昇させ声道の径を高くし、声帯を内転し喉頭を狭窄させるので発声が効率的・経済的になったとのこと。 これらから声道半閉塞法は声門圧・抵抗を声道圧・抵抗と一致させる効果があるのではないか、と著者らは結論づけています。 リップトリル・舌トリル・ハミング・チューブ発声法などの方法は声道を広げる効果があるといわれています。 これはそれをコンピュータ・シミュレーションで検証した研究、なかなか面白いと思います。 ただ、発声というのは動作パターンですので、初期設定だけでは決まらないと思います。 例えば発声していると徐々に緊張が高まって声道の広さが変わってしまうケースなど。このあたりの変数も加味した結果を知りたいですね。 |
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2016 12,05 05:10 |
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◆気になるボイスコラム◆ vol.045 2016.12.05号 より
☆声にこだわりを持つ筆者がこだわってお届けします☆ 私はふだん言語聴覚士として多くの患者さんと接していますが、新人の理学療法士や作業療法士、特に言語聴覚士が患者さんに話しかけている声を聴くと大変気になります。 それは、ああ、声が患者さんに届いていない・・・、そんな感じがものすごくするからです。 別に私の勝手な思い込みではありません。現実に、話しかけられた側の患者さんの反応が新人とベテランとで違うのです。 特にご高齢の方で顕著な気がします。新人にはうなづくぐらいしか反応しない人が、ベテランには言葉で返事して、さらに笑顔まで見せたりする、なんてことは珍しくもないのです。 若者は心がこもってないから、みたいなありふれた精神論で片づけたくはありません。 事実、新人たちはみな一生懸命やっています。 声も大きな声を出しています。決して声が小さくて聴こえない、というわけではありません。声は大きいのにどうしてこんな差が出るのでしょう? ちなみに若いから軽んじられている、というわけでもなさそうです。20代後半〜30代の新人は珍しくありません。 外見ではキャリア十数年の30代と新人の30代の区別はつかないのです。 身振りとか表情、という声以外の要素もあると思いますが、やっぱり声そのものにも差があるように感じます。 なぜなら、新人の声は聴くだけで、いかにも新人、と分かるのです。さて、ベテランと新人は何が違うのでしょうか。 どうもそれは声の響き、なのではないかと思います。新人は声の響きがベテランに比べて乏しく、少しこもったような音色に感じます。 ついでに抑揚にも少し乏しいかもしれません。逆にいうと抑揚を少し乏しくしてこもりがちな感じにすると新人ぽくなるともいえます。 新人のうちは慣れていませんから当然緊張しています。精神的な緊張は身体的な緊張を生じさせます。全身の緊張は喉頭および声道の筋肉も緊張させ、結果声道が狭くなり、少しこもったような響きになっている、というのはありそうな話です。 抑揚の乏しさも同じく喉頭の緊張で説明できそうです。 通らない声は、耳が遠くなってきている高齢者には、やはり聞き取りにくいのかも知れません。 抑揚はことばの理解の助けになりますので、抑揚が乏しいと聴いたことばが分かりにくくなります。 このあたりが相まって言われたことがピンと来ず、新人への反応が薄くなっていったのかも、というこれはあくまでひとつの解釈です。 さてそんな新人たちですが、先輩との差を思い知って落ち込んだり、患者さんたちに拒否されたり、笑ったり泣いたりいろいろな経験を積んでいくうちに、 新人ぽい声はいつの間にか消えて、先輩たちと同じプロの声が出せるようになります。 別に特別な発声プログラムを組んでいるわけではないのですが、それが成長ということなのでしょう。 私は新人の声を成長の指標のひとつに考えています。すっかりプロっぽくなった声を聴いて、まず第一段階は卒業、と私はひと安心するのです。 |
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2016 11,21 07:02 |
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◆発声&運動トレーニングトピックス◆ vol.044 2016.11.21号 より
☆発声や運動トレーニングに関する最新の知見や気になるトピックスをご紹介します 「Epidemiology of Vocal Health in Young Adults Attending College in the United States」 Naomi A. Hartley, Ellen Breen, and Susan L. Thibeault ほか Division of Otolaryngology, Head and Neck Surgery, University of Wisconsin-Madison ほか Journal of Speech, Language, and Hearing Research, October 2016, Vol. 59, 973-993. ウィスコンシン大学マディソン校の学生652名の声の症状・声の使用状況、VRQOLなどをオンライン調査したという研究。 結果、音声障害の有病率は4.45%、生涯発症率は33.9%で、昨年一年では46%の学生が何らかの声の問題を経験していたが、39%は6日以内に解消していた、とのこと。 若年成人の場合、声に問題があっても、さほどコミュニケーションの阻害になっておらず、高齢者とは重み付けが異なると考えられ、年齢に応じた評価と管理をすべきだろう、と著者らは結論づけています。 声の問題は職業に直結した時に深刻になるだろうと思われます。教師・歌手・俳優・アナウンサー・保育士・オペレーター・営業など。 まだ職業に就いていない学生が、何らかの職業的繋がりを残している可能性のある高齢者と比べて重みが異なるのも当然と考えられます。 |
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2016 11,21 06:54 |
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◆気になるボイスコラム◆ vol.044 2016.11.21号 より
