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2016 01,18 04:11 |
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◆発声のワンポイント解説◆ vol.024 2015.01.18号より
☆発声にまつわるわかりにくい用語・概念や発声エクセサイズのコツなど、 テーマを毎号ひとつ選んでワンポイント解説します☆ DAF(Delayed Auditory Feedback)/遅延聴覚フィードバックとは音響機器を用いて自分の声を一定時間遅らせて再び自分の耳に聞かせることを言います。 吃音者がこれを用いると吃音の軽減がみられることから、吃音の治療法として使われてきました。 ところが非吃音者がDAFを使用すると、発話速度が低下する、流暢性が損なわれる、声の高さが高くなるといった現象と共に、声の大きさが大きくなるという効果がみられます。 このDAF効果を利用すると声量を上げるトレーニングを無理なく行えます。 声が大きくなるということはそれだけ呼気筋または喉頭筋に力を入れ収縮させていることになります。 普段よりも余計に力を入れることにより筋力が鍛えられることになります。意図せずに筋力トレーニングを行なっているような効果を得られます。 DAFを実施するにはスマートフォンのアプリを利用するのが最も手っ取り早いでしょう。 現在「DAF assistant」というDAFができるアプリがリリースされています。iPhone・Androidいずれのバージョンもあります。 ヘッドセットを用意し、潜時は130ms程度、音量は大きめにして試してみましょう。文章を音読してもらうなどして声量が上がっていれば適応があります。 これを使っての音読や会話を一回10分程度、週3〜4回を3週間以上続けると効果が定着してきます。 DAFについて興味のある方はリンク先の文献をご参照ください。 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjlp1960/37/2/37_2_190/_pdf PR |
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2016 01,04 06:13 |
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【解説第23回】 ◆発声のワンポイント解説◆ vol.023 2015.01.04号より
☆発声にまつわるわかりにくい用語・概念や発声エクセサイズのコツなど、 テーマを毎号ひとつ選んでワンポイント解説します☆ 胸郭とは、胸椎・肋骨・胸骨で構成される骨格、またはこの骨格で構成される体幹の部分のことです。 ここにある呼気筋・吸気筋の可動域と柔軟性を高め、呼気筋の筋力を向上させることにより、呼気量・呼気圧を増加させることができれば、声量アップや過緊張発声抑制に繋げることができます。 さて、効果的に呼吸筋の可動域と柔軟性を高め、呼気筋の筋力向上を図るために、充分なウォームアップを入れる必要があります。 そのウォームアップの第一選択として胸郭のスタティックストレッチが挙げられます。 スタティックストレッチ(静的ストレッチ)は、無理のない程度に筋肉を伸ばし、その状態を15~60秒程度保持する方法です。 ストレッチを持続して行うことにより筋紡錘をリセットし、筋伸張反射による運動開始時の筋収縮を減少させて筋をリラックスさせる効果があります。 ここで第一選択としてストレッチを行う部位(筋)は、呼吸主動筋である外・内肋間筋ですが、最大限の効果を狙うためにストレッチに適した部位をさらに細分化して探します。 分けられる部位は大きく分けて胸郭上部前面、胸郭下部前面、胸郭下部側面です。 安静呼吸時および発声時にこの3箇所を触診し、最もよく動いている部位を重点ポイントとして設定します。これはそれぞれの個人によって異なります。 胸郭上部前面について他者をストレッチする場合は、座位であれば背後から、臥位であれば頭部から胃の方向に押すようにストレッチしましょう。 自力でやる場合も方向は同じです。 胸郭下部前面について他者をストレッチする場合は、両手を動く部位にあて、絞るように胃の方向にストレッチしましょう。自力でやる場合も同じです。 胸郭下部側面について他者をストレッチする場合は、第7~10肋骨の部位ですので、横方向から反対側に押して筋のストレッチを図ります。 自力でやる場合も方向は同じです。 それぞれ20秒程度を目安としましょう。 このようにまずスタティックストレッチで筋緊張を軽減させつつ可動域を拡大して発声を試してみます。 これで効果が今ひとつのようであれば続いてダイナミックストレッチで可動域を拡大しつつ筋力増加を図る、という流れになります。 |
