2024 11,23 10:43 |
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2018 04,02 07:00 |
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◆声のコラム vol.055より
このたび、発声運動エクセサイズを、 バージョン2へアップデートしました。 旧バージョンを公開してからおよそ2年ぶりの改変です。 主な変化点は、 1)アセスメントの簡略化 2)エクセサイズを7コースに再編 3)テクニックの整理 です。 アセスメントは基準や判断が分かりにくかったので、 思い切って質問を簡略化し、 手順も変えました。 質問がごく少なくなったので、 とってもすっきりしました。 これで出だしに迷うことはほとんどなくなったと思います。 エクセサイズも人によって選択されるものが、 細かく異なるようになっていたのですが、 これも整理して7つのコースに再編しました。 大雑把になったとも言えますが、 結局それほど大きく差がでないことが、 わかりましたので、 すっきりさせる方を採りました。 これでうまくいかなければ上級コースへ、 という流れになってます。 テクニックは別バージョンとか、 別のやり方とか、 いろいろごちゃごちゃしていましたので、 これも思い切って統廃合しました。 わかりやすい、やりやすい、効果のでやすいものだけを組み込み、 後は上級コースへ移動させました。 これで誰でもできる、 に近づいたかな、 と思います。 つい慎重に考えて、 あれもこれもと組み込んで、 ややこしくなっていたものが、 だんだん整理されてきました。 少しでも皆様の参考になって、 声の悩みを持つ方が楽になれば、 地道にこんなことをやっている 甲斐があるというものです。 ぜひ一度ご覧下さい。 PR |
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2018 01,08 11:14 |
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◆声のコラム vol.054より
テレビ朝日 関ジャム 完全燃SHOW 2017年12月10日放送 「アーティストを後ろで支えるコーラスの秘密!」 この番組、昨年春ぐらいから気になり始めましたが、 「耳に残る曲とコードは関係してるの?」とか、 「ミュージカルはどうして独特な歌い方をするの?」とか、 「アレンジ(編曲)ってそもそも何をやってるの?」とか、 音にまつわる根本的なところを、 エンタメ的に教えてくれて、 とっても面白いです。 これは、アーティストの後ろで歌っている「コーラス」に注目した回。 今井マサキさんという方が出ていらっしゃいました。 松任谷由実や吉田拓郎などのコーラスを務めておられるとか。 今井さんによると、 アーティストには声の軸があり、 軸が前の人、 軸が後ろの人、 軸が前だけど奥も深い人などがいて、 それぞれに個性を見極め、 それに合うようにバックコーラスを当てる、 のだそうです。 これなんのことでしょうね? はい、軸が前っていうのは、 声道を狭くした発声法です。 ホースの口を絞ると水が勢いよくでるでしょ? 声も同じです。 メガフォンみたいな感じですね。 この声は遠くまで届くので、 前ってイメージになるでしょうね。 あと声道が狭くなると、 声が加工されて独特の声になります。 郷ひろみさんとか。 背景から浮き立つ声なので、 前に出てるってイメージになる気がします。 反対の、軸が後ろっていうのは、 声道を広くした発声法です。 R&Bに多いそうです。 声道の反響で倍音が増幅されて、 響きが強まるので、 音が広く深く聴こえます。 相対的にいうと、後ろってイメージでしょうか。 軸が前だけど奥も深いってのは、 例えば、 咽頭腔あたりの空間は広くして 声は反響させてるんだけど、 舌は平たくして口腔を狭くして、 音を加工している、 って感じにすると、 できあがります。 番組では久保田利伸さんが例に上がってました。 で、バックコーラスですが、 軸が前のメインボーカルのときには、 バックコーラスの軸は後ろにする、 みたいに配慮するそうです。 メインボーカルの声に干渉しないように。 バックが目立っちゃしょうがないですから、 当然なんでしょうが。 それにしても声を空間イメージで表す方、 結構いらっしゃいます。 声は目に見えないので、 なんとか理解しやすく表現できないか、 って模索した結果なんでしょうね。 惜しむらくは、 人によってニュアンスが結講違うこと。 イメージなのでしょうがないですが、 なんとか声質を表現できる方法はないかって こういうの聴くと思いますねえ。 |
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2017 11,14 06:41 |
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◆声のコラム vol.053より
ブルガリアン・ヴォイス、 これ、どっかで耳にしたこと、ないですかねえ。 東ヨーロッパのブルガリア共和国、 そこの伝統的な歌唱法です。 まずは、聴いてみてください。 https://www.youtube.com/watch?v=Mrv4yPTJSjU https://www.youtube.com/watch?v=l-IGtSlRy7U どうですか? 素敵じゃないですか? でも普通の合唱と、なにが違うんでしょう? ブルガリアン・ヴォイス。 実は発声方法が違います。 ブルガリアン・ヴォイスは、 声道は開けながら、声帯は締める発声。 これにより、喉から絞り出すようでありつつ響くわけ。 近いのは、日本の民謡の発声法ですね。 こぶしのようなテクニックも含まれてます。 ので、ビブラートはありません。 日本の民謡と似てるなんて不思議ですね。 この独特の響きは、ブルガリアの自然と大地を表現しているのだとか。 どことなく哀愁がある感じ。 ここも日本の民謡と似てる気がしますね。 ところで、ブルガリアン・ヴォイスには超音波が含まれている、 という話があります。 それでアルファ波が出てるから癒されるのだ、とか。 はて〜、それはどうでしょう。 コウモリじゃないので、人間は超音波を出せません。 倍音をうまくあやつれば、共鳴して出るのかもしれませんが、 それをできるようにするトレーニング法なんてないでしょう。 当人たちも、そのつもりはないと思います。 結局その辺、結果論な気がします。 そもそも1/fの揺らぎとか、 ひと頃流行りましたが、 あれウソですからねえ。 夢はありますけどね。 |
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2017 10,02 07:15 |
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◆声のコラム vol.052より
先日、こんなニュース記事がありました。 「AIアナウンサー”がラジオ放送 Amazonの音声合成技術で」 コミュニティーFMのエフエム和歌山が、 AIサービス「Amazon Polly」で、 ニュースを自動で読み上げる放送を7月から始めたそうです。 とうとうそんな時代になったんですねえ。 特に深夜や早朝にアナウンサーを確保できず、 放送困難だったエフエム和歌山。 Amazon Pollyのおかげで、 深夜でも早朝でも、放送可になったとか。 いかにも地域の今って感じですね。 でもこれ、いずれ日本のあちこちで起こりそう。 これから働き手はどんどん減るし、 誰でも深夜・早朝勤務はしたくない。 増収なんてそうそう見込めない。 そこにAIでの自動化、 これ絶好の解決法でしょう。 じゃラジオアナウンサーって、駆逐されちゃうの? その前に「Amazon Polly」、 実際、聴いた感じはどうでしょう。 以下でどうぞ。 https://877.fm う〜ん、なるほど。 Windowsのtext-to-speech(読み上げ機能)とは、 ちょっと比べものにならないね。 自然です。 ちゃんとイントネーションが正しくついてるし。 聴き取りにくさは、ほぼないし。 リスナーにもおおむね好評で、 人工音声と気づかない人も多いとか。 どうしてこんなに自然なんでしょう。 Amazon PollyのAIは、 まず文章を単語に切って意味を分類し、 学習データから、 『そのような意味の流れなら、こんな抑揚になるはず』 と判断・調整して音声を出力するのだそう。 学習データはディープラーニングってやつで集めてる。 出力するときに調整済みなので、 よくあるような、音のとぎれ感もありません。 なるほどねえ。 ただしアナウンスとして上手かといわれると、 決して上手じゃないですねえ。 なぜって、これ普通に読んでるだけだから。 アナウンスってもっと細かなテクニックが入ってます。 強調したいところはゆっくり読んだり、 悲痛なニュースはトーンを落としたり、 重要なところはワンテンポ空けたり、 「」のセリフ部分はイントネーションを大きくしたり。 Amazon Pollyは汎用の読み上げAIなので、 分かりやすく伝える、って機能はありません。 ただ自然に読んでるだけ。 アナウンスはただ読むだけじゃ、 足りないんです。 私たちは気づいてないけど、 アナウンサーって、 聞き手に分かりやすくするために、 いろんな工夫をしてるってわけ。 ですから、まだ当面、 ラジオアナウンサーがお役御免になることはないでしょう。 ただいずれ、 アナウンスのディープラーニングをしたAIが出てきたら、 これはどうなるか分かりません。 さらに、CGでキャラクターを画面に配置しちゃえば、 ラジオどころか、テレビのニュースだって、 AIで違和感なくなるんじゃないかなあ。 費用も、アナウンサーの人件費より格段に安くつく。 冗談じゃないかもしれません。 そんな信じられないような世の中が、近々やってくるかもね。 |
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2017 09,04 07:10 |
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◆声のコラム「『丸い球が飛び出すイメージで声を出せ』と言われたら」
「丸い球が飛び出すイメージで声を出しなさい」 もし、上司にそんなコト言われたら、 えっ(オロオロ)、どういうこと・・・? 困惑しちゃいますよねえ。 これ、NHK、NEWS7担当アナウンサーの鈴木奈穂子さんが、 新人のころ実際に言われたセリフだそう。 ブログ「"届く声"を目指して」 2017年07月28日 ご参照。 その上司、こうも言ったらしい。 「鈴木の声は四角くて耳への当たりが良くない」 皆さん、どうですか? もしそんなこと言われたら。 自分の声ってよくワカラナイがダメらしい・・・ペタリ_| ̄|○。 それだけでもショックなのに、 『丸い球が飛び出すイメージで声を出せ』 そう言われて、できますか? イメージは、分からないでもないですが、 じゃあ実際どうやるの、ってなると、 何をどうしてよいのやら。 鈴木さんも、頭に???がいくつも浮かぶ状態だったとか。 こんな抽象イメージで、できるんなら世話はない。 ホント悩んじゃいますよ。 鈴木さんも声がコンプレックスになったそう。 上司の方、責任感と親切心で言ったんでしょうが、 罪ですねえ、この言い方。 これ結局、軟起声と鼻音化を心がければ済むことです。 「四角くて」は尖ってるイメージですね。 尖ったイメージになる発声は硬起声。 声帯をどんとぶつけて急に声を出す発声法。 知らないうちに習慣化してたってわけですね。 こういうヒトは軟起声発声にすればよろしい。 声帯を端から少しずつ閉じていくと、 声が小さい音から徐々に出始める。 これが軟起声です。 テレビのボリュームを、0からあげる要領で、 出だしの声を徐々に大きくするとできるでしょう。 これつまり「丸い球」ね。 もひとつ。発音で尖ったイメージになるのは破裂音。 「ば」「だ」「が」みたいな、息を溜めて勢いよく出す種類の発音です。 この息の勢いが強すぎるヒトは、きつく聴こえるってわけ。 こういうヒトは鼻音化すれば万事OK。 つまり鼻にかかった発音にするんです。 「ん〜」って息を鼻に抜きながら声を出して、 そのあと「んば」みたいに言う練習やりましょう。 鼻にかかるとソフトになって聴こえます。 これ、もうひとつの「丸い球」。 あと声道が狭いのに、大きな声を出すとうるさく聴こえます。 声道を広げればいいんですが、この辺りの話はまたそのうちに。 というわけで、イメージ法ってよく使われるんですが、 実際難しいと思います。 センスのある人だけが、コツを見抜いて成功する。 大半の人は悩んじゃって、試行錯誤の繰り返し。 いらない苦労するハメに。 どうせなら的確な指示欲しいですよね。 甘えるな? いや、だって。 すでにあるノウハウなら、さっさと身につけて、 その上に新たなノウハウ発見して積み上げた方が、 より向上するじゃないですか。 人類ってそうやって進歩してきたわけですよ。 車輪を再発明する必要はない、です。 ところで鈴木奈穂子さん、 今でも『丸い球が飛び出す音』を理想のひとつにしてるとか。 分かりにくい指示だったかもしれませんが、 強烈に心に刺さった、これは確かなようです。 なかなか人に影響って与えられませんから、 全面的にではないですが、くだんの上司、 実はなかなかな人物だったのかもしれません。 万事塞翁が馬、です。 |