☆声にこだわりを持つ筆者がこだわってお届けします☆ マイケル・ジャクソンの音楽プロデューサーとしても知られるクインシー・ジョーンズが1985年に全米のスーパースターを集めて制作し、全世界で2000万枚以上が売れた「We Are the World」。 そのクインシーがもう一度あの企画をやりませんか、と訊かれたとき、「今はもう、声を聞けばあの人だ、とわかる特徴的なアーティストがいないからね」といったとか。 We are the world参加アーティストの声はそんなに特徴的なんでしょうか。気になったのでひとつ久しぶりに聴いてみようと思います。 こちらの動画を観ながらどうぞ。コメントは登場順です。 https://www.youtube.com/watch?v=wXTcV0F4Dm0 なおこのコメントはあくまでこのWe are the worldを歌ったときの声のみについてのものですので念のため。 第一グループ 1)ライオネル・リッチー:若干気息声傾向です。少し鼻音化を効かせているのが特徴かなと思いました。 2)スティーヴィー・ワンダー:わりと雑音成分のない高くてきれいな声ですが、若干気息声があります。 3)ポール・サイモン:わりと雑音成分のないきれいな声です。 第二グループ 4)ケニー・ロジャース:気息声です。強めに鼻音化させているのが特徴的でしょう。 5)ジェームス・イングラム:わりと強い気息声です。 6)ティナ・ターナー:かなりの気息声です。喉頭下降ビブラートを強く効かせているのが印象的でした。 7)ビリー・ジョエル:若干声道が狭いようですが、鼻音化が効いてソフトになっていると思いました。 8)マイケル・ジャクソン:雑音成分がなく、ものすごくきれいな声です。他の追随を許さない飛び抜けて随一の声でしょう。 9)ダイアナ・ロス:やや気息声が目立ちました。 第三グループ 10)ディオンヌ・ワーウィック:かなりの気息声です。呼気を強めないと有声が出にくいんじゃないでしょうか。声量で補っているようでした。 11)ウィリー・ネルソン:雑音成分のないきれいな声です。特徴的な声の響きをさせていると思いました。 12)アル・ジャロウ:やや気息声です。ビブラートは控えめかな。 13)ブルース・スプリングスティーン:かなりの気息声に粗ぞう声です。キャラが強そうです。アメリカ版森進一、というか甲本ヒロトな感じ。 14)ケニー・ロギンス:語尾にやや気息声と粗ぞう声ありますが、全体に雑音成分のないきれいな声です。 15)スティーヴ・ペリー:同じく時折粗ぞう声が混じりますが、全体に雑音成分のない、きれいな声です。 16)ダリル・ホール:やっぱり時折粗ぞう声混じりますが、雑音成分のない、きれいな声です。 第4グループ 17)ヒューイ・ルイス:気息声とやや声道の狭い声です。声量がすごいです。 18)シンディ・ローパー:雑音成分は少ないものの、ちょっと声道の狭い声です。 19)キム・カーンズ:気息声と声道の狭い声です。 リピート 20)ボブ・ディラン:なんとノーベル文学賞受賞で話題を集めたボブ・ディランです。これは声というより歌い方が特徴的ですね。 楽譜をボブ・ディラン流にアレンジして、歌うというより叫ぶという感じです。 21)レイ・チャールズ:トリは伝説のアーティスト、レイ・チャールズです。これも楽譜をレイ・チャールズ流にアレンジして、すごい存在感を出しています。 こうしてみると、きれい系の声のグループ、気息声系のグループ、声道狭い系のグループ、独自路線グループ、というように、 ある程度グループ分けしてボーカルを繋いでいるように思えます。グループごとに最後にデュエットが入ってくるので、声質を揃えたのかもしれません。 とするとそこまで考えた、プロデューサーのクインシー・ジョーンズの手腕はやっぱり凄かった、ということになるのかもしれません。 |
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2016 11,07 06:32 |
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◆発声&運動トレーニングトピックス◆ vol.043 2016.11.07号 より
☆発声や運動トレーニングに関する最新の知見や気になるトピックスをご紹介します 「Magnetic Resonance Imaging of the Vocal Folds in Women With Congenital Adrenal Hyperplasia and Virilized Voices」 Ulrika Nygren, Bengt Isberg, Stefan Arver, ほか Journal of Speech, Language, and Hearing Research Vol 59 August, 2016, p713-721 先天性副腎過形成の26-40歳の女性4人の甲状披裂筋の断面積・声帯の長さ・声道の長さ・F0の音響特徴を測定、コントロール群の女性5名・男性4名と比較した研究。 結果、先天性副腎過形成の女性はコントロール群の女性よりも甲状披裂筋の断面積が大きく、男性よりも小さかったとのこと。 また音声範囲もコントロール両群より小さかったとのことでした。著者らはこれにより小規模ながら先天性副腎過形成による声の男性化が解剖学的にも説明された、としています。 甲状披裂筋は甲状軟骨と披裂軟骨を結ぶ筋肉で声帯筋・内筋ともいい、声帯を短縮・弛緩させる役割を持っています。 声帯振動の主働筋なので、これが厚くなると声は低くなります。 男性の声が低いのは甲状披裂筋の厚さのせいだけではないのですが、声が低くなる要因のひとつとしてこの疾患では作用するということなのでしょう。 |
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2016 11,07 06:27 |
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◆気になるボイスコラム◆ vol.043 2016.11.07号 より
☆声にこだわりを持つ筆者がこだわってお届けします☆ 子供っぽい声と子供の声の違いが気になります。 子供っぽい声の人っていますよね。また大人の女性声優さんが子供の声を演じることは普通にあるようです。 でもいくら子供っぽいといっても本当に子供と同じ声ではないような気がします。 電話のように聞こえづらい場合は別として、声だけ聴いて子供と間違えてしまう、なんてことは実際には起こらないんじゃないでしょうか。 なお、この場合の子供というのは幼児から小学生程度を想定した話です。 例えばジブリをはじめとする多くの国内アニメ作品で、声優さんが当てている子供の声の演技はとても素晴らしいものも多いわけですが、 ああこれは本当にその年齢程度の子供が演じているな、と思わされることはまずありません。 一方、ディズニー作品の吹替版では基本的に子供の声は子役さんたちが当てているようなのですが、こっちは疑いなく本当に子供が演じていると感じます。 演出上どちらが効果的かはここでは関係ないので触れませんが、違いを感じてしまうのは演技ということではなく、発声の何かが違うのではないかと思います。 それはなんでしょう。気になります。 さて、子供の声の特徴というと第一には高いことですね。成人女性の声の平均基本周波数が250~500Hzであるのに対し、子供の声は300~800Hzといわれています。 成人男性は80~150Hzですので、子供の声と全く重なりませんが、成人女性なら重なっていますので、子供に近い声を出せるのもうなずけます。 とはいっても高くすれば子供の声になる、という単純な話ではないようです。 ピンクの電話の清水よし子さんとか、声優の金田朋子さん、林家パー子さん、元マラソン選手の松野明美さんらは、皆かなり地声が高いですが、やっぱり子供の声と聴き間違えたりはしません。 