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2015 12,21 05:53 |
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◆発声のワンポイント解説◆ vol.022 2015.12.21号より
☆発声にまつわるわかりにくい用語・概念や発声エクセサイズのコツなど、 テーマを毎号ひとつ選んでワンポイント解説します☆ 騒がしい場所でしゃべると反射的に声が大きくなってしまいます。 この現象のことをLombard効果といいますが、この現象を利用して声を大きくしようとする発声練習方法があり、これをマスキング法といいます。 マスキング法の一般的な実施方法は,まず40dB程度のホワイトノイズをヘッドホンで両耳に聞かせ、聞こえることを確認し文章等の音読をさせます。 次に90dB程度のノイズをon-offを繰り返しながら聞かせ、声の大きさの変化を確認します。これで声の大きさに増加が認められれば適応ありということで、同じ手順で練習を繰り返します。 実施に際して特に具体的指示や発声の注意点はないため、難しい指示には従いにくい高齢者や、そもそも練習そのものが難しい認知症の方でも実施できる可能性がある方法です。 実施にはノイズの聴取確認と文章音読を要しますが、これらの実施困難が予測される場合には、まず95dBのホワイトノイズをヘッドホンで両耳に聴かせ会話をします。 そこで拒否がなく声の大きさが変化していたなら、ノイズ音量を徐々に減衰させましょう。 95dB時と同じ声の大きさを維持可能なノイズ音量を探し,そこでノイズ音量を固定し、その状態で自由会話を約15分間行い適時ノイズのon-off を実施しましょう。 週2〜3回、1〜2ヶ月ほどでヘッドホンをつかわなくとも普段から大きな声を出せるようになります。 |
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2015 12,07 06:20 |
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◆発声のワンポイント解説◆ vol.021 2015.12.07号より
☆発声にまつわるわかりにくい用語・概念や発声エクセサイズのコツなど、 テーマを毎号ひとつ選んでワンポイント解説します☆ 舌と声は一見関連なさそうにみえますが、実は舌の状態は声にかなり影響します。 そもそも舌を動かす神経と喉頭周辺の筋肉を動かす神経は解剖学的に非常に密接な関係にあり、舌が過緊張な状態にあると喉頭周辺の筋肉も過緊張になりやすい傾向にあります。 喉頭周辺の筋肉が過緊張になると、喉頭の上下運動などが妨げられますので、声の高さ調節などがやりにくくなることが想定されます。 また喉頭周辺の筋肉が過緊張であると、つられて内喉頭筋にまで過緊張が及ぶことがありえます。そうなるとかすれ声の気息声や喉詰め声の努力声が起こることになります。 さらに舌を動かす筋肉には内舌筋と外舌筋という2つの筋肉があります。 内舌筋は舌の中にあり舌を形作っていますが、外舌筋は舌の根元から下あごにかけて伸びています。つまり外舌筋は喉頭のすぐ上にあるといえるでしょう。 この外舌筋が過緊張であった場合に舌全体の位置が下降してしまうことがあります。下降の方向によって影響は異なりますが、もっともありそうなのは声道を狭窄させることです。 声道が狭窄すると声はこもり、声量も小さくなってしまいます。 また舌全体の下降が喉頭の上下運動を妨げることもあります。その場合はやはり声の高さ調節がやりにくくなります。 さらに舌全体の下降が顕著な場合には喉頭全体を圧迫することもあります。 そうなると発声そのものがやりにくくなり、声量低下や高さ調節困難・努力声など過緊張発声全般の特徴がみられるようになるでしょう。 このように舌の状態は声にかなり影響を及ぼします。そのため声のトレーニングに際しては舌の形や舌の動きのチェックは欠かせない、といえるでしょう。 |
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2015 11,16 04:59 |