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2017 02,27 07:27 |
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◆気になるボイスコラム◆ vol.050 2017.02.27号より
☆声にこだわりを持つ筆者がこだわってお届けします☆ このサイトを開設したのは今からちょうど3年前の2014年2月です。 それまで、かなりの期間、高齢者にも使える発声エクセサイズはないものか、どうしたらいいか、いろいろと調べたり学んだり試したり、さんざん苦闘しました。 その甲斐あって、まだ未整理な部分も残ってはいましたが、この体系ならいけるのではないか、というものがどうやら組み上がりました。 ようやくのことで、やれやれ、というところでしたが、その反面、さてこれからどうしよう、と思いました。 どう、というのは、どう公表するか、ということです。 なぜなら、新しい方法は、自分だけで留めたのでは大した意味を持たないからです。公表して多くの人に使ってもらわないと価値あるものにならないのです。 それは公表して広まって欲しい、ということでもありますが、それだけではありません。 もっと重要なことは、多くの人に使ってもらい、意見をもらうことです。 こうした新しいものは最初のバージョンで完成していることなどまずあり得ません。 使いにくいところやもっといいやり方などの意見や提案を取り入れて、バージョンアップしてこそ本当に役立つものに成長していくのです。 ですからなんとかして公表しないといけません。 標準的には、データを示して学会発表という形をとり、その中でエクセサイズを公表する、というのが王道です。 ただこのエクセサイズの場合、体系がかなり膨大なので、一回の学会発表で全体を説明することなどとても不可能でした。 やるなら、部分部分を切り取って少しずつ公表していく、という方法になります。 それでもなにしろ膨大なので、最初の一回などは前提を説明するだけで終わってしまいそうでした。 さらに、そうやって公表していったとしても、どう考えても終わるまで10年以上かかることが予測されました。しつこいようですが膨大なのです。 どうも学会発表という手段は向いていなさそうでした。 書籍化して出版する、という方法も考えられました。ただそれにはまだ未整理な部分が残っていました。 一度本にしてしまうと簡単には修正や撤回はできませんから、これはどうみても不適当でした。そもそも出版のつてもありませんでした。 でも公表しないと、自分の頭の中ではもう限界でした。公表して新しい意見をもらわないと、これ以上新たな発想は得られなさそうだったのです。 それならいっそネットで公開してしまおう、そう思い当たりました。 これなら修正すべきところができたらすぐ直せます。まだ充分完成していない段階での公表にはぴったりでした。 web制作も、簡単な知識ならありましたので、そっちも自力でなんとかなりそうでした。 そしてもうひとつ、ネット公表にしたい大きな理由がありました。 世の中に溢れているさまざまな発声トレーニング法というもの。これが実は意外に適当だったり、擬似科学的だったり、明らかに怪しげだったり。 いろいろと調べたり学んだりする中で、そんな現実を知りました。こんなトレーニングがまかり通るようでは、声に悩んでいる人たちは救われない…。 これらの人々になんとか役に立つ情報を届けたい。そんな気持ちは日に日に強くなりました。 それには学会発表のような閉じた形での公表よりも、webサイトでオープンに公表した方が良いのでは。 そのようなわけで三年前、サイトを試験的に公開しました。その一年後には本格的にオープンさせ、メルマガの発行も始めました。 さらにその一年半後に、未整理だった部分にかなり手を加えてリニューアルし、バージョンアップ版を公開しました。 そして現在、サイトのアクセス数はこのほど50,000pvに達しました。これを多いと見るか少ないと見るか、人によって感想は違うことでしょう。 ですが、このエクセサイズは私の体験から出発し、ようやくまとめたごく個人的な成果に過ぎません。言ってみれば本当にささやかなものです。 そのささやかなに過ぎる成果が、毎日何十人もの人に見ていただけているだけで、感謝に耐えないというのが正直な気持ちです。 一方、メルマガの方はエクセサイズの考え方を直接お伝えする手段として企画しました。 ただ、それだけではいかにもつまりません。 声について調べていく中で、声ってこんなに不思議で、面白くて、深いものなのか、と感じさせられました。 なにしろちょっとした喉の使い方の違いで、人はいろいろと影響されるのです。喉の使い方さえわかれば、いろいろな影響力を行使できるのです。 こんなにわくわくすることがあるでしょうか。このわくわくを少しでも人と共有したい、声に興味を持ってほしい、そんな風に考えてメルマガでコラムを始めました。 おそらく私のわくわくは何分の一、何十分の一しか伝わっていないのではないかと想像します。そこの力不足は率直に認めるところです。 このようにしてサイトを開設して丸3年、メルマガを創刊して丸2年。メルマガは今号で50号になりました。 というわけで、この節目に2点お知らせがあります。 第1点は、この発声運動エクセサイズが本になります。現在編集者さんと最後の方の詰めの作業をしています。 内容はこのエクセサイズについての一般書で、このサイトと基本的に同じですが、かなりわかりやすく読みやすくなっています。 やっぱりプロの編集者さんの手が入ると全く違いますね。編集者さんとの打ち合わせは目からウロコが落ちる日々の連続でした。サイトも出版に合わせてリニューアルする予定です。 第2点は、今後メルマガは不定期発行となります。初期の役割をおおむね終えたという判断に基づいた決定です。 不定期といってもほぼ月刊ということになると思いますが、その分、より直接的にエクセサイズを広める活動に注力する予定です。 その他もいろいろと予定していますが、現段階ではここまでとしたいと思います。 今回のコラムのタイトル「At the end of the beginning」は"始まりの終わり"、という意味です。 そろそろ序章が終わり、本章に入るタイミングが来ているように思います。 |
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2017 02,06 08:52 |
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◆気になるボイスコラム◆ vol.049 2017.02.06号より
☆声にこだわりを持つ筆者がこだわってお届けします☆ 前回の続きです。 娘の音痴を克服するために、とりあえずステップを3段階考えました。 ・まず声で誘導して楽器の音と同じ音程を出せるようにすること。 ・次にドレミの音階を楽器に合わせて出せるようにすること。 ・最後にドからひとりでドレミの音階が出せるようにすること。 ここまでできれば後はなんとかひとりでも練習できるだろうという想定です。 今はとにかく自分の音程が合っているかどうかも分からないような状態ですので、ひとりで練習なんてできるはずもありません。 つまり練習をできるようにするための練習、基礎の基礎練習といったところです。 いよいよ練習を開始しました。最初の目標は、こちらがお手本の高さの声とキーボードの音を聴かせ、同じ音程を出せるようにすることです。 ただしその前にやることがありました。 それは「あ〜〜〜」と長く声を出した時に、同じ高さを維持し続けることです。娘はこれすらできず、しかも気づいていませんでした。 地声の高さを特定し、その高さの声を聴かせてから、一緒に声を長く出す練習を繰り返しました。 最初はすぐ下がっていってしまいましたが、ほどなくだいたい一定に保てるようになりました。そこで次はこちらの声なし、キーボード音のみ聴かせながら声を長く出す練習にしました。 すると予想通り、とたんに音がずれていってしまいました。 想定していたので、断続的にこちらの声を聴かせ、徐々に聴かせる頻度を減らすという形にし、やっと楽器音のみで高さを維持できるようになりました。 あとで訊くと「とにかくキーボードだと全然わからなくて、どうしようかと思った」とのことでした。 といってもこれは地声、もっとも出しやすい高さの声なので、次は一度高くなった音で同じことをしました。 これまた予想通り難渋しましたが、おしまいにはできるようになりました。 さらにもう一度高くなった音で同じことをして、次はいよいよ第2段階の音の変化です。地声をドとして、「ド〜〜〜レ〜〜〜」と一音上げる練習に入りました。 もちろん最初はこちらが一緒に声を出し、合うようになったらキーボード音のみで出す、というやり方です。 これまたやっぱりこちらの声があれば比較的できますが、キーボード音のみだと高くなりすぎたり低くなりすぎたりしてなかなか合いません。 同じヒントの出し方をしてようやくクリアしました。 この調子で「ド〜レ〜ミ〜ファ〜ソ〜」とキーボードに合わせて5音変化できるところまで行きました。この時点で練習開始から1ヶ月です。 そして最後の基礎の基礎練習、第三段階ドレミの音階練習に入りました。 娘の地声は「シ」の高さだったので、これを一音上げた「ド(C4)」から「ド〜レ〜」「ド〜レ〜ミ〜」とキーボードに合わせて上げ下げする練習をしました。 外れたら声を聴かせて高さを修正、これをドからソの間の高さの音で反復練習しました。 そして最後、「ド」だけキーボードで出して合わせ、そこからアカペラで「ド〜レ〜ミ〜」と上げていく練習に入りました。 開始から2ヶ月経ちました。だいたいできるようにはなったのですが、 常に出だしは調子悪く、練習していると合ってくるものの、急に出させたり、休憩してから出させたりすると、またかなり外れたりしました。 結局あとは練習量だろうと思われましたので、ここで秘密兵器、IT機器を入れることにしました。 それはチューナーアプリです。ギターなどをチューニングする時に使うアプリです。マイクで拾った音がC4なのかD4なのか、どのくらいずれているのか、これで表示できます。 ここで使ったのは「楽器チューナー Lite」 ですが、類似のものはいくつも出ています。 これは人の声でもちゃんと反応してくれるので、これを見ながら音階を出せば目標の高さから高いか低いかすぐわかります。 これを使って自主トレーニングをする、ということにしました。 今のところ、娘の歌はまだまだ上手とはいえません。でも前より随分ましにはなりました。 なにより驚いたのは「その歌、音がずれてるよ」と人の歌のずれを指摘できるようになったのです。 これは今までただの一度もなかったことで、「違いがわかるようになったんだね」と思わず言ってしまいました。 どこまで上手になるかは今のところ未知数です。やり方は分かったはずですので、あとは本人のやる気次第でしょう。 また求められたら、必要に応じて助けてやりたいと思っています。 |
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2017 01,16 03:34 |
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◆気になるボイスコラム◆ vol.048 2017.01.16号より