なお、ここでは語尾の上げ伸ばしとか、未熟な発音とか、話す内容とか、声以外の要素は省きます。 単に「ああ」とか「うん」「え〜?」など相槌のような発声だけでも子供の声と子供っぽい声は違うように思えるからです。 となるとなんでしょう。 実は子供の声と子供っぽい声の違いは響きにあるのではないか、という話があります。 子供の声は響きが少ないので浅い、いわゆる深みのない声になっている、というものです。 深みがないというのは分かりにくい表現ですが、私たちは音を聴いた時、楽器でいう和音のように音が幾重にも重なっていると深く感じ、重なっていない単純な音だと浅いと感じるのです。 さて、声は声帯で作られた後、喉頭腔・咽頭腔・口腔を通って唇から発せられますが、この喉頭腔・咽頭腔・口腔という声の通り道、 つまり声道で反響することによりそれぞれの独特な声になります。 声道の長さは成人と10歳の子供では約24%ほど子供の方が短いとされていますが、声道の長さが違えば、反響の仕方も違ってきます。 反響場所が多いほど響きは多くなり音は複雑になりますから、声道の長い大人の声は自然に深くなる、というわけです。 実際、音響分析をすると子供の声は第一フォルマントという周波数帯域の音が大人よりも少ないと言われています。 つまり大人はいくら声を高くしても、声道の構造上、音が幾重にも響いてしまうので完全に子供の声を出すことはできないということになります。 子供っぽい声と子供の声の違いはここにあると考えられます。 ところで最近、「3月のライオン」というアニメ作品を見る機会があったのですが、登場人物のひとりの声を聴いて、珍しい、本当の子役ではないか? と思わされました。 ところがこれがれっきとした女性声優さんで久野美咲さんとおっしゃる方でした。幼い子のリアルな声、が特徴なのだとか。 どうしてこのような声が出せるのでしょう。なにか秘訣があるのでしょうか。まだまだ気になります。 |
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2016 10,17 11:13 |
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◆発声&運動トレーニングトピックス◆ vol.042 2016.10.17号 より
☆発声や運動トレーニングに関する最新の知見や気になるトピックスをご紹介します 「The Perception of Benefit of Vocalization on Sport Performance When Producing Maximum Effort」 Kelly M. Davis, Mary J. Sandage, Laura Plexico, David D. Pascoe Department of Communication Disorders, Auburn University, Auburn, Alabama Journal of Voice Vol 30, Issue 5, 2016, p639.e11-639.e16 378人のスポーツ選手にVHI-10を含むアンケートを実施、最大限の努力を要す運動時に発声するとパフォーマンスが向上すると思うか訊き、 スポーツ時の音声の使用が音声障害と相関するか調査した研究。 結果、56%が発声するとパフォーマンスが向上すると思うと答えたが、スポーツ時の音声の使用と音声障害の間に相関は認められなかったとのこと。 今後、客観的な評価やうなり声の測定なども必要だろうと著者らは述べています。 テニスとか剣道とか運動の要所で掛け声を伴うスポーツは割とよくあります。 筋は当然過緊張になりますので、発声も過緊張発声となり、声帯にも負担がかかって音声障害になりやすい、と思いきや、相関はなかったとのこと。 逆に発声のフィードバックを得ることで過緊張になりすぎないようコントロールしているとか、もっともっと考慮すべき変数があるようです。 |
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2016 10,17 11:11 |
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◆気になるボイスコラム◆ vol.042 2016.10.17号 より
☆声にこだわりを持つ筆者がこだわってお届けします☆ ヘリウム発声が気になります。 皆さんもテレビなどでみたことがあるでしょう。ヘリウムガスを吸って声を出すと不思議な声になります。 目立つ特徴として音域が高くなりますが、それだけではありません。ヘリウム発声って、単にその人がまた高い声を出したな、という感じじゃないでしょう? 普通では出ないような、ボコーダーで加工したような、なんとなく人工的な感じの声に変化するように思います。 ヘリウム発声はアヒルのような独特な声なので、俗に「ドナルドダック効果」とも呼ばれているようです。 なおヘリウムガスは、空気よりも軽いので、アドバルーンや風船、パーティーグッズなどによく使われており、 パーティーグッズのヘリウムガスはヘリウム80%・酸素20%の混合で、無臭・無味・無毒、血液に溶けにくいので、安心して使えるのだそうです。 さて、なぜヘリウムガスで声が変わるのか。 声は音です。音というのは空気の振動です。空気全体が動けば、風が吹いたということになりますが、空気の振動が伝われば、音が伝わったということになります。 つまり空気の振動が人間の耳の鼓膜を揺らすと人間はそれを音として感知します。 あるいは、空気振動がマイクの振動板を揺らすと振動が電気信号に変換され、機械が信号を処理して、録音したり音を増幅したりします。 この空気の振動数の多い音を人間は高い音と感じ、少ない音を低い音と感じます。1秒間の振動数(周波数)が1回のものが1ヘルツ(Hz)です。 ピアノの鍵盤の真ん中のドの音は 261.6Hz くらい、その5つ右のラの音は 440Hz です。人間の耳は20~20000 Hz くらいの音を聴くことができます。 で、なぜヘリウムガスで声が変わるのか、ということですが、ヘリウムガスは空気よりも軽く密度も小さい気体です。 軽くて密度も小さいので、同じ力で振動を起こすと気体抵抗が少ないので振動がより素早く数多く起こります。 つまり振動数が多くなるわけです。それによって高い声になるというわけです。 そしてあの独特のヘリウム発声の響きですが、同じ高さの音、つまり同じ振動数の音であっても楽器によって違う音に聴こえます。 これは空気振動の波形が異なるからです。同じ高さでも、ピアノとバイオリンで音が違って聴こえるのは、波形が違うためです。 ヘリウムガスは軽くて密度も小さいので、声帯の振動数が変わるだけでなく、波形も変わってしまうと考えられます。 これにより声が高くなるだけでなく、独特な響きになると考えられます。 というこのヘリウム発声ですが、「おかしな声だね、ハハハ」で終わらせるのはもったいないように思います。なにか発声トレーニングに使えないでしょうか。 発声練習の途上では声帯に過剰な力が入ってしまう場合が多く、あの手この手で力が入らないように工夫します。 あくびをさせたり、笑わせたり、吸気発声をさせたり、舌の先に響くようにイメージさせたり。 だったらヘリウム発声はどうでしょう。 これならなんの努力も要りません。あくびやらイメージやらは、いざやるとなるとやっぱり結構うまくできないものです。 ヘリウムの声だと思わず笑ってしまったりして、力も抜けやすいんじゃないでしょうか。 これを導入部に使って発声練習をし、ヘリウムが切れてくればだんだん普通の声になりますから、自然な形で普通の発声練習に移行することができそうです。 繰り返していればコツを掴んでどんどんうまい声が出るという感じに行かないでしょうか。 なにより方法が簡単ですし、試してみるぐらいはやってみてもいいかもしれません。 というわけで、ヘリウム発声が気になります。 |