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◆発声のワンポイント解説◆ vol.020 2015.11.16号より
☆発声にまつわるわかりにくい用語・概念や発声エクセサイズのコツなど、 テーマを毎号ひとつ選んでワンポイント解説します☆ ウォームアップとは元々は体温を高めることを意味する用語です。筋肉は冷えた状態では本来持っている力を充分発揮できません。 ウォームアップの目的は筋肉を温め、血流量を増やす事です。 適切なウォームアップを行えば、次に続く本番の練習を質の高いものにし、疲労回復を助け、外傷や障害を予防することができます。 ウォームアップは体温を高め筋肉を温めることがひとつの目的ですので、お湯やホットクリームなどを使って身体を直接温めたり、静的ストレッチなどを行ってもウォームアップになります。 これらはパッシブ(消極的)ウォームアップと呼ばれています。 これに対し、アクティブ(積極的)なウォームアップというものもあります。これは軽い運動のことです。 これにより筋肉内の温度が上昇し、パフォーマンスの効率も良くなることが証明されています。 パッシブとアクティブではアクティブなウォームアップの方が効果がありますが、併用することで効果をより高められます。 ストレッチは筋肉を温めるだけでなく、筋肉を伸ばしてリラックスさせ、外傷などを予防する効果があります。 しかし静的ストレッチでは伸ばされた筋肉がリラックスしすぎてしまい、筋力低下を招くという研究結果があります。 そこで現在は、動的ストレッチをウォームアップに取り入れたダイナミックストレッチが推奨されています。 これは軽い運動をしながらストレートをするもので、アクティブウォームアップのひとつに数えられます。 ウォームアップの効果の持続時間は、一般的にはウォームアップ終了後40~50分といわれています。 ただし保温に努めればかなり延長できるともいわれています。効果を高めるには室温にも配慮が必要です。 この他、ウォームアップには、精神的準備や有酸素エネルギーの増加、筋肉痛の軽減などの効果もあります。 |
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2015 11,02 07:28 |
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◆発声のワンポイント解説◆ vol.019 2015.11.02号より
☆発声にまつわるわかりにくい用語・概念や発声エクセサイズのコツなど、 テーマを毎号ひとつ選んでワンポイント解説します☆ かすれ声の気息声を改善させるためによく使われる方法のひとつに高い声で発声練習する、というものがあります。 また、ハスキーボイスの人で、地声はかすれてハスキーなのに、高い音はクリアな声が出ていることがしばしばあります。 高い声が出る仕組みは、ひとつには輪状甲状筋が収縮することによって声帯が引っ張られ前後径が伸びるため、もうひとつは外側輪状被裂筋が収縮することによって声帯が薄くなるためです。 輪ゴムを張って弾くと音がでますが、伸ばしてピンと張れば張るほど音が高くなります。輪状甲状筋の収縮は輪ゴムをピンと張っているのと同じ仕組みに当たります。 また、使う輪ゴムが太いものと細いものでは細いほうが高い音が出ます。外側輪状被裂筋の収縮は輪ゴムを細くしていると思っていただけると良いと思います。 さて、気息声は声門閉鎖不全により生じます。 左右の声帯の隙間が広すぎる場合には効果はありませんが、隙間が少しだけであれば輪状甲状筋を収縮させ声帯をピンと張ることで隙間を埋めることができる可能性がでてきます。 なぜなら通常の声を出す際の声帯は通常は緩んだゴムのようになっていますので、隙間が生じやすいのですが、ピンと張れば隙間が埋まりやすくなるからです。 従って気息声を改善させるためには、輪状甲状筋の収縮がひとつのポイントになります。 しかしこれだけでは充分声帯を伸ばせない場合ももちろんあります。輪状甲状筋の収縮には限りがあるからです。 その場合は喉頭を全体に上に挙げるという方法があります。喉仏が上に挙げる感じですね。 声帯の根元が固定されていて先端が上がれば声帯は全体に伸ばされることになります。顎を上げて上を向いても同じような効果があります。 高音発声が気息声やハスキーボイスを改善させるのはこにような仕組みによります。 |
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2015 10,19 02:49 |