☆声にこだわりを持つ筆者がこだわってお届けします☆ 今回はうちの娘の話です。 娘が初めて歌を歌ったのは2歳を過ぎたころでした。保育園では歌の時間がありましたし、ボタンを押すと歌が流れる絵本もありました。 私も保育園の送り迎えやお風呂でよく歌を聴かせていましたから、歌を歌い出すのは必然だったでしょう。 その歌は、はとぽっぽとか、おじいさんの時計とか、そんなところだったと思います。 ところがその歌が、メロディもリズムも全くオリジナルからかけ離れていて、歌詞からかろうじてその歌か?と類推できる、というようなシロモノでした。 ちっちゃい子の動作全般が拙いのは当たり前。しかしなんと歌を歌うのもこんなに拙いんだなあ、と結構びっくりしたものでした。 でもまあ、そのうちちゃんと歌えるようになるだろう、と特に気にもしないでおりました。 ところが幼児から年長さんになり、小学校に入学し、低学年を終える頃になっても、一向に人並みに歌が歌えません。 最初は歌をちゃんと覚えていないか、もしくは適当に歌っているのかと思っていました。 ところがよく知っているはずの歌、好きだという歌でも全然音が外れていて、とにかくちゃんと歌えた試しがありませんでした。 ここに至って、この子は音痴だ、と判断せざるを得ませんでした。 音痴とは、決して学術用語ではありませんが、歌唱に必要な能力が劣る人を指す言葉です。 音痴は自覚していることもあるが、指摘されないと分からない場合もあるといわれています。果たして娘は「別に歌は下手じゃないもん」と言いました。小3のことです。 そう言われてしまうとしようがありません。強制してもダメだろうと思われましたので、「歌がもっとうまくなりたい、という気になったらそう言って」と言っておきました。 それから3年、6年になった娘はとうとう「音痴だと思う。もっと上手になりたい」と言いました。思えば初めて歌った時から10年。なかなか長い時間が経ったものです。 さて、音痴と言っても、音程がずれてしまう、いわゆるメロディ音痴だけでなく、リズムが調節できないリズム音痴、 声量の調節ができない音痴、音程の維持ができない音痴、音域が狭い音痴などさまざまあります。 しかしその原因は大きく分ければ二つ。ひとつは喉頭筋の問題。運動コントロールが未熟で、目標の高さの音程が出せないというもの。 もうひとつは音楽聴取能、つまり聴き取りの問題。本人が音程がずれているか判断できないために、ずれてしまうというというもの。これも一般的には音楽聴取能の未成熟によるものです。 まず原因がどこにあるのかはっきりさせねばなりません。 とりあえず地声の高さを調べ、キーボードと同じ高さの声を出すように、と言って出させると、これが全く違う音。「これだよ」と声で出して聴かせると、なんとか同じ音を出せました。 本人によると「楽器だと自分の声と同じか違うかわからない」とのこと。つまり楽器と自分の声を同期できないのです。 ドレミも全くずれてしまってまともに出せません。また自分ひとりでは声の高さを一定に保てず、ずれていってしまいます。 結局、娘の音痴の原因は、喉頭筋の運動コントロールと音楽聴取能の未熟の両方にあるようでした。これでは上手に歌えるはずがありません。 はっきり言えば厄介ですが、逆に言えば、そうでなければここまで問題が残らなかったでしょう。 ただ楽器の音は分からなくても、声のお手本があれば目標の音程が出せるのは幸いでした。これならそこから誘導するという方法が使えそうです。 まず声で誘導して楽器の音と同じ音程を出せるようにすること。次にドレミの音階を楽器に合わせて出せるようにすること。 最後にドだけ分かればひとりでドレミの音階が出せるようにすること。 ここまでできれば後はひとりで練習できるでしょうから、まずこの三段階がクリアできるようにトレーニングをすることとしました。 しかし娘の音痴はなかなかに手強かったのです。後編へ続く。 |
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2017 01,04 08:29 |
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◆気になるボイスコラム◆ vol.047 2017.01.04号より
☆声にこだわりを持つ筆者がこだわってお届けします☆ 前回の続きです。人工音声はいまやどんどん進化しています。コンピュータの声も、だんだん人の声と区別がつかなくなるでしょう。 人工音声の技術が進むと今後どうなるのでしょうか。ちょっと考えてみたいと思います。 といってもずっと先のことは分かりません。あまり先のことは実感もわかないですし、外れる公算が大きいですから意味も乏しくなってしまいます。 ですからおよそ10年後、今の技術から推定して現実的に可能で、市販できて広まりそうなこと。それはなにか。 とりあえず、すでに失われた過去の人の歌声を蘇らせることなんかどうでしょう。 もちろんある程度の声のサンプルが揃っていることが前提です。 ボーカロイドと同じ原理で、音をつなぎ合わせて作り出せると思われますが、技術が進めばボーカロイドの時のようにすべての音の組み合わせが揃っていなくても、 サンプルから推定して、足りない渡り部分の音は作り出せるようになるのではないかと思います。 これにより、例えばビートルズやマイケル・ジャクソンなどの、多くの人々にとって懐かしく、 もう一度聴きたいと願うようなアーティストに、新しい現代の曲を歌わせたり、新譜を歌わせる、といったことができます。 もちろん楽曲の新発売というようなことではなく、お遊びアプリとしての使い方、 例えば、個人的にこの人にこの曲を歌わせてみたい、あるいは自分で作った歌を歌わせてみたい、という使い方になるでしょう。 ラインナップの揃え方では充分商品として通用すると思います。 ところで、歌だけじゃつまらない、どうせならあの憧れの俳優や歌手と会話できたらいいのに、と思われる向きがあるかもしれません。 確かにそうです。ただ結論からいうと、コンピュータに実在の特定の人らしく自由にしゃべらせることはかなり難しいでしょう。 コンピュータに、実在の特定の人の声をもっと完全に出させることはできると思います。 必要なものはある程度の量の音声サンプル、そして3-D CTを使った声道の立体構造のデータです。 このデータがあれば、その人の声の特徴をシミュレーションして声の響き具合などを計算で割り出せます。おそらく完全に近い形で声を再現できるでしょう。 しかし声が再現できればその人のしゃべりになるかというと、残念ながらそうはいきません。 しゃべり声には、速さとか間とか、使う言葉のくせとか、なまりとか、イントネーションとか、いろいろと個人特有の特徴があります。 ですから、コンピュータがいくらその人と同じ声を出せても、その人らしいしゃべりを創出することは非常に難しいと思われます。 もちろんその人のしゃべりの膨大なサンプルがあり、その特徴を自動分析してコンピュータが自己学習する、といったことは理論的にはできなくないかもしれません。 ただそれができるようになるのはまだかなり先のことでしょう。 とはいうものの、長い会話は無理ですが、もっと簡単な、「おはよう」とか、「いってらっしゃい」「お疲れさま」みたいな短いフレーズの会話なら、 今のシステムの延長で充分実現できると思います。 iPhoneのSiri程度の簡単な会話ですね。 その程度の会話であっても憧れの俳優やタレントの声と、一方的でなく双方向でお話できる、となれば、意外に売れるんじゃないでしょうか。 さて、タイトルの電気羊という謎のワードですが、人工知能の精度を判定する方法としてチューリング・テストというものがあります。 チューリング・テストとは、人間の判定者が、人工知能と会話をして、人間と区別できなければ、その人工知能は本物の知能があると考えて良い、というものです。 しかし人工知能は「電気羊」のような実在しないものについて訊かれた場合、「見たことないが不味そうだな」とか「人造ウールでひと儲けするのか」みたいに想像力豊かな応答ができず、 「電気羊など現実に存在しない」というようなぎこちない反応を返してしまいがち、と言われています。 つまり人工音声は今後も進化を続けるでしょうが、コンピュータに電気羊の歌をリクエストしても「知らない」と歌ってはくれないでしょう。 コンピュータは過去のデータから類推してしゃべることはできても、何もないところから創造することは苦手なのです。 少なくとも今の技術の延長線上ではそう考えられます。残念ながらボーカロイドは電気羊の歌は歌わないのです。 |
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2016 12,19 06:16 |
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◆気になるボイスコラム◆ vol.046 2016.12.19号 より
☆声にこだわりを持つ筆者がこだわってお届けします☆ ちょっと謎っぽいタイトルですが、その話はとりあえず置いといて。 要するにコンピュータで作る人工音声のお話です。 コンピュータがしゃべる声ってどんなイメージでしょうか? ちょっと古典的ですが、一音一音とぎれとぎれで抑揚なくしゃべる、といったイメージが浮かびますよね。 ピンとこない方は一度やってみてください。確かにいかにも機械的な感じでしょう。誰でもこんなシーンを映画やテレビで一度は見たことがあると思います。 さて、ここで疑問です。どうしてとぎれとぎれ声だとコンピュータの声、という気がするのでしょうか。 昔テレビで観たから、というのなら、テレビのディレクターはどうしてそんな設定にしたんでしょう。ちょっと気になります。 そもそもコンピュータで人工的に声を作り、コンピュータ自身にしゃべらせようというのはずいぶん昔から色々と試みられていました。 コンピュータやロボットがしゃべったら面白いし便利だろうな、という訳です。 コンピュータで「ピー」というような音を出すことは昔でもさほど難しくありませんでした。でもこれでは声になりません。 声は色々な高さの音の集合です。では人間の声を分析して、色々な高さの音を重ねて出せば人間と同じ声になるじゃないか。 というわけで音を重ねたら、ちょっと独特な機械的響きですが、なんとか声に聴こえるような音を出せました。この方法をフォルマント合成といいます。 さてこれでコンピュータがしゃべれるようになったかというと、さにあらず。 例えばこの方法で「あ」と「め」を組み合わせて出しても、自然な「あめ」に聴こえず、「あ」「め」とバラバラに聴こえてしまうのです。 しかも「雨」なのか「飴」なのかわからない、というおまけつき。 実は人間がしゃべる「あめ」は、「あ」と「め」の間に「渡り」という部分があって、この「渡り」の間にも声は出ているのです。 フォルマント合成方式では渡りがないためバラバラに聴こえてしまった、という訳です。ですからこの「渡り」の部分に声を当てはめないといけないのです。 ところがこの音の組み合わせは膨大な数に上ります。50音ぐらいならいいのですが、膨大な組み合わせを全てコンピュータが処理して実行するのは当時としてはとてもじゃないが無理、 しかも抑揚の情報まで入れるなんて夢のまた夢、ということになりました。 でもせっかくなので、とりあえずとぎれとぎれでいいからしゃべらせようじゃないか、となって、コンピュータはとぎれとぎれの言葉を発し始めました。 それをリアル志向の映画がネタにしました。そして、コンピュータの声ってああなのか、と人々に刻み込まれた、というわけです。 しかし、そこから時代は移って2007年、ボーカロイドというコンピュータ人工音声システムが発売されました。 これは音符と歌詞を入力すると「初音ミク」というキャラクターが人工音声で歌ってくれるというソフトです。 しかも音の強弱・ビブラート・息継ぎなどを設定すると、人間が歌っているような、なめらかな旋律に編集できる、というので瞬く間に世界中に広まりました。 どうしてそんなに自然な人工音声が作れたかというと、実は実際の声優さんの声を使っているのです。 つまり声優さんに実際に声を出してもらって、それを録音してつなぎ合わせたというわけ。そして音がバラバラに聴こえる弱点を補うために、全ての組み合わせの「渡り」部分も収録しました。しかも何通りもの高さで。 それなら確かに自然になるでしょう。単純な力技と言われればそうですが、コンピュータの記憶容量と処理速度が飛躍的に向上したからこそできたことです。 この方式を「素片連結型」といいます。これで制作された楽曲はボーカロイド曲とよばれ、盛んに自作曲が動画サイトに投稿されるようになりました。 ちなみに最初から単語や文を録音して場面によって切り替えて合成する方式もあります。 これはもっと自然でなめらかですが、当然容量は比べものにならないくらい膨大になります。今はまだ実用的な方式とはいえません。 ただししゃべる言葉が「10時です」のように限られていればどうってことはありません。すでに時計とかカーナビとかの家電などで実用化されています。iPhoneのSiriもこれです。 このように人工音声はどんどん進化し、人の声に近づいてきています。コンピュータはいずれ人のようにペラペラとしゃべり出すのでしょうか。 今はマウスやタップで操作するだけのパソコンやスマホとも、言葉で自由に会話できるようになるのでしょうか。 人工音声の技術が進むと今後どうなっていくのでしょう。後編では現実にどんなことができるようになるのか、そんなお話をしたいと思います。 電気羊の歌、という謎のタイトルの意味も後編で。 |
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2016 12,05 05:10 |
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◆気になるボイスコラム◆ vol.045 2016.12.05号 より