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2016 10,09 07:48 |
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◆発声&運動トレーニングトピックス◆ vol.041 2016.10.03号 より
☆発声や運動トレーニングに関する最新の知見や気になるトピックスをご紹介します 「Effectiveness of Chewing Technique on the Phonation of Female Speech-Language Pathology Students: A Pilot Study 」 Iris Meerschman, Evelien D'haeseleer, Elien De Cock, Heidi Neyens, Sofie Claeys, Kristiane Van Lierde Department of Speech, Language and Hearing Sciences, Ghent University, Ghent, Belgiu Journal of Voice Vol 30, Issue 5, 2016, p574-578 27名の言語聴覚学科の女子学生を、咀嚼法18週間練習群と対照群に分け、前後で空気力学的検査、音響解析、発声障害重症度指数などを測定した研究。 結果、声の高さの揺らぎの減少、基本周波数の増加、音声レンジプロフィールの著しい拡大などがみられたが、声の大きさの揺らぎや最大発声持続時間(MPT)は変わらなかったとのこと。 パイロット研究ながら咀嚼法は声を改善できることが示唆された、と著者らは結んでいます。 咀嚼法は口をもぐもぐさせながら発声練習する方法です。こうすると余分な力が入らずリラックスするので声が良くなるという理屈ですが、あまり用いられた例は聞きません。 声の配置法的な意味合いもだいぶ混じってそうです。 咀嚼法の効果を検証してみようという発想で、とりあえず一定の効果はあるようですが、やっぱり他の方法との比較をみてみたいですね。 |
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2016 10,09 07:46 |
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◆気になるボイスコラム◆ vol.041 2016.10.03号 より
☆声にこだわりを持つ筆者がこだわってお届けします☆ 後編です。 いよいよ整体学校に入学しました。学校は平日だと19時からで、講義1時間、実習1時間、計2時間という構成。 前半の講義で理論や方法を学び、後半の実習でその実践、というスタイルでした。これは頭にも体にも入りやすいうまい構成で、よく考えられている、と思いました。 土曜はこれが倍になり4時間ありました。 地理的に仕事が終わってからでも充分間に合ったので普段は余裕でしたが、仕事の都合で講義に出られない日には、その旨学校に告げると無料で補講を組んでもらえました。 複数欠席者がいる場合は時間を調整するのですが、先生の都合さえ合えば一人だけでも普通に2時間補講をしてもらえました。 仕事を無理に調整しなくても良かったことは、とてもありがたいことでした。 こんな制度は私が教師をしていた学校にはなかったので、あの時あれば学生さんがどんなに助かっただろうと思ったりもしました。 同級生は12人で、ほとんどが20代から30代、男女は半々ぐらい。職業としては主にサラリーマンやOLさん・主婦の方でしたが、 中には生徒さんに役立てたいからとかという特別支援学校の先生や、家が整体院で家を継ぐという高校生などもいて、なかなか多様でした。 サラリーマンでは整体院を経営したいという人が多く、OLさんは整体院に勤めたいという人が多いようでした。 さて講義の内容は人体の骨格の作りや名称、筋肉の名称や構造・作用、運動学の基本などを部位別に行っていく感じでした。 クラスの皆は「外転」「外旋」など慣れない用語になかなか苦労していましたが、私は半分ぐらいはすでに知っていることだったのでこれまた結構余裕でした。 私が医療職と知るとクラスの皆から「今のどういうこと?」と空き時間に訊かれたりもしました。 とはいえ覚えるべき筋肉は全身に渡るのでやたらと数が多く、しかも講義の始めには前回の復習の小テストがあったので、とにかく通勤時間など時間を見ては暗記をしました。 仕事柄人体のイメージはしやすいので比較的暗記は容易だったのですが、いざ小テストを受けると、困ったことに漢字がちっとも思い出せません。 私の職場は何年も前に電子カルテになっていて、もうずいぶん手書き文字をほとんど書いていなかったのです。 こんな字も思い出せないなんて・・・とこれは結構ショックでした。 毎回、前半の講義が終わると後半実技に移るわけですが、まず先生が全員を施術し、そしてペアを組んでお互いにやってみるという段取りでした。 目的の筋肉の場所もやり方も聞いたところですし、テクニックとしても特に難しくもない印象、軽い軽い・・・。 ところが実に驚いたことに先生とまったく同じようにやってもペアの相手は「全然違う。なんか効かない」というのです。 そんなバカな、ではこうか?こうか?とやってもやっても「う〜ん?」というばかり。???という状態で交代してペアにやられてみるとこれまた全然先生と違う。 先生のはズンと響くように効くのに、ペアのはいくら強くやられてもボンヤリしていて効いてる感じがない。今度はペアが???と悩む番になりました。 結局、力が弱いとかでは決してなく、微妙な重心の位置とか指の角度とかで力の集中とか伝わり方が全く異なるのだ、ということのようでした。 実に驚嘆すべき事実。こんなにほんのちょっとした身体の使い方で全く効果が違うとは! 整体の学校に来てから言うのもなんですが、私は整体を実際に受けたことはほとんどなく、実は効果のほどを実感したのはこれがほぼ初めてだったのです。 これはしっかり覚えねば。効果を出せる重心位置とか指の構えは部位やテクニックごとに違うので、とにかくそれを体に刻み込まねばなりませんでした。 その後はまあいろいろで、点圧の練習のしすぎで指がパンパンになってしまったりとか(誰でも通る道だそうです)、 中間テストで漢字の間違いでやたら×を食らったりとか(恥ずかしい限りです)、あげく卒業の実技試験で再試験になってしまったりとか(規定時間内に終われなかった)、 まあ苦労しましたが、とにかく卒業でき、なにより勉強になりました。行ってよかったです。 ところで肝心の発声への応用ですが、整体では呼吸筋も喉頭筋もその対象としては想定されていませんでした。 当然学校でも習いませんでしたし、先生方もご存知ありませんでした。もちろんそれは百も承知で入学したのです。 ですから卒業で完成ではなく、学校で学んだノウハウを自分なりにアレンジして呼吸筋と喉頭筋に応用する作業が必要でした。 しかし筋肉には可能性があることを私は身をもって知りました。あの効いた感覚を今度は発声に生かしたい。 こうして私の目指す発声エクセサイズは今の形に進むことになったのです。 |