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◆発声のワンポイント解説◆ vol.018 2015.10.19号より
☆発声にまつわるわかりにくい用語・概念や発声エクセサイズのコツなど、 テーマを毎号ひとつ選んでワンポイント解説します☆ 裏声とファルセット、これは同じものでしょうか、違うものでしょうか。 実は同じでもあり違うものでもあります。 曖昧ですね。これは定義が定まっていないためです。よく使われる割に人によって意味が違っています。 地声から順々に声を高くしていくと急に声がオクターブ高くなって息漏れの多い細い声になるポイントがあります。 ここから先の声が裏声と呼ばれるもので、これはおそらくこの定義で問題ないと思われます。急に声がオクターブ高くなるので「声が裏返る」と言ったりします。 専門用語では「翻転」といいます。 この裏声は仮声とも言われることがあるので、声帯のすぐ上にある仮声帯で出していると思っている人がいるようですが、これははっきり間違っています。 健康な人は仮声帯で声を出すことはできません。では裏声はどうやって出しているのか。 喉頭ファイバーで見ればすぐに分かります。地声は左右の声帯を閉じて息で振動させて出しています。唇を震わせて出すリップロールに似ています。 それに対し裏声では左右の声帯は閉じず全く接触しません。そこに強い息を通して粘膜を振動させて音を出しています。口笛的な感じでしょうか。両者は全く別の発声法です。 裏声を男性特有のものと思っている人もいますが、上に書いたように声帯を閉じず粘膜を振動させて出す発声法ですので、男性にしかできないということは全くありません。 女性でも普通に出すことができます。 一方ファルセットは、裏声と同じ意味で使う人もいますが、裏声はファルセットと解説第16回で述べたヘッドボイスに分かれるという人、ミックスボイス・ヘッドボイス・ファルセットの三段階に分かれるという人、 さらには、高いほうをヘッドボイス、低いほうをファルセットと呼ぶ人、反対に高いほうをファルセット、低いほうをヘッドボイスと呼ぶ人など、もう全くバラバラと言っていい状況です。 裏声とファルセットは同じとも違うとも言いようがないというのが分かっていただけたでしょうか。 ただし日本語でいう「裏声」は普通の話し声についても使うのに対し、ファルセットは歌唱用語なので歌うときにのみ使います。ここだけははっきり違うといえるところです。 |
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2015 10,05 06:22 |
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◆発声のワンポイント解説◆ vol.017 2015.10.05号より
☆発声にまつわるわかりにくい用語・概念や発声エクセサイズのコツなど、 テーマを毎号ひとつ選んでワンポイント解説します☆ 発声練習の際、手始めに使われる音というとたいていの場合は母音です。どのボイストレーニングの本をみてもおよそ共通していますし、実際やりやすいものです。 発声練習でまず母音を使うのは、母音が発音の基本だから、という説明がよくされています。それは間違いありませんが、もう少し機能的な理由もあります。 母音とは、ことばを発音するときの音声の種類のひとつで、声帯のふるえを伴う有声音であり、かつある程度の時間、声を保持する持続音のことです。 そして舌・歯・唇または声門で息の通り道を、完全にも部分的にも瞬間的にも閉鎖せず、また息の通り道を狭くすることによる息の摩擦音を伴うこともない、というもののことです。 一方子音とは、舌・歯・唇または声門で息の通り道を、完全にまたは部分的に、かつ瞬間的に閉鎖して出す発音です。 従って子音の方が多くの部位を動かして複雑な動作をしており、母音の方は比較すると動かす部位も範囲も少なく動作も単純です。 動かす部位が多く複雑だとそれだけ脳の活動も複雑になりますので、子音の発声をしようとすると、ついつられて喉頭あたりの筋肉も一緒に活動させてしまうという脳の指令の混乱が起こります。 このような理由で子音の発声時には喉頭に余分な力が入ってしまうという現象が起こりやすくなります。 一方、母音であれば動きが単純なのでそのような混乱が起こりにくく喉頭に余分な力が入ることも少ない、というわけです。 ですので出だしの発声練習には母音が使いやすいのです。 