☆声にこだわりを持つ筆者がこだわってお届けします☆ 私はふだん言語聴覚士として多くの患者さんと接していますが、新人の理学療法士や作業療法士、特に言語聴覚士が患者さんに話しかけている声を聴くと大変気になります。 それは、ああ、声が患者さんに届いていない・・・、そんな感じがものすごくするからです。 別に私の勝手な思い込みではありません。現実に、話しかけられた側の患者さんの反応が新人とベテランとで違うのです。 特にご高齢の方で顕著な気がします。新人にはうなづくぐらいしか反応しない人が、ベテランには言葉で返事して、さらに笑顔まで見せたりする、なんてことは珍しくもないのです。 若者は心がこもってないから、みたいなありふれた精神論で片づけたくはありません。 事実、新人たちはみな一生懸命やっています。 声も大きな声を出しています。決して声が小さくて聴こえない、というわけではありません。声は大きいのにどうしてこんな差が出るのでしょう? ちなみに若いから軽んじられている、というわけでもなさそうです。20代後半〜30代の新人は珍しくありません。 外見ではキャリア十数年の30代と新人の30代の区別はつかないのです。 身振りとか表情、という声以外の要素もあると思いますが、やっぱり声そのものにも差があるように感じます。 なぜなら、新人の声は聴くだけで、いかにも新人、と分かるのです。さて、ベテランと新人は何が違うのでしょうか。 どうもそれは声の響き、なのではないかと思います。新人は声の響きがベテランに比べて乏しく、少しこもったような音色に感じます。 ついでに抑揚にも少し乏しいかもしれません。逆にいうと抑揚を少し乏しくしてこもりがちな感じにすると新人ぽくなるともいえます。 新人のうちは慣れていませんから当然緊張しています。精神的な緊張は身体的な緊張を生じさせます。全身の緊張は喉頭および声道の筋肉も緊張させ、結果声道が狭くなり、少しこもったような響きになっている、というのはありそうな話です。 抑揚の乏しさも同じく喉頭の緊張で説明できそうです。 通らない声は、耳が遠くなってきている高齢者には、やはり聞き取りにくいのかも知れません。 抑揚はことばの理解の助けになりますので、抑揚が乏しいと聴いたことばが分かりにくくなります。 このあたりが相まって言われたことがピンと来ず、新人への反応が薄くなっていったのかも、というこれはあくまでひとつの解釈です。 さてそんな新人たちですが、先輩との差を思い知って落ち込んだり、患者さんたちに拒否されたり、笑ったり泣いたりいろいろな経験を積んでいくうちに、 新人ぽい声はいつの間にか消えて、先輩たちと同じプロの声が出せるようになります。 別に特別な発声プログラムを組んでいるわけではないのですが、それが成長ということなのでしょう。 私は新人の声を成長の指標のひとつに考えています。すっかりプロっぽくなった声を聴いて、まず第一段階は卒業、と私はひと安心するのです。 |
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2016 11,21 06:54 |
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◆気になるボイスコラム◆ vol.044 2016.11.21号 より
☆声にこだわりを持つ筆者がこだわってお届けします☆ マイケル・ジャクソンの音楽プロデューサーとしても知られるクインシー・ジョーンズが1985年に全米のスーパースターを集めて制作し、全世界で2000万枚以上が売れた「We Are the World」。 そのクインシーがもう一度あの企画をやりませんか、と訊かれたとき、「今はもう、声を聞けばあの人だ、とわかる特徴的なアーティストがいないからね」といったとか。 We are the world参加アーティストの声はそんなに特徴的なんでしょうか。気になったのでひとつ久しぶりに聴いてみようと思います。 こちらの動画を観ながらどうぞ。コメントは登場順です。 https://www.youtube.com/watch?v=wXTcV0F4Dm0 なおこのコメントはあくまでこのWe are the worldを歌ったときの声のみについてのものですので念のため。 第一グループ 1)ライオネル・リッチー:若干気息声傾向です。少し鼻音化を効かせているのが特徴かなと思いました。 2)スティーヴィー・ワンダー:わりと雑音成分のない高くてきれいな声ですが、若干気息声があります。 3)ポール・サイモン:わりと雑音成分のないきれいな声です。 第二グループ 4)ケニー・ロジャース:気息声です。強めに鼻音化させているのが特徴的でしょう。 5)ジェームス・イングラム:わりと強い気息声です。 6)ティナ・ターナー:かなりの気息声です。喉頭下降ビブラートを強く効かせているのが印象的でした。 7)ビリー・ジョエル:若干声道が狭いようですが、鼻音化が効いてソフトになっていると思いました。 8)マイケル・ジャクソン:雑音成分がなく、ものすごくきれいな声です。他の追随を許さない飛び抜けて随一の声でしょう。 9)ダイアナ・ロス:やや気息声が目立ちました。 第三グループ 10)ディオンヌ・ワーウィック:かなりの気息声です。呼気を強めないと有声が出にくいんじゃないでしょうか。声量で補っているようでした。 11)ウィリー・ネルソン:雑音成分のないきれいな声です。特徴的な声の響きをさせていると思いました。 12)アル・ジャロウ:やや気息声です。ビブラートは控えめかな。 13)ブルース・スプリングスティーン:かなりの気息声に粗ぞう声です。キャラが強そうです。アメリカ版森進一、というか甲本ヒロトな感じ。 14)ケニー・ロギンス:語尾にやや気息声と粗ぞう声ありますが、全体に雑音成分のないきれいな声です。 15)スティーヴ・ペリー:同じく時折粗ぞう声が混じりますが、全体に雑音成分のない、きれいな声です。 16)ダリル・ホール:やっぱり時折粗ぞう声混じりますが、雑音成分のない、きれいな声です。 第4グループ 17)ヒューイ・ルイス:気息声とやや声道の狭い声です。声量がすごいです。 18)シンディ・ローパー:雑音成分は少ないものの、ちょっと声道の狭い声です。 19)キム・カーンズ:気息声と声道の狭い声です。 リピート 20)ボブ・ディラン:なんとノーベル文学賞受賞で話題を集めたボブ・ディランです。これは声というより歌い方が特徴的ですね。 楽譜をボブ・ディラン流にアレンジして、歌うというより叫ぶという感じです。 21)レイ・チャールズ:トリは伝説のアーティスト、レイ・チャールズです。これも楽譜をレイ・チャールズ流にアレンジして、すごい存在感を出しています。 こうしてみると、きれい系の声のグループ、気息声系のグループ、声道狭い系のグループ、独自路線グループ、というように、 ある程度グループ分けしてボーカルを繋いでいるように思えます。グループごとに最後にデュエットが入ってくるので、声質を揃えたのかもしれません。 とするとそこまで考えた、プロデューサーのクインシー・ジョーンズの手腕はやっぱり凄かった、ということになるのかもしれません。 |
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2016 11,07 06:27 |
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◆気になるボイスコラム◆ vol.043 2016.11.07号 より
☆声にこだわりを持つ筆者がこだわってお届けします☆ 子供っぽい声と子供の声の違いが気になります。 子供っぽい声の人っていますよね。また大人の女性声優さんが子供の声を演じることは普通にあるようです。 でもいくら子供っぽいといっても本当に子供と同じ声ではないような気がします。 電話のように聞こえづらい場合は別として、声だけ聴いて子供と間違えてしまう、なんてことは実際には起こらないんじゃないでしょうか。 なお、この場合の子供というのは幼児から小学生程度を想定した話です。 例えばジブリをはじめとする多くの国内アニメ作品で、声優さんが当てている子供の声の演技はとても素晴らしいものも多いわけですが、 ああこれは本当にその年齢程度の子供が演じているな、と思わされることはまずありません。 一方、ディズニー作品の吹替版では基本的に子供の声は子役さんたちが当てているようなのですが、こっちは疑いなく本当に子供が演じていると感じます。 演出上どちらが効果的かはここでは関係ないので触れませんが、違いを感じてしまうのは演技ということではなく、発声の何かが違うのではないかと思います。 それはなんでしょう。気になります。 さて、子供の声の特徴というと第一には高いことですね。成人女性の声の平均基本周波数が250~500Hzであるのに対し、子供の声は300~800Hzといわれています。 成人男性は80~150Hzですので、子供の声と全く重なりませんが、成人女性なら重なっていますので、子供に近い声を出せるのもうなずけます。 とはいっても高くすれば子供の声になる、という単純な話ではないようです。 ピンクの電話の清水よし子さんとか、声優の金田朋子さん、林家パー子さん、元マラソン選手の松野明美さんらは、皆かなり地声が高いですが、やっぱり子供の声と聴き間違えたりはしません。 なお、ここでは語尾の上げ伸ばしとか、未熟な発音とか、話す内容とか、声以外の要素は省きます。 単に「ああ」とか「うん」「え〜?」など相槌のような発声だけでも子供の声と子供っぽい声は違うように思えるからです。 となるとなんでしょう。 実は子供の声と子供っぽい声の違いは響きにあるのではないか、という話があります。 子供の声は響きが少ないので浅い、いわゆる深みのない声になっている、というものです。 深みがないというのは分かりにくい表現ですが、私たちは音を聴いた時、楽器でいう和音のように音が幾重にも重なっていると深く感じ、重なっていない単純な音だと浅いと感じるのです。 さて、声は声帯で作られた後、喉頭腔・咽頭腔・口腔を通って唇から発せられますが、この喉頭腔・咽頭腔・口腔という声の通り道、 つまり声道で反響することによりそれぞれの独特な声になります。 声道の長さは成人と10歳の子供では約24%ほど子供の方が短いとされていますが、声道の長さが違えば、反響の仕方も違ってきます。 反響場所が多いほど響きは多くなり音は複雑になりますから、声道の長い大人の声は自然に深くなる、というわけです。 実際、音響分析をすると子供の声は第一フォルマントという周波数帯域の音が大人よりも少ないと言われています。 つまり大人はいくら声を高くしても、声道の構造上、音が幾重にも響いてしまうので完全に子供の声を出すことはできないということになります。 子供っぽい声と子供の声の違いはここにあると考えられます。 ところで最近、「3月のライオン」というアニメ作品を見る機会があったのですが、登場人物のひとりの声を聴いて、珍しい、本当の子役ではないか? と思わされました。 ところがこれがれっきとした女性声優さんで久野美咲さんとおっしゃる方でした。幼い子のリアルな声、が特徴なのだとか。 どうしてこのような声が出せるのでしょう。なにか秘訣があるのでしょうか。まだまだ気になります。 |
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2016 10,17 11:11 |
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◆気になるボイスコラム◆ vol.042 2016.10.17号 より