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2016 09,19 18:40 |
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◆発声&運動トレーニングトピックス◆ vol.040 2016.09.19号より
☆発声や運動トレーニングに関する最新の知見や気になるトピックスをご紹介します 「The Development of Conversation Training Therapy: A Concept Paper」 Jackie Gartner-Schmidt, Shirley Gherson, Edie R. Hapner, ほか Department of Otolaryngology, University of Pittsburgh Voice Center, University of Pittsburgh Medical Center, Pittsburgh, Pennsylvaniay ほか Journal of Voice Vol 30, Issue 5, 2016, p563-573 伝統的な発声治療とは全く異なる会話トレーニング療法 (CTT)の開発に関する文献的考察。 CTTとは、運動学習理論に基づいて、患者主導で会話を行う中で声の改善を目指す新たな治療法とのこと。 クリアな発声、聴覚-運動感覚の自覚化、信頼関係の構築、誤り練習、基礎的ジェスチャートレーニング、韻律、の6つの要素からなる革新的方法と著者らは述べています。 通常の発声トレーニングは母音あたりから練習を始め、徐々にいろいろ長いフレーズの発声練習に進んでいきます。 しかし一方、こういう作られた場面、あるいは限られたフレーズでの練習は自然な会話とは違うので、これでいくら練習しても意味がない、という批判もあります。 このような論争は発声治療だけでなく、失語症や発達障害、吃音などの分野でも同じようにあり、それぞれ会話中心療法と段階的療法として体系化されています。 これまで発声分野で会話中心療法は目立たなかったのですが、今後広まってくる可能性があるかもしれません。 |
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2016 09,19 18:33 |
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◆気になるボイスコラム◆ vol.040 2016.09.19号より
☆声にこだわりを持つ筆者がこだわってお届けします☆ 今号はメルマガ40号。キリ番号ですので、またまたながら思い出話を書こうかと思います。 前回30号では、発声練習の進め方が分からず、ボイトレ教室に潜り込んだりして、徐々にコツを掴んでいったお話を書きました。 さて知識はついた、進め方もだいたい分かった、これで大丈夫なはずでした。ところがさにあらず。 目の前の患者さんたちの声を変えるには、まだひとつ大きなハードルがあったのです。 それは、目の前の患者さんたちのほとんどがかなりの高齢者であったことでした。当時の私の勤め先は高齢者専門の機関だったので高齢者ばかりなのは必然でした。 高齢者だと何が問題かというと、ちょっとでも慣れないとか、分かりにくいこととかは、続けてもらえなかったり、拒否されたり、そもそも手順が理解されなかったりするのです。 腹式呼吸などでもかなり難しく、ましてあくび−ため息法とか、吸気発声とか、チューブ発声法とか、方法はたくさんあるのに、 やってもらおうとすると難しくてできない方法がゴロゴロありました。それこそ使える方法がほとんどないという人も大勢いました。 しかしその中でほぼ唯一、誰にでもスムーズに行うことができた方法があったのです。それが喉頭マッサージでした。 分かりにくい手順の理解や受け入れがほぼ必要のない方法なので当然といえば当然でしたが、実際これをすることで少し声が良くなった、というケースが少なからずありました。 こうなればこれを推していくしかない、そう思いました。 しかし、喉頭マッサージは正直やり方がよく分かりませんでした。 マッサージすべき筋肉の場所は分かるのですが、そもそもマッサージというものはどうやってやるものなのか、理屈はどうなっているのか、禁忌はないのか、一切分かりませんでした。 言語聴覚士は解剖学などは習いますが、運動学・運動療法学などはカリキュラムにないので、だいたいが筋肉の扱いについては疎いのです。 さらに高齢の患者さんには息そのものがとても弱い人がたくさんいました。声をしっかり出してもらおうにもそもそも息が弱いので出しようがないのです。 触ってみると呼吸筋はガチガチに硬く、しかもやせ細っていて、とても大きく吸ったり、強く吐いたりできそうにありませんでした。 腹式呼吸なんてましてや無理という感じでした。 これはまず呼吸筋から変えないとどうにもならないだろう、このガチガチをほぐすところから始めないと。そう思いました。 しかしいかんせん。筋肉関連はさっぱり弱いところです。さてどうするか。 同僚の理学療法士に教わる方法もありました。実際少し教えても貰いました。しかしこの時ひとつ思い出したことがあったのです。 それは私がかつて一緒に仕事をした尊敬するある理学療法士の言葉です。 私が、腕のいい理学療法士は何が違うのか、と訊ねてみたところ、その理学療法士の答えは「筋肉の触り方で腕の違いが出る」でした。 これは衝撃でした。筋肉の状態を把握し、それに触り方を合わせる。そんな世界があるなんて、考えたこともありませんでした。 私もどうせなら筋肉の触り方から学びたい。できれば筋肉の状態に合わせた触り方ができるようになりたい。 それにはちょっと教わるのではなく、学校などで本格的に学ぶ必要があるだろう。どんな方法があるか。調べてみました。 本格的というならあんま・マッサージ師という資格があります。しかしこれは3年間学校に通う必要があるようでした。 ちょっと時間がかかりすぎ、という感じでこれは断念しました。柔道整復師・鍼灸師も同じような感じでした。 その中に整体師というものがありました。これははっきりとした資格はないのですが、かわりに修業年限もまちまちでした。 これがいいかも、そう思っていろいろな整体学校を調べてみました。 するとこれがまたいろいろ。私は整体というと首をゴキっと回すようなやつかと思っていたのですが、むしろそういうのは少数派で、 マッサージっぽいテクニックを中心とした学校、揉みほぐしを中心として教えている学校から、 ツボ押しや経絡といった東洋医学的な考えに基づく学校、ヨガっぽい教えの学校、気をめぐらすというニューエイジっぽい学校まで実に様々でした。 私は若い頃はちょっと気功のセミナーに行ってみたりとかそういうのも好きだったのですが、 今回はしっかり科学的な解剖・生理に基づいた納得のいくテクニックを教えてくれるところ、ということで探しました。 すると運のいいことにちょうどひとついいところがありました。学校は夜間や土曜日に開講しており、仕事を続けながら学べそうでした。 距離的にも充分通える場所にありました。学費もそれほど高くありませんでした。早速見学に行き、入学を決めました。 さてその整体学校で私は驚嘆することになるのですが、続きはまた次号で。 |