さらに、日本語の母音というと「あ」「い」「う」「え」「お」ですが、実は母音の中でも発声が容易なものとそうでないものがあります。 母音のうち、舌の盛り上がりの位置が舌の前であるものを前舌母音、後であるものを後舌母音、その中間であるものを中舌母音と呼びます。 また母音発音時の舌の位置を高低で4つに分類し、最も高いものから狭母音・半狭母音・半広母音・広母音と呼びます。 舌のどの部分を盛り上げるにしても、もしくは口を開けるにしても、大きな範囲を動かしその位置を保持するのにはそれだけ力を使います。 力を使うとつられて喉頭に力が入りやすくなる理屈は子音と同じです。一番余分な力が入らないのはどちらにも寄らない中間位です。 というわけで比較的舌や顎を動かさず中間的な位置の母音というと半広母音の「え」もしくは「お」になります。 これが最も余分な力が入りにくい母音です。まず発声練習を始めるなら「え」または「お」からでしょう。 続けて「あ」「う」「い」ということになりますが、このあたりは人によって個人差がありそうです。 |
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2015 09,21 05:51 |
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◆発声のワンポイント解説◆ vol.016 2015.09.21号より
☆発声にまつわるわかりにくい用語・概念や発声エクセサイズのコツなど、 テーマを毎号ひとつ選んでワンポイント解説します☆ 発声関係の文献を調べているとよくチェストボイスとかヘッドボイスという言葉を目にしますね。 チェストボイス(胸声)とは、音色的に倍音が豊富で、太いといわれることが多いような発声です。したがって低い音域のほうが充実した声となります。 体感的に「胸に響く」様に感じられることからそう呼ばれます。発声機構としては声帯全体が振動します。声帯伸展はあまり起こらないため高音発声にはあまり適しません。 一方、ヘッドボイス(頭声)とは、起声がしっかりしていて、低次倍音が多く明瞭で息漏れが少なく大音量が出せる、などの特徴を持つ発声です。 体感的に「胸に響く」様に感じられることからそう呼ばれます。ファルセットと似ていますが、ファルセットは息漏れが多く、起声が曖昧なところが異なります。 さらにヘッドボイスとファルセットは仕組みも全く違っていて、ヘッドボイスは声帯の1/4程度が閉鎖し振動して音が鳴るのに対し、ファルセットは声帯は閉鎖せず開いたままで振動だけして音が鳴ります。 なお、頭に響く声が全て頭声というわけではありませんので念のため。通常の発声と何が違うのかというと、チェストボイスもヘッドボイスも通常の発声よりも倍音が多い発声法になっています。 音響的に倍音が多いことで豊かで深く響く声に聴こえます。体感的に頭とか胸に響くように感じられるのはそのためです。 倍音が多いのは声帯が弛緩して厚くなっているためです。他に被裂軟骨が前方へ動き声帯を短くして声帯を厚くしている場合もあるようです。豊かで深く響く声にするためには声帯のリラックスが不可欠であることがよくわかります。 |
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2015 09,07 11:39 |
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◆発声のワンポイント解説◆ vol.015 2015.09.07号より
☆発声にまつわるわかりにくい用語・概念や発声エクセサイズのコツなど、 テーマを毎号ひとつ選んでワンポイント解説します☆ 大きな声・綺麗な声・通りの良い声などを出すために絶対的に不可欠なのは声帯に余分な力が入らないことです。 つまり声帯やその周囲の筋肉が必要以上に緊張していないことが求められるのですが、筋肉が緊張するとはどういうことでしょう。 そもそも筋肉(この場合は骨格筋)は何も活動していないときでも意図せずに絶えずわずかに緊張をしています。 この場合の緊張というのは持続的に弱く筋肉が収縮している状態のことです。なぜ静止時に筋が緊張しているのか。それは姿勢などの状態の保持や体温調節のためです。 もし筋肉に全く力が入っていなければ、座っていること、立っていること、姿勢を保つことなどが全てできなくなってしまいます。 また筋肉が緊張することでエネルギーを消費し熱を発生させる源にもなっています。そして静止時に筋が緊張していることで運動の準備状態を保つことができます。 さて一方、精