☆声にこだわりを持つ筆者がこだわってお届けします☆ ヘリウム発声が気になります。 皆さんもテレビなどでみたことがあるでしょう。ヘリウムガスを吸って声を出すと不思議な声になります。 目立つ特徴として音域が高くなりますが、それだけではありません。ヘリウム発声って、単にその人がまた高い声を出したな、という感じじゃないでしょう? 普通では出ないような、ボコーダーで加工したような、なんとなく人工的な感じの声に変化するように思います。 ヘリウム発声はアヒルのような独特な声なので、俗に「ドナルドダック効果」とも呼ばれているようです。 なおヘリウムガスは、空気よりも軽いので、アドバルーンや風船、パーティーグッズなどによく使われており、 パーティーグッズのヘリウムガスはヘリウム80%・酸素20%の混合で、無臭・無味・無毒、血液に溶けにくいので、安心して使えるのだそうです。 さて、なぜヘリウムガスで声が変わるのか。 声は音です。音というのは空気の振動です。空気全体が動けば、風が吹いたということになりますが、空気の振動が伝われば、音が伝わったということになります。 つまり空気の振動が人間の耳の鼓膜を揺らすと人間はそれを音として感知します。 あるいは、空気振動がマイクの振動板を揺らすと振動が電気信号に変換され、機械が信号を処理して、録音したり音を増幅したりします。 この空気の振動数の多い音を人間は高い音と感じ、少ない音を低い音と感じます。1秒間の振動数(周波数)が1回のものが1ヘルツ(Hz)です。 ピアノの鍵盤の真ん中のドの音は 261.6Hz くらい、その5つ右のラの音は 440Hz です。人間の耳は20~20000 Hz くらいの音を聴くことができます。 で、なぜヘリウムガスで声が変わるのか、ということですが、ヘリウムガスは空気よりも軽く密度も小さい気体です。 軽くて密度も小さいので、同じ力で振動を起こすと気体抵抗が少ないので振動がより素早く数多く起こります。 つまり振動数が多くなるわけです。それによって高い声になるというわけです。 そしてあの独特のヘリウム発声の響きですが、同じ高さの音、つまり同じ振動数の音であっても楽器によって違う音に聴こえます。 これは空気振動の波形が異なるからです。同じ高さでも、ピアノとバイオリンで音が違って聴こえるのは、波形が違うためです。 ヘリウムガスは軽くて密度も小さいので、声帯の振動数が変わるだけでなく、波形も変わってしまうと考えられます。 これにより声が高くなるだけでなく、独特な響きになると考えられます。 というこのヘリウム発声ですが、「おかしな声だね、ハハハ」で終わらせるのはもったいないように思います。なにか発声トレーニングに使えないでしょうか。 発声練習の途上では声帯に過剰な力が入ってしまう場合が多く、あの手この手で力が入らないように工夫します。 あくびをさせたり、笑わせたり、吸気発声をさせたり、舌の先に響くようにイメージさせたり。 だったらヘリウム発声はどうでしょう。 これならなんの努力も要りません。あくびやらイメージやらは、いざやるとなるとやっぱり結構うまくできないものです。 ヘリウムの声だと思わず笑ってしまったりして、力も抜けやすいんじゃないでしょうか。 これを導入部に使って発声練習をし、ヘリウムが切れてくればだんだん普通の声になりますから、自然な形で普通の発声練習に移行することができそうです。 繰り返していればコツを掴んでどんどんうまい声が出るという感じに行かないでしょうか。 なにより方法が簡単ですし、試してみるぐらいはやってみてもいいかもしれません。 というわけで、ヘリウム発声が気になります。 |
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2016 10,09 07:46 |
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◆気になるボイスコラム◆ vol.041 2016.10.03号 より
☆声にこだわりを持つ筆者がこだわってお届けします☆ 後編です。 いよいよ整体学校に入学しました。学校は平日だと19時からで、講義1時間、実習1時間、計2時間という構成。 前半の講義で理論や方法を学び、後半の実習でその実践、というスタイルでした。これは頭にも体にも入りやすいうまい構成で、よく考えられている、と思いました。 土曜はこれが倍になり4時間ありました。 地理的に仕事が終わってからでも充分間に合ったので普段は余裕でしたが、仕事の都合で講義に出られない日には、その旨学校に告げると無料で補講を組んでもらえました。 複数欠席者がいる場合は時間を調整するのですが、先生の都合さえ合えば一人だけでも普通に2時間補講をしてもらえました。 仕事を無理に調整しなくても良かったことは、とてもありがたいことでした。 こんな制度は私が教師をしていた学校にはなかったので、あの時あれば学生さんがどんなに助かっただろうと思ったりもしました。 同級生は12人で、ほとんどが20代から30代、男女は半々ぐらい。職業としては主にサラリーマンやOLさん・主婦の方でしたが、 中には生徒さんに役立てたいからとかという特別支援学校の先生や、家が整体院で家を継ぐという高校生などもいて、なかなか多様でした。 サラリーマンでは整体院を経営したいという人が多く、OLさんは整体院に勤めたいという人が多いようでした。 さて講義の内容は人体の骨格の作りや名称、筋肉の名称や構造・作用、運動学の基本などを部位別に行っていく感じでした。 クラスの皆は「外転」「外旋」など慣れない用語になかなか苦労していましたが、私は半分ぐらいはすでに知っていることだったのでこれまた結構余裕でした。 私が医療職と知るとクラスの皆から「今のどういうこと?」と空き時間に訊かれたりもしました。 とはいえ覚えるべき筋肉は全身に渡るのでやたらと数が多く、しかも講義の始めには前回の復習の小テストがあったので、とにかく通勤時間など時間を見ては暗記をしました。 仕事柄人体のイメージはしやすいので比較的暗記は容易だったのですが、いざ小テストを受けると、困ったことに漢字がちっとも思い出せません。 私の職場は何年も前に電子カルテになっていて、もうずいぶん手書き文字をほとんど書いていなかったのです。 こんな字も思い出せないなんて・・・とこれは結構ショックでした。 毎回、前半の講義が終わると後半実技に移るわけですが、まず先生が全員を施術し、そしてペアを組んでお互いにやってみるという段取りでした。 目的の筋肉の場所もやり方も聞いたところですし、テクニックとしても特に難しくもない印象、軽い軽い・・・。 ところが実に驚いたことに先生とまったく同じようにやってもペアの相手は「全然違う。なんか効かない」というのです。 そんなバカな、ではこうか?こうか?とやってもやっても「う〜ん?」というばかり。???という状態で交代してペアにやられてみるとこれまた全然先生と違う。 先生のはズンと響くように効くのに、ペアのはいくら強くやられてもボンヤリしていて効いてる感じがない。今度はペアが???と悩む番になりました。 結局、力が弱いとかでは決してなく、微妙な重心の位置とか指の角度とかで力の集中とか伝わり方が全く異なるのだ、ということのようでした。 実に驚嘆すべき事実。こんなにほんのちょっとした身体の使い方で全く効果が違うとは! 整体の学校に来てから言うのもなんですが、私は整体を実際に受けたことはほとんどなく、実は効果のほどを実感したのはこれがほぼ初めてだったのです。 これはしっかり覚えねば。効果を出せる重心位置とか指の構えは部位やテクニックごとに違うので、とにかくそれを体に刻み込まねばなりませんでした。 その後はまあいろいろで、点圧の練習のしすぎで指がパンパンになってしまったりとか(誰でも通る道だそうです)、 中間テストで漢字の間違いでやたら×を食らったりとか(恥ずかしい限りです)、あげく卒業の実技試験で再試験になってしまったりとか(規定時間内に終われなかった)、 まあ苦労しましたが、とにかく卒業でき、なにより勉強になりました。行ってよかったです。 ところで肝心の発声への応用ですが、整体では呼吸筋も喉頭筋もその対象としては想定されていませんでした。 当然学校でも習いませんでしたし、先生方もご存知ありませんでした。もちろんそれは百も承知で入学したのです。 ですから卒業で完成ではなく、学校で学んだノウハウを自分なりにアレンジして呼吸筋と喉頭筋に応用する作業が必要でした。 しかし筋肉には可能性があることを私は身をもって知りました。あの効いた感覚を今度は発声に生かしたい。 こうして私の目指す発声エクセサイズは今の形に進むことになったのです。 |
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2016 09,19 18:33 |
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◆気になるボイスコラム◆ vol.040 2016.09.19号より
☆声にこだわりを持つ筆者がこだわってお届けします☆ 今号はメルマガ40号。キリ番号ですので、またまたながら思い出話を書こうかと思います。 前回30号では、発声練習の進め方が分からず、ボイトレ教室に潜り込んだりして、徐々にコツを掴んでいったお話を書きました。 さて知識はついた、進め方もだいたい分かった、これで大丈夫なはずでした。ところがさにあらず。 目の前の患者さんたちの声を変えるには、まだひとつ大きなハードルがあったのです。 それは、目の前の患者さんたちのほとんどがかなりの高齢者であったことでした。当時の私の勤め先は高齢者専門の機関だったので高齢者ばかりなのは必然でした。 高齢者だと何が問題かというと、ちょっとでも慣れないとか、分かりにくいこととかは、続けてもらえなかったり、拒否されたり、そもそも手順が理解されなかったりするのです。 腹式呼吸などでもかなり難しく、ましてあくび−ため息法とか、吸気発声とか、チューブ発声法とか、方法はたくさんあるのに、 やってもらおうとすると難しくてできない方法がゴロゴロありました。それこそ使える方法がほとんどないという人も大勢いました。 しかしその中でほぼ唯一、誰にでもスムーズに行うことができた方法があったのです。それが喉頭マッサージでした。 分かりにくい手順の理解や受け入れがほぼ必要のない方法なので当然といえば当然でしたが、実際これをすることで少し声が良くなった、というケースが少なからずありました。 こうなればこれを推していくしかない、そう思いました。 しかし、喉頭マッサージは正直やり方がよく分かりませんでした。 マッサージすべき筋肉の場所は分かるのですが、そもそもマッサージというものはどうやってやるものなのか、理屈はどうなっているのか、禁忌はないのか、一切分かりませんでした。 言語聴覚士は解剖学などは習いますが、運動学・運動療法学などはカリキュラムにないので、だいたいが筋肉の扱いについては疎いのです。 さらに高齢の患者さんには息そのものがとても弱い人がたくさんいました。声をしっかり出してもらおうにもそもそも息が弱いので出しようがないのです。 触ってみると呼吸筋はガチガチに硬く、しかもやせ細っていて、とても大きく吸ったり、強く吐いたりできそうにありませんでした。 腹式呼吸なんてましてや無理という感じでした。 これはまず呼吸筋から変えないとどうにもならないだろう、このガチガチをほぐすところから始めないと。そう思いました。 しかしいかんせん。筋肉関連はさっぱり弱いところです。さてどうするか。 同僚の理学療法士に教わる方法もありました。実際少し教えても貰いました。しかしこの時ひとつ思い出したことがあったのです。 それは私がかつて一緒に仕事をした尊敬するある理学療法士の言葉です。 私が、腕のいい理学療法士は何が違うのか、と訊ねてみたところ、その理学療法士の答えは「筋肉の触り方で腕の違いが出る」でした。 これは衝撃でした。筋肉の状態を把握し、それに触り方を合わせる。そんな世界があるなんて、考えたこともありませんでした。 私もどうせなら筋肉の触り方から学びたい。できれば筋肉の状態に合わせた触り方ができるようになりたい。 それにはちょっと教わるのではなく、学校などで本格的に学ぶ必要があるだろう。どんな方法があるか。調べてみました。 本格的というならあんま・マッサージ師という資格があります。しかしこれは3年間学校に通う必要があるようでした。 ちょっと時間がかかりすぎ、という感じでこれは断念しました。柔道整復師・鍼灸師も同じような感じでした。 その中に整体師というものがありました。これははっきりとした資格はないのですが、かわりに修業年限もまちまちでした。 これがいいかも、そう思っていろいろな整体学校を調べてみました。 するとこれがまたいろいろ。私は整体というと首をゴキっと回すようなやつかと思っていたのですが、むしろそういうのは少数派で、 マッサージっぽいテクニックを中心とした学校、揉みほぐしを中心として教えている学校から、 ツボ押しや経絡といった東洋医学的な考えに基づく学校、ヨガっぽい教えの学校、気をめぐらすというニューエイジっぽい学校まで実に様々でした。 私は若い頃はちょっと気功のセミナーに行ってみたりとかそういうのも好きだったのですが、 今回はしっかり科学的な解剖・生理に基づいた納得のいくテクニックを教えてくれるところ、ということで探しました。 すると運のいいことにちょうどひとついいところがありました。学校は夜間や土曜日に開講しており、仕事を続けながら学べそうでした。 距離的にも充分通える場所にありました。学費もそれほど高くありませんでした。早速見学に行き、入学を決めました。 さてその整体学校で私は驚嘆することになるのですが、続きはまた次号で。 |
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2016 09,05 04:01 |
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◆気になるボイスコラム◆ vol.039 2016.09.05号より