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2016 09,05 04:06 |
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【039-1】 ◆発声&運動トレーニングトピックス◆ vol.039 2016.09.05号より
☆発声や運動トレーニングに関する最新の知見や気になるトピックスをご紹介します 「Vocal Tract Discomfort and Risk Factors in University Teachers」 Gustavo Polacow Korn, Denise Abranches, Paulo Augusto Department of Otolaryngology-Head and Neck Surgery, Federal University of São Paulo, São Paulo, Brazil Journal of Voice Vol 30, Issue 4, 2016, p507.e1-507.e8 大学教員846名にブラジル労働省作成の音声自己評価フォームを実施、喉の健康状態を調査したという研究。 結果、喉の痛みなどの有病率は男性(43.5%)よりも女性(62.7%)で高く、専門的活動に時間を多く割いている者でも高かった、とのことでした。 女性は音域が広いため、より高い声を出して声帯を緊張させやすい、ということが考えられます。 それにしても教師の声の健康は近年非常に指摘されるようになっていますね。 |
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2016 09,05 04:04 |
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【039-2】 ◆発声&運動トレーニングトピックス◆ vol.039 2016.09.05号より
☆発声や運動トレーニングに関する最新の知見や気になるトピックスをご紹介します☆ 「Immediate Effect of Stimulability Assessment on Acoustic, Aerodynamic, and Patient-Perceptual Measures of Voice」 Amanda I. Gillespie, Jackie Gartner-Schmidt Department of Otolaryngology, University of Pittsburgh Voice Center, University of Pittsburgh Medical Center, Pittsburgh, Pennsylvania Journal of Voice Vol 30, Issue 4, 2016, p507.e9-507.e14 音声障害114人に「はっきりしゃべるように」という指示を与えた前後での声の変化を音響および空気力学的解析と聴覚印象評価で測定、比較した研究。 結果、音響分析では変化はなかったが、平均気流量や声の強さ、呼吸/秒などは「はっきりしゃべるように」との指示介入時の方が改善がみられた、とのこと。 これは発声訓練に際しどのような指示を与えるか定量化するための第一段階のデータである、と著者らは述べています。 指示ひとつでも声は変化する、ということがよくわかるデータです。 どのような指示が最も効果的か、あるいはこのタイプの人にはこんな指示が有効とか、定量化されれば本当に望ましいと思います。ぜひ続報を期待したいところです。 |
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2016 09,05 04:01 |
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◆気になるボイスコラム◆ vol.039 2016.09.05号より
☆声にこだわりを持つ筆者がこだわってお届けします☆ ホーミーの謎の発声が気になります。 ホーミーというのをご存知でしょうか。ホーミーとは、モンゴルおよびその周辺の民族に伝わる伝統歌唱なのですが、実に独特な声です。 ホーミーの意味は「喉の音楽」なのだそうですが、それはまさにぴったりという感じです。 なぜならホーミーの歌声は歌とか発声というよりもある種の楽器のような音色や響きで聴こえるからです。その証拠にホーミーは喉歌とか倍音唱法とも呼ばれるようです。 聴いたことない方、はてどんな声だったかなという方はぜひ以下のリンクで聴いてみて下さい。 http://www.youtube.com/watch?v=b3n3BdOQDIY http://www.youtube.com/watch?v=NNVrmW0VL2I どうでしょう。実に不思議な発声というほかありません。特に詠唱のようになる節の辺りでは、ちょっと人の声に聴こえないような音色をしています。 本当に一種の楽器のように思えるほどです。そしてこの音には空気混じりの口笛のような高音も混じって聴こえます。 そのためとても重層的な響きをもって聴こえ、それが大きなホーミーの特徴にもなっています。 ホーミーはユネスコのアジア太平洋地域無形文化遺産にもなっているようですが、果たしてどうやってこんな出しているのでしょう。謎です。気になります。 さて、一番目のリンクを聴くと、冒頭の際立って低音な部分と中盤以降の口笛のような高音が混じった楽器のように聴こえる部分に大きく分かれます。 このような二分が標準なのかどうなのかはわかりません。しかしとりあえず冒頭部分の低音の発声、この発声法は割と単純です。 これは専門用語で言う粗ぞう声というガラガラ声発声で、まず声帯をぐっと締めて強く緊張させ、その後でわずかに力を緩めるとこのような声を出すことができます。 ただ声道も緊張させると音が響かず小さい声になってしまうので、うまく声帯だけを緊張させねばなりません。修練は必要ですがまあ少し練習すればできると思います。 さて中盤以降の楽器のように聴こえる部分ですが、とりあえず発声そのものは上の低音発声と同じように声帯を強く緊張させて、声道を開けるというところも同じです。 