☆声にこだわりを持つ筆者がこだわってお届けします☆ ホーミーの謎の発声が気になります。 ホーミーというのをご存知でしょうか。ホーミーとは、モンゴルおよびその周辺の民族に伝わる伝統歌唱なのですが、実に独特な声です。 ホーミーの意味は「喉の音楽」なのだそうですが、それはまさにぴったりという感じです。 なぜならホーミーの歌声は歌とか発声というよりもある種の楽器のような音色や響きで聴こえるからです。その証拠にホーミーは喉歌とか倍音唱法とも呼ばれるようです。 聴いたことない方、はてどんな声だったかなという方はぜひ以下のリンクで聴いてみて下さい。 http://www.youtube.com/watch?v=b3n3BdOQDIY http://www.youtube.com/watch?v=NNVrmW0VL2I どうでしょう。実に不思議な発声というほかありません。特に詠唱のようになる節の辺りでは、ちょっと人の声に聴こえないような音色をしています。 本当に一種の楽器のように思えるほどです。そしてこの音には空気混じりの口笛のような高音も混じって聴こえます。 そのためとても重層的な響きをもって聴こえ、それが大きなホーミーの特徴にもなっています。 ホーミーはユネスコのアジア太平洋地域無形文化遺産にもなっているようですが、果たしてどうやってこんな出しているのでしょう。謎です。気になります。 さて、一番目のリンクを聴くと、冒頭の際立って低音な部分と中盤以降の口笛のような高音が混じった楽器のように聴こえる部分に大きく分かれます。 このような二分が標準なのかどうなのかはわかりません。しかしとりあえず冒頭部分の低音の発声、この発声法は割と単純です。 これは専門用語で言う粗ぞう声というガラガラ声発声で、まず声帯をぐっと締めて強く緊張させ、その後でわずかに力を緩めるとこのような声を出すことができます。 ただ声道も緊張させると音が響かず小さい声になってしまうので、うまく声帯だけを緊張させねばなりません。修練は必要ですがまあ少し練習すればできると思います。 さて中盤以降の楽器のように聴こえる部分ですが、とりあえず発声そのものは上の低音発声と同じように声帯を強く緊張させて、声道を開けるというところも同じです。 ただしこれだけでは詩吟などと同じ発声なので、あの音色にはなりません。 口腔内をなんらかの形に変形させて響きを変え、あの音色を出さねばなりませんが、なにしろ通常ではありえない音色ですので、ちょっと想像もつかないような変形をしないと出ないと思われます。 調べてみました。典型的なホーミーの発声では、舌先の裏側を上あごの奥の方につけ、舌を巻きあげるようにしてから声を出しているそうです。 慣れてくれば、上あごに着けなくとも、舌と上あごの間にごく狭い隙間をあけただけで同様の音を発生させることができるようです。 これで合点がいきました。音は閉ざされた広い空間があると響いて共鳴します。トンネルとかそうですね。 口の中も同じこと。口の中で広い空間を作れれば声が反響して周波数が増幅され、響く声・深い声になります。典型的にはオペラやクラシック歌唱です。 通常の歌唱ではこの空間は口の中だけなのでひとつですが、ホーミーは舌で口の中を二つに仕切っています。 つまりひとつの空間で響かせた音を次の空間でまた響かせる、という芸当をしていることになります。 これにより通常よりも強い響き、つまり倍音を作り出し、あの音色を出しているのです。 さらにあの口笛のような息の混じった高音ですが、これは舌先と上あごのすき間を息が通る時に鳴っている音と思われます。 ないしょ話の「しー」などと似たようなものですが、もっとすき間を狭くして笛のような音にしている、というわけでしょう。 なお二番目のリンクでは、ホーミーには、唇のホーミー・上あごのホーミー・喉のホーミー・鼻のホーミー・胸のホーミー・言葉と一緒のホーミーの6種類がある、といっています。 これらは音色は違って聴こえますが、基本的には皆同じ発声法で作られています。 最も狭くしている場所、もしくは緊張させている場所を変えることにより違いを出している、という感じでしょう。 ところでロシア科学アカデミーの研究者がこの歌唱法について調査したところでは、ネイティブトルコ人たちは特殊な声帯を持っており、 この声帯によって複雑な歌唱を実現しているとか。 またヨーロッパ人はネイティブトルコ人たちのような喉の構造を持っていないため、ホーミーができないことを示唆した、とのことです。 詳しくはわかりませんが、コーカソイドのヨーロッパ人とモンゴロイドで喉の構造に違いがあるといえばそうかもしれません。 であれば同じモンゴロイドである日本人ならホーミーはやりやすいかもしれません。 ホーミー、やってみたいような気がします。 ただし喉には相当な負担はかかると思います。 ホーミーが気になります。 |
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2016 08,15 07:16 |
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◆気になるボイスコラム◆ vol.038 2016.08.15号より
☆声にこだわりを持つ筆者がこだわってお届けします☆ ナレーションが気になります。 ナレーションって独特ですよね。 ドラマなどを耳だけで聴いていたとして、それが登場人物のセリフなのかナレーションなのか、特に説明がなくとも間違えることはまずないと思われます。 それはつまり、ナレーションにはそれとわかる独特のしゃべり方、声の出し方というものがあるからではないでしょうか。 ではそれは具体的にどんな声の出し方なのでしょうか。気になります。 調べてみました。 よく言われるナレーションのコツに、「5m離れた人と話す気持ちでしゃべる」というものがあるそうです。 これにより、ゆっくり、間をおいて話すしゃべり方になる、ということです。確かにナレーションはセリフに比べて全体にスピードがゆっくりしている印象があります。 また言われてみると、文と文の間にもかなり間があいているような気がします。 なぜナレーションでゆっくり、間をおくしゃべり方が好まれるのでしょう。聞き取りやすいから、という説明では納得できません。 それならドラマの登場人物のセリフだってゆっくりにすべきでしょう。セリフだから聞き取りにくくてもいい、ということにはならないと思います。 いやセリフがゆっくりだと不自然になる、という意見もありそうですが、それならナレーションはあえてセリフとは違う不自然なしゃべりをしている、ということになります。 どうも鍵はこのあたりにあるようです。 結局、ドラマにしろドキュメンタリーにしろ、登場人物は当然自然なしゃべり方をしています。 しかしナレーターは登場人物と同じ空間にいるわけではありません。登場人物を俯瞰する別次元にいるのです。 ナレーターはその登場人物たちの世界の外から語りを入れるので、全く別のしゃべりにしなければ登場人物たちと区別がつかなくなってしまいかねません。 そこで全く違う、あえて不自然でゆっくり間をおくしゃべり方をしているのではないでしょうか。 実際、落語などを聞いていても、語りの部分は声のトーンが落ちてゆっくり間をおくしゃべり方になり、登場人物との違いがわかるようにしているように思います。 そういえばテレビ番組で「モヤモヤさまぁ~ず」というのがありますが、そのナレーションは読み上げソフト「VoiceText」を使った合成音声です。 この番組はさまぁ~ずが東京のなんてことのない町を散歩する、という実にドキュメントな自然そのものの作りです。 そこに人工的で不自然なしゃべりのナレーションをかぶせることで、生のドキュメント性をより際立たせているものと思われます。面白い演出といえます。 ところでもうひとつ、ナレーションのテクニックとして、文節の切れ目の声を高くすると「明るい」「ポップ」な感じに聞こえ、 切れ目の声の高さを低くすると「落ち着いた」「まじめ」「暗い」感じに聞こえる、というものがあるそうです。 また文末の声を高くすると「期待」「未来」「続く」の雰囲気、文末の声の高さを低くすると「完了」「落ち着き」の雰囲気になるとのこと。確かにそんな感じはします。 ただなぜそのように感じるのか、その理由はちょっとはっきりしません。 高くなるのは声帯の緊張、低くなるのは声帯の弛緩ですが、次がまだあるので緊張が高くなる? もう終わりだと声帯が弛緩するから低くなる? ちょっといまいちです。 さらに明るいとか暗いはどうなんでしょう? やっぱり今のところ納得できる理由は思いつきません。また考えてみたいと思います。 ナレーションの奥はまだ深そうです。 |
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2016 08,01 09:59 |
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◆気になるボイスコラム◆ vol.037 2016.08.01号より
☆声にこだわりを持つ筆者がこだわってお届けします☆ 叫び声が気になります。 人はなぜ驚いたときに叫び声を出すのでしょうか。 叫び声は「あっ!」とか「キャーッ」とかです。たいてい大きな高い声です。聞いている方までビックリします。 反射的、といえばそうなんでしょうが、くしゃみやまばたきのような本当の生物的反射ではありません。 叫び声をあげると何かいいことがあるんでしょうか。気になります。 叫び声は、急に何かが目の前に現れた時とか、急に大きな音が聞こえた時とかに出ます。身の危険を感じて、それを本能的に周辺の仲間に知らせるために叫ぶのでしょうか。 確かに叫び声を聞くとビックリして警戒します。もしくは危険対象への威嚇とか。 でも誰もおらず、ひとりでいるときにも叫び声は出ます。さらに、実際に何かを見聞きしなくとも、急に何かを思い出したりしたときにも叫び声は出ます。 必ずしも外部の危険に反応して叫び声を出すわけではないようです。ポイントは「急な」の方にあると思われます。 身体の仕組みの方から考えると、急に何かに対応しなければならない事態が発生した場合、全身が緊張します。 これは交感神経の作用によるものです。全身の筋肉が収縮して一種の防御姿勢をとりつつ次の行動に備えるわけですね。 全身の筋肉が収縮するから、声帯も閉まって声が出る、ということでしょうか。声が高くなるのも声帯が収縮してピンと張った結果ということならわかります。 ただ叫び声が次の行動への備えになる、とはあまり思えません。それに交感神経の作用で全身の筋肉を収縮させるなら、息を止める、という反応でも構わない気もします。 それでも叫び声というのであれば、やっぱり威嚇なり危険伝達なりプラスされるメリットがあるのでしょう。 考えてみると驚いた時の叫び声は人間だけでなく、犬やら猫やらも出します。進化の上で、息を止める群と叫ぶ群で叫ぶ群が生き残る確率が高かったということでしょう。 叫び声は想像よりも役立つシステムで、私たちは生物としての根源的なところから叫び声を出しているのかもしれません。 ところで昔学生さんに、女性はどうして「キャー」と叫ぶんですか、と訊かれたことがあります。 おそらくですが、叫び声が「キャー」になるのは半分は文化で、半分は身体的必然性と思われます。 身体的必然性の方を解説すると、驚くと力が入って首をすくめるようになりやすいのですが、そうすると舌の根元が相対的に上にあがり「き」や「い」を発音する形が出来上がります。 そこで声を出し始め、そのままでは声が出しにくいので首を上げ口をあけると、「キャー」とか「いやー」「やー」が出来上がります。 驚いた時に出しやすい発音と言えるでしょう。 で、文化的な面を考えると、なにしろはっきり発音として「キャー」というのは基本的には日本だけです。 欧米では「キャー」もあるでしょうが、「ヤー」とか「アー」です。つまり「キャー」は自然発生というよりは、日本人の叫び声を聞いてそう覚えるわけですね。 いつからそうなのかはもちろん記録に残らないことなのでわかりません。平安や縄文の頃の叫び声はどうだったのでしょうね。 なかなか叫び声が気になります。 |
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2016 07,18 06:20 |
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◆気になるボイスコラム◆ vol.036 2016.07.18号より
☆声にこだわりを持つ筆者がこだわってお届けします☆ リップロールが気になります。 リップロール、といってもピンとこない方が多いかも知れません。唇を合わせた状態で息を吹いて、唇をブルブル振動させるあれです。 子どもの頃に意味もなく面白がってやっていた記憶がありますが、これが発声練習にとても良い、という話があります。 本当なんでしょうか。 リップロールと発声は関係するんでしょうか。 さてリップロールについて調べてみると、驚くほどいろいろなボイス・トレーニングの本で推奨されています。どうやらかなりポピュラーな方法のようです。 実施方法には特に変わったところはありません。唇を軽く閉じて少し尖らせてブルブルと長く一定になるように震わせるだけです。 ただし大体の場合、ただ震わせるだけでなく、一緒に声も乗せています。 高い声から低い声までいろいろ出してもちゃんと唇が同じように震えるようにコントロールできるようにすることが求められます。 あとはちょっと唇を「お」のように少し縦に開いた形にして震わせるやり方もあるようです。これを発声前のウォームアップとしてやろうということです。 その効果にはどのようなものがあるかというと、大きく4種類ぐらいが言われているようです。 第一は唇や表情筋がリラックスするというもの、第二は音程が正しく取れるようになるというもの、 第三は裏声がきれいに出るようになるとか、裏声と地声の境が滑らかになるというもの、第四は喉を開く練習になるというもの。 第一の唇がリラックスするというのは、これは間違いないと思います。唇つまり口輪筋ですが、これが過緊張であるとブルブルはできません。 筋緊張をコントロールしてリラックスさせるのに分かりやすい良い方法です。表情筋までリラックスできるかどうかは人によるでしょう。 ただ口輪筋のリラックスは発声とはほぼ関係ないと思います。 口輪筋だけリラックスさせることができない人がとりあえず全身の力を抜くというあまり器用でない対応をとることで喉頭の力も抜けて発声が良くなる、ということならありそうです。 第二の音程が正しく取れるようになるというのは、ちょっとどうでしょう。正直リップロールそのものとあまり関係ないように思います。 音程は輪状甲状筋などで声帯の長さをコントロールすることで調整しますので、口輪筋とは全然別のコントロールです。 ただこれも上と同じ理由で喉頭の力を抜けば輪状甲状筋をコントロールしやすくはなります。 さらに言えばリップロールしながら音程の上げ下げをするというのは、同時に2つの器官を動かすのでダブルタスクとなります。 ダブルタスクは運動指令が難しくなりますので、これはむしろ脳トレとしていいという感じになります。 脳が活性化すれば色々な活動もうまくいきやすくなるので、随分遠回りですが、結果として効かないこともない、という感じでしょう。 第三の裏声がきれいに出るようになる、裏声と地声の境が滑らかになるというのは、さらに微妙ですが、 リップロールはある程度の強さの呼気が続かないとできないので、地声よりも強い呼気が必要な裏声発声には確かにやや良いかもしれません。 でも裏声は息の強さだけで出すわけではありませんし、リップロールだけでは強さの強化は足りません。やらないよりはいいというところでしょうか。 第四の喉を開く練習になるというのは、唇を「お」の形にするリップロールをした場合のことのようですが、 唇を「お」の形にすると下顎を少し下げるので口腔の空間が広くなるのは当然のことで、リップロールだろうとなかろうと同じことです。 上と同じように全身の力を抜くという対応をした場合以外では、リップロールと喉の開きは関係ないと思います。もっと別の喉を開く練習をした方が効率良いでしょう。 ということで、こうして理屈から考えてみると、リップロールは全く声に影響しないわけではありませんが、 大体の場合は偶然良い効果が出た、というような程度のことになるようです。従ってやっても声になんの変化もない人もいることでしょう。 ただ練習としては面白いですし、指導者や本人が理屈を分かった上で工夫して取り入れれば、効率がもう少し良くなるかもしれません。 リップロールの今後が気になります。 |
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2016 07,04 03:57 |
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◆気になるボイスコラム◆ vol.035 2016.07.04号より
☆声にこだわりを持つ筆者がこだわってお届けします☆ 歌と言葉の起源が気になります。 かねがね不思議に思っていたのですが、言葉は一体どこから来たのでしょう。そして歌は?人間はもともと声を出せるようにはできています。 ですから人類で一番最初に言葉を使い始めた人が、物の意味と声のパターンを結びつけることを発明したとしても、それはあることかもしれません。 でもそれなら子音やら母音やらはどこから来たのでしょう。多種多様な発音を組み合わせた単語など、誰も話していないところでとてもじゃないが思いつける気がしません。 さらにアクセントだってあるわけです。人間は放っておけば言葉を話すわけではないことはアヴェロンの野生児の例が既に証明しています。 最初はごく簡単な発声で、だんだん音が複雑に進化したにしても、やっぱり子音など思い浮かばない気がします。 チンパンジーに言語を教えた研究では、母音は言えても子音がどうしても言えなかったという話です。 そして歌はどうでしょう。なぜ歌という不思議なものがあるのでしょう。 言葉はコミュニケーションの道具であり、生活上の必要性から生まれたのでしょうが、歌はどんな必然性があるのでしょう。 農耕だと作業中の暇つぶしとか楽しみとかありそうですが、原始狩猟生活には必然性はなさそうです。 にも関わず現在狩猟生活をしている民族にも歌はあります。それどころか地球上に数千ある全ての自然存在の言語で歌がない体系はただのひとつもないとのことです。 いったい歌ってなんでしょう。気になります。 それについて東京大学の岡ノ谷一夫先生が面白い説を提唱していらっしゃいます。 岡ノ谷先生は動物行動学者で、ジュウシマツの鳴き声を研究しているうちに、鳴き声には地鳴きと歌があり、 歌はヒトの言語と同じように、いくつかの音の並びからできていること、その音素を一定の基準で組み合せて歌っていて、それを求愛行動に使っていることを発見したのだそうです。 現存の生物でいわゆる音声言語を持っているのは人間だけです。しかし歌を持っているのは、人間だけじゃありません。 小鳥やクジラなどが道具としての歌を後天的に学習して身につけています。聴覚に問題がある小鳥は歌を習得できないそうです。 つまり初めにあったのは歌の方である可能性が考えられます。小鳥という見本があるので、それを真似して歌うところからなら簡単に始められそうです。 やっぱり小鳥と同じように求愛に使っていたのかもしれません。その歌の一部を切り取って言葉とした、とするなら全く自然でありうることです。 岡ノ谷一夫「さえずり言語起源論ー新版 小鳥の歌からヒトの言葉へ」(岩波科学ライブラリー) は一読をお薦めします。 とすると歌が全ての言語にあるのも、どうして歌が人を惹きつけるのか、ということもうなずけます。 求愛に使っていたなら、歌手の皆さんがモテるのも、遥かな昔、言語のない時代から延々と続いてきた人の性向ということになりますね。 とすると良い声を出して上手に歌を歌えば、遺伝子レベルで多くの人を惹きつけることができるというわけです。 言葉よりも歌の方が我々には響く、ともいえるでしょう。実に発声の重要性が再認識される面白い話です。歌と言葉の関係がますます気になります。 |
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2016 06,20 08:45 |
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◆気になるボイスコラム◆ vol.034 2016.06.20号より
☆声にこだわりを持つ筆者がこだわってお届けします☆ アニメ声が気になります。 アニメ声っていう言葉、最近時々聞きますね。 アニメっぽい声、ということらしいのですが、昔はそんな言い方はなかったと思うので、私にはどういう声なのか実は良くわかりません。アニメっぽいってどんな声なのでしょう。 気になります。 さてそもそもアニメっぽいとは声にどんな特徴があることなんでしょうか。 高い声、それと大げさな抑揚、というイメージがなんとなく浮かびます。 聴覚心理的に高い音は低い音よりも認識されやすい傾向があります。サイレンも警報音も高い音ですよね。高いと他の音があっても際立って聴こえます。 大げさな抑揚は、画面的に感情表現の情報量が少なくなってしまうアニメで情報の総量を増やすための声優さんの工夫と思われます。 例えば驚くにもいちいち「ええっ」「あっ」とか声に出して言う感じですね。このあたりのことは、コラムその22(「声優と俳優の違い」)にも書きました。 ちなみにディズニーアニメの吹替版では、子供の声は実際の子供が当てているようですが、はっきりと声優ではなく子供とわかります。 なぜなら抑揚が全然違うからです。本当の子供は地声は高くても意外に抑揚はあまりありません。比べると声優さんはやっぱり抑揚を大きくとっています。 このようなことで、高い声と大きな抑揚でしゃべる方はアニメ的、つまりアニメ声を持つといっても良いと思われます。 ただ、どうもそれだけでもない気がします。 ちょっと表現するのが難しいのですが、声優さんの中には、高いだけでなく、ちょっと面白いというか、なんとも特徴的な響きの声を持っていらっしゃる方がいます。 最近バラエティ番組でよくお見かけする声優の金田朋子さんなどが分かりやすい例でしょう。 www.youtube.com/watch?v=oak7L8HLK4E ちょっと極端な例かもしれませんが、高いだけでない、印象的・特徴的な声ということは分かっていただけるのではないか思います。 これこそアニメ声といえるのかもしれません。 さて、どのような条件がそろうとこのような声質になるのでしょう。 少し調べてみたところでは、こちらのサイトに声優さんの喉頭を調べたデータがありました。 http://basil.is.konan-u.ac.jp/anime/ それによると声優さんは声道の形や喉頭の高さがかなり一般人と異なり、アニメ声を出すと喉頭位置が高くなる、とされています。 また、私もよく参考にさせていただいているこちらのサイトでは、声質に魅力を感じる声優さんは喉頭室や咽頭共鳴腔を使って声を共鳴(加工)させている、と書かれています。 http://aidavoice.exblog.jp/17163893/ 私も多分、喉頭腔や咽頭腔の形状なのではないか、と思うのですが、実はまだ良くわかりません。今後もう少し検討してみたいと思っています。 ところでアニメ声はモテ声として羨ましがられることもあるようですが、 一方で声を作っているといわれたり、目立ちたくないのに目立ってしまうなど、悩んでいる方も随分いらっしゃるようです。 もし喉頭腔や咽頭腔の形状が関連しているのなら、このあたりの筋を鍛えてコントロールできるようになれば声を変えられそうです。 そのためにも、もう少し検討してみたいと思います。 というわけで、アニメ声の仕組みが気になります。 |
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2016 06,06 03:47 |
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◆気になるボイスコラム◆ vol.033 2016.06.06バージョンアップ特別号より