ただしこれだけでは詩吟などと同じ発声なので、あの音色にはなりません。 口腔内をなんらかの形に変形させて響きを変え、あの音色を出さねばなりませんが、なにしろ通常ではありえない音色ですので、ちょっと想像もつかないような変形をしないと出ないと思われます。 調べてみました。典型的なホーミーの発声では、舌先の裏側を上あごの奥の方につけ、舌を巻きあげるようにしてから声を出しているそうです。 慣れてくれば、上あごに着けなくとも、舌と上あごの間にごく狭い隙間をあけただけで同様の音を発生させることができるようです。 これで合点がいきました。音は閉ざされた広い空間があると響いて共鳴します。トンネルとかそうですね。 口の中も同じこと。口の中で広い空間を作れれば声が反響して周波数が増幅され、響く声・深い声になります。典型的にはオペラやクラシック歌唱です。 通常の歌唱ではこの空間は口の中だけなのでひとつですが、ホーミーは舌で口の中を二つに仕切っています。 つまりひとつの空間で響かせた音を次の空間でまた響かせる、という芸当をしていることになります。 これにより通常よりも強い響き、つまり倍音を作り出し、あの音色を出しているのです。 さらにあの口笛のような息の混じった高音ですが、これは舌先と上あごのすき間を息が通る時に鳴っている音と思われます。 ないしょ話の「しー」などと似たようなものですが、もっとすき間を狭くして笛のような音にしている、というわけでしょう。 なお二番目のリンクでは、ホーミーには、唇のホーミー・上あごのホーミー・喉のホーミー・鼻のホーミー・胸のホーミー・言葉と一緒のホーミーの6種類がある、といっています。 これらは音色は違って聴こえますが、基本的には皆同じ発声法で作られています。 最も狭くしている場所、もしくは緊張させている場所を変えることにより違いを出している、という感じでしょう。 ところでロシア科学アカデミーの研究者がこの歌唱法について調査したところでは、ネイティブトルコ人たちは特殊な声帯を持っており、 この声帯によって複雑な歌唱を実現しているとか。 またヨーロッパ人はネイティブトルコ人たちのような喉の構造を持っていないため、ホーミーができないことを示唆した、とのことです。 詳しくはわかりませんが、コーカソイドのヨーロッパ人とモンゴロイドで喉の構造に違いがあるといえばそうかもしれません。 であれば同じモンゴロイドである日本人ならホーミーはやりやすいかもしれません。 ホーミー、やってみたいような気がします。 ただし喉には相当な負担はかかると思います。 ホーミーが気になります。 |
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2016 08,15 07:23 |
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◆発声&運動トレーニングトピックス◆ vol.038 2016.08.15号より
☆発声や運動トレーニングに関する最新の知見や気になるトピックスをご紹介します 最新健康ニュース 7月13日「軽いウェイトで筋トレを繰り返しても重いウェイトと同じ効果を得られる」 一方のグループに軽いウェイトトレーニングを20~25回、もう一方のグループに重いウェイトトレーニングを8~12回、疲労で挙げられなくなるまで挙げさせ、 12週後に比較したという「Journal of Applied Physiology」誌掲載のマックマスター大学の研究。 結果、両グループで筋肉量と筋繊維のサイズに違いはなかったとのこと。 筋トレは軽いウェイトでも、重いウェイトと同じ効果を得られるのではないかと著者らは結論づけている、とのことです。 ここでのポイントはウェイトが挙げられなくなるぐらい筋肉を疲労させている、ということです。 筋への負荷が最終的に限界までなされていれば、負荷量は問わないということでしょう。ただし今回比較しているのはあくまで筋肉量と筋繊維のサイズです。 目的が持久力の向上だったり、筋力の向上だったりした場合には、また違ってくると思われます。 |
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2016 08,15 07:20 |
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◆発声&運動トレーニングトピックス◆ vol.038 2016.08.15号より
☆発声や運動トレーニングに関する最新の知見や気になるトピックスをご紹介します☆ 「Motor-Learning-Based Adjustment of Ambulatory Feedback on Vocal Loudness for Patients With Parkinson's Disease」 Joakim Gustafsson, Sten Ternström, Maria Södersten, ほか Division of Speech and Language Pathology, Department of Clinical Sciences, Intervention and Technology, Karolinska Institutet, Stockholm, Sweden Journal of Voice Vol 30, Issue 4, 2016, p407-415 ポータブル音声集積器「VoxLog」を用い、20名のパーキンソン病患者の会話音声に6種類のバイオフィードバックがどのように影響するか調査した研究。 結果、潜時500msにすると平均3dB声量が上がったとのこと。パーキンソン病患者へのバイオフィードバックには最適な設定が必要と著者らは結んでいます。 これは本人の声を装置が拾って少し遅れて声を聴かせる方法で声量増加を図ったという研究です。これを遅延聴覚フィードバック(DAF)といいます。 発声運動エクセサイズでも推奨している方法です。潜時とは音を流すまでの空白時間のこと。潜時500msというのは通常言われる数字よりかなり遅めですが、どうなんでしょう。 私の経験では声量増加効果は5〜10dBぐらいですが、効かない人もいるので平均3dBぐらいになったのかもしれません。 |
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2016 08,15 07:16 |
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◆気になるボイスコラム◆ vol.038 2016.08.15号より
☆声にこだわりを持つ筆者がこだわってお届けします☆ ナレーションが気になります。 ナレーションって独特ですよね。 ドラマなどを耳だけで聴いていたとして、それが登場人物のセリフなのかナレーションなのか、特に説明がなくとも間違えることはまずないと思われます。 それはつまり、ナレーションにはそれとわかる独特のしゃべり方、声の出し方というものがあるからではないでしょうか。 ではそれは具体的にどんな声の出し方なのでしょうか。気になります。 調べてみました。 よく言われるナレーションのコツに、「5m離れた人と話す気持ちでしゃべる」というものがあるそうです。 これにより、ゆっくり、間をおいて話すしゃべり方になる、ということです。確かにナレーションはセリフに比べて全体にスピードがゆっくりしている印象があります。 また言われてみると、文と文の間にもかなり間があいているような気がします。 なぜナレーションでゆっくり、間をおくしゃべり方が好まれるのでしょう。聞き取りやすいから、という説明では納得できません。 それならドラマの登場人物のセリフだってゆっくりにすべきでしょう。セリフだから聞き取りにくくてもいい、ということにはならないと思います。 いやセリフがゆっくりだと不自然になる、という意見もありそうですが、それならナレーションはあえてセリフとは違う不自然なしゃべりをしている、ということになります。 どうも鍵はこのあたりにあるようです。 結局、ドラマにしろドキュメンタリーにしろ、登場人物は当然自然なしゃべり方をしています。 しかしナレーターは登場人物と同じ空間にいるわけではありません。登場人物を俯瞰する別次元にいるのです。 ナレーターはその登場人物たちの世界の外から語りを入れるので、全く別のしゃべりにしなければ登場人物たちと区別がつかなくなってしまいかねません。 そこで全く違う、あえて不自然でゆっくり間をおくしゃべり方をしているのではないでしょうか。 実際、落語などを聞いていても、語りの部分は声のトーンが落ちてゆっくり間をおくしゃべり方になり、登場人物との違いがわかるようにしているように思います。 そういえばテレビ番組で「モヤモヤさまぁ~ず」というのがありますが、そのナレーションは読み上げソフト「VoiceText」を使った合成音声です。 この番組はさまぁ~ずが東京のなんてことのない町を散歩する、という実にドキュメントな自然そのものの作りです。 そこに人工的で不自然なしゃべりのナレーションをかぶせることで、生のドキュメント性をより際立たせているものと思われます。面白い演出といえます。 ところでもうひとつ、ナレーションのテクニックとして、文節の切れ目の声を高くすると「明るい」「ポップ」な感じに聞こえ、 切れ目の声の高さを低くすると「落ち着いた」「まじめ」「暗い」感じに聞こえる、というものがあるそうです。 また文末の声を高くすると「期待」「未来」「続く」の雰囲気、文末の声の高さを低くすると「完了」「落ち着き」の雰囲気になるとのこと。確かにそんな感じはします。 ただなぜそのように感じるのか、その理由はちょっとはっきりしません。 高くなるのは声帯の緊張、低くなるのは声帯の弛緩ですが、次がまだあるので緊張が高くなる? もう終わりだと声帯が弛緩するから低くなる? ちょっといまいちです。 さらに明るいとか暗いはどうなんでしょう? やっぱり今のところ納得できる理由は思いつきません。また考えてみたいと思います。 ナレーションの奥はまだ深そうです。 |
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2016 08,01 10:06 |
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【037-1】 ◆発声&運動トレーニングトピックス◆ vol.037 2016.08.01号より
☆発声や運動トレーニングに関する最新の知見や気になるトピックスをご紹介します 「Disorders and Associated Risk Factors in Teachers and Nonteachers in Iran」 Sadegh Seifpanahi, Farzad Izadi, Ali-Ashraf Jamshidi,ほか Department of Speech and Language Pathology, School of Rehabilitation Sciences, Iran University of Medical Sciences, Tehran, Iran Journal of Voice Vol 30, Issue 4, 2016, p506.e19-506.e23 教師104名と教師以外の者41名に声についてのアンケートを実施した研究。結果、声で困った経験は教師の54.6%があり、教師以外の21.1%を大きく上回っていた、とのこと。 また声の物理的・環境的危険因子も教師が70.8%なのに比べ、教師以外は27.4%と大きな差があった、とのことでした。 イランの教師は声の負担をへらすために環境および物理的要因に気をつけるべきだ、と著者らは結んでいます。 内容はその通りですが、イランでは教師の音声障害のリスクについての研究はこれまであまりなされていなかったとのこと。 日本でも近年になってようやく「健康経営」という考え方が出てきました。つまり働き手の健康を積極的に維持しないと健全な経営や発展にはならないということです。 声の衛生もそのひとつであることは疑いないことです。 |
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2016 08,01 10:03 |
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◆発声&運動トレーニングトピックス◆ vol.037 2016.08.01号より
☆発声や運動トレーニングに関する最新の知見や気になるトピックスをご紹介します☆ 「Efficiency and Cutoff Values of Self-Assessment Instruments on the Impact of a Voice Problem」 Mara Behlau, Glaucya Madazio, Felipe Moreti,ほか Department of Speech-Language Pathology and Audiology, Universidade Federal de São Paulo-UNIFESP, São Paulo, São Paulo, Brazil Journal of Voice Vol 30, Issue 4, 2016, p506.e9-506.e18 音声障害486名と声が健康な者489名の、Voice-Related Quality of Life (V-RQOL)・Voice Handicap Index (VHI) ・VHI簡易バージョンVHI-10 ・Vocal Performance Questionnaire (VPQ)・Voice Symptom Scale (VoiSS)を実施、ROC曲線特徴分析にかけ、有効性を検討した研究。 結果、VoiSSとVHIはアンケートとして完璧で最も効率的、VHI-10とV-RQOLも優れており、VPQはスクリーニングとして有効と考えられたとのことでした。 声の質問紙は幾つかありますが、どれを使うかは迷うところ。筆者はVHIとV-RQOLを併用していますが、この結果はとても参考になりました。 |
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