☆声にこだわりを持つ筆者がこだわってお届けします☆ 発声フィジカル・エクセサイズとして2014年2月より試験公開を始めたこの発声エクセサイズですが、今から思えば未整理な部分・未解明な部分があちこちにありました。 当時は気づきませんでしたが、公開すると、分かりにくいという声をいくつかいただきました。 振り返ると確かにその通りで、抽象的な記述や、慣れないとできないような判断を求める箇所もかなりありました。これでは実施そのものが難しいのも当然と思います。 今回、これらの部分を思い切ってできるだけ整理し、バージョンアップ版として再編成、名称も一新しました。 これまでも部分的に公開してきましたが、改めてこの場でまとめてご紹介したいと思います。 1)名称の変更 一番分かりにくい、と言われたのが、「フィジカル」という言葉です。 日本語の文脈で使われる場合、だいたいは「肉体」とか「運動する身体」というような意味になるようですが、 特にちょっと物理的な、という意味を足したいときに「フィジカル」という言葉が使われる印象です。 その点でこのエクセサイズと合っていると思われたのですが、なんとなくの使われ方ですので、ピンと来ない方も多かったようです。 ということでこの機会に、フィジカルという言葉はなくしました。 代わりに、このエクセサイズでは運動を重視しているので、ストレートに「発声運動エクセサイズ」としました。 2)基本概念明確化 概念自体は特に変わりありません。基本にあるのは発声は運動で、筋肉が動かしやすくなるよう条件を整えれば声は良くなる、という考え方です。 筋肉を動かしやすくする柱としてリラクセーションと筋力増強をおくところも同じです。 ただ、従来法と決定的に違うところは「トレーニングにより筋繊維そのものが変わる、それで声も変わる」ということで、 根幹に関わることですから、ここを強調して分かりやすくなるようサイトの説明を書き直しました。 3)用語の変更 これまで発声練習時に、工夫を加えて発声しやすくすることを「本番(発声)の工夫」と記載していましたが、 本番とか工夫という言葉が今ひとつ分かりにくいので「アシスト発声」と改めました。 内容は同じですが、ただの発声ではなく発声しやすいよう補助を入れている、というイメージを表した感じにしました。 またこれまでは筋力増強に使う運動の種類を「無酸素運動」としていましたが、ブローイング練習などは厳密には無酸素運動と異なる可能性があることなどから、 「負荷運動」に改めました。筋力増強には特に負荷が重要ですので、その意味でもこちらの方が分かりやすくて良いと思います。 4)栄養との関係を明記 メルマガでも何回か触れましたが、筋力増強の効果を上げるには適切なタイミングでの栄養摂取が必要です。今回、概要の原則の項で、その点を追記しました。 5)トライアルの削除 これまではアセスメントでトレーニング部位を決定した後に、トライアルで幾つかある選択肢の中からお試しをやって最適なものを選ぶ、という流れになっていました。 しかし何から選ぶべきか、ダメなときにやり直せばいいのか変えるべきか、実際難しかったと思います。 ですのでトライアルは削除しました。 新バージョンでは、最も効果がありそうなプログラムが自動選択されるようになっています。うまくいかないときにその場でとるべき対処法も複数つけました。 そして1週間程度実施して効果がなけれ第二選択に移る、となっています。この選択順はこれまでのデータに依っています。 6)フローチャート方式の導入 エクセサイズ実施の具体的な流れがわからない、という面がかなりありました。 そこで上にも書いたようにプログラムが自動選択されるようにフローチャート方式を導入しました。 特に最初に過緊張性を判断し、そこから分かれていくようにしてあります。これは過緊張性でトレーニングのやり方が全く異なるためです。 またひな形として実施して欲しい回数なども具体的に明記しました。もちろんこの回数は目安であって絶対的なものではありません。 とにかく全体に難しい判断を要せず、流れに沿って行っていけば簡単にプログラムを選べて実施できるように構成しました。 7)ストローロングブローイング 最も筋力増強効果を見込める「ストローロングブローイング」を新設しました。 TABATAメソッドに近い要素を取り入れ、インターバルトレーニングを基本としています。実施の難しさが想定されるので、順位は第3選択にしてあります。 8)嗄声解消エクセサイズと過緊張発声解消エクセサイズの分離 これまで嗄声・過緊張発声としてまとめていましたが、今回両者を分離しました。 嗄声の中には過緊張性を伴うものと伴わないものがあり、全体には過緊張性のものが多いのでまとめていましたが、 色々なケースを想定して分かりやすくするには分離した方がいいだろうと考えたためです。 9)実施方式の変更 これまで実施方式は、自主練習法と指導法に分かれていましたが、これを統一し基本的に自主練習法のみとしました。 結局、積極的に行っていくなら自主トレーニングが中心になるはずですし、指導のみ行うにしても自主練習法を指導すれば済むと思われるからです。 そのため全て自分で行うことを前提とした実施法に改めました。 10)上級知識の再編 これまでのエクセサイズの中で、テクニック的に難しいもの、微妙な判断が必要なもの、文章化が難しいものはフローチャートから分離し、 「高度な実施法」として別にまとめました。あくまで自主練習として、どなたにでも実施できることが目標だからです。 上級知識については、いつか講習会など開くことができれば、とは思いますが、まずは標準技法の普及の方が先でしょう。 上級知識については、たぶん動画公開して、それに解説を入れるという手っ取り早いやり方をとることになるような気がします。 11)ダウンロード用テキスト版メルマガ 特にバージョンアップとは関係ありませんが、ついでに過去のメルマガをテキストファイルでダウンロードできるようにしました。とりあえずvol.015までです。 12)マスキング法/DAF 実は実施が容易でオススメなマスキング法ですが、装置が欠かせない点がイマイチです。 ホワイトノイズの入手はちょっと手間でしょうから、サウンドファイルをダウンロードできるようにしたかったのですが、サイズが大きすぎてアップロードできませんでした。 これはなんとかしたいと思います。 果たしていかがでしたしょうか。基本的には広く用いていただけることが目的ですので、技法を簡略化し、自己診断でできて、複雑な判断を要さない、という方向性です。 ただし、誤字脱字・表記ミス・バグなど、まだあちこちに修正点が残っている可能性があります。 暇をみてはチェックを行っていますが、見るたびに何がしか見つかり、エンドレスな作業になってしまっています。 不具合を見つけた方、もしよろしければメールでもツイッターでも構いませんので気軽にお知らせいただければ幸いです。確認次第、すぐ修正させていただきます。 なかなか取りかかれないでいますが、今後は実施方法とコツを解説した動画の公開ができればと思っています。 さらにフローチャートを手元で見ながらエクセサイズができるよう、スマホアプリも開発したいと考えています。 ただしまだまだ先の話ではあります。気長にお待ちください。今後ともよろしくお願い申し上げます。 |
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2016 05,16 06:10 |
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◆気になるボイスコラム◆ vol.032 2016.05.16号より
☆声にこだわりを持つ筆者がこだわってお届けします☆ 胎教というのがありますね。クラシックなどの音楽を聴くとお腹の赤ちゃんの情操教育にいいという巷説です。胎教の一つとして英語教材を使うなんていうのも耳にします。 さてこのあたりどうなんでしょうか。もちろん充分に外界の音が聴こえないだろうことは想像に難くありません。 でも骨伝導でママの声なら聴こえるのだ、というありそうな説を聴くと、はてと思う気持ちもあります。 本当のところはどうなのでしょう。胎教はどう聴こえているのでしょうか。気になります。 発生学的にいうと、胎生4週ごろから耳の形成は始まりますが、音が聴こえるぐらいに耳ができ上がるのは胎生20週くらいのようです。 胎生28週を過ぎる頃には、ママの声に反応して動いたりすることがある、といわれています。 さて、胎児の聴こえを科学的に検証した実験は幾つかなされています。 たとえば帝京大学の名誉教授で耳鼻科医の田中美郷先生は、胃を子宮に見立て羊水の代わりに水を満たし、胃にマイクを仕込んで聴こえる外界の音を分析しています。 結果、聴こえるは聴こえるものの、音の大きさはかなり減衰し、外界の音を100%とすると体内の音は30%であったとのこと。 つまりかなり大音量でなければ聴こえないということです。しかも不明瞭で、口を手で塞いで喋ったようなこもった声に聴こえたそうです。 胎児は羊水に浮かんでいるため、水中で外界の音を聞くことになることが作用していると考えられます。 では骨伝導でママの声なら聴こえる、というのはどうでしょう。これもまた別の実験結果があります。 それによると、高音域と低音域の音が極端に減衰して聴こえず、そのためにかなり歪んで聴こえたとのこと。却って外界の音の方が歪んでいなくて聴きやすかったそうです。 実は骨伝導では音の減衰や反響というのがあり、いろんな経路で音が伝わるので音が重複したり一部が伝わらなかったりするのです。 骨伝導イヤホンというのがありますが、あれは耳のすぐ横や後ろに端子を当てますね。離れたところに当てると減衰してよく聴こえなくなってしまうためです。 ママの声帯から子宮はかなり離れていますから、ちょっと綺麗に聴くのは難しそうです。 さらに体内ではいろんな音が鳴っています。心音、血流音、呼吸音、消化器官の活動音など。お腹に耳を当ててみるとわかるでしょう。 これらは基本低音域の音です。この上に聴こえる音をかぶせるなら高音域の音ですが、高音域の音は減衰してしまって届きません。結局、少なくとも外界から音楽や、まして英語など聴かせてもほとんど耳には届かないと思われます。 といっても胎教が全く無意味なのではなく、ママが好きな音楽を聴いて落ち着き、リラックスした気分になることが胎児の環境としていいのは間違いありません。 ですから好きでもないクラシック曲をがまんして聴くことにはなんの意味もありません。要はママが楽しいかどうかなのでしょう。 ところで我が家でもその折には、夏川りみさんのCDを買ってきたりしたものですが、果たして効果があったのか今もって全くわかりません。 ちなみに誕生前の記憶がある子供がいる、と聞いたので、子供達が小さい頃に訊いてみました。 ところが期待はずれも甚だしく、子供たちはポカンとして、全くもって要領を得ない答えしか返ってきませんでした。まあこんなものかもしれないと思ったものでした。 |
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2016 05,02 07:12 |
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◆気になるボイスコラム◆ vol.031 2016.05.02号より
☆声にこだわりを持つ筆者がこだわってお届けします☆ (前編からの続き)心を入れ替えて基礎から声の勉強を始めた私ですが、いかんせん座学の悲しさ。発声指導の具体的な運び方が今ひとつわかりませんでした。 少しだけ資料VTRは見ましたが、全然足りませんでした。今ならyoutubeでいくらでも動画を見つけることができます。 しかし当時はyoutubeもニコニコ動画もありませんでした。近県に見学に行けるような病院もつてもありませんでした。 こうなったら、ボイス・トレーニング教室に潜り込むしかない、と私は思いました。 むしろそっちの方が営業としてやっているぶん、わかりやすくて学ぶべき点が多いかもしれない、そんな期待もありました。 さて、探してみるとこれまた色々とありました。プロ歌手向けから、カラオケ上達、アナウンス、朗読、演劇向けなどなど。 実に多様なニーズがあるものだ…と妙に感心しました。 その中にビジネスマン向けというのがありました。良い声を出して営業やプレゼンなどビジネスに生かそうというコースです。 これがいいのではないか、と早速申し込みました。 さて行ってみるとそこはスタジオを兼ねたいわゆる普通のボーカルスクールで、手広くやっているひとつとしてビジネスマン向けのコースも設けている、という感じでした。 コースの生徒は大学生やフレッシュマンの若者から中年男性まで様々。 理由も、上司から声が小さいと言われてという人や、人と喋るのが苦手でという人、就活に有利なようにという人までこれまた様々でした。 先生はいかにも業界の人、という感じのお洒落でダンディな40代の男性、快活でよく通る声、抑揚や身振りが大きく、ソフトな口調、そして笑顔が爽やかでした。 まず初めにストレッチ、そして腹式呼吸練習。しかしここでつまづく人がたくさんいるようでした。 そして発声練習ですが、先生はここでイメージの持ちようということを繰り返し繰り返し説明し、それは発声練習をさせている間も続きました。あとは基本その反復でした。 レッスンは他の生徒とペアを組まされて行うのですが、私はもともと知っていましたので腹式呼吸も発声法も、初めから難なくできてしまいました。 ところがペアの人が腹式呼吸からしてちっともできないのです。私はつい習慣で「もっと力を抜いて、ここをへこませて」などと言ってしまいました。 先生は怪訝な顔をして、「あなたは何かやっている人ですか」。私はしまったと思いましたが時すでに遅し。 恐縮して「言語聴覚士でして・・・声の勉強をもっとしたくて」というと、先生は「そうでしたか。私も資格を取ろうかと思ったことがありますよ」と、笑顔で言って下さってホッとしたりしました。 そんなこんなでこの体験は私には色々な意味で勉強になりました。 第一に声で悩んでいる方が想像以上に多いこと、第二に腹式呼吸でつまづいて先に進めない方がたくさんいること、 第三にイメージによるトレーニングは有効だがうまくできない人も多いこと、 さらに指導者の誘導はセリフだけが重要なのではなく、声や雰囲気やリズムそして勢いなどが総合されて効果を出すこと、などです。 この後、私は音大で教えている先生にも教わったりして、様子を掴んでいくことができました。 しかし、実際に目の前にいる患者さんたちの声を変えることができるようになるには、まだひとつ大きなハードルがあったのです。でもそれはまたの機会に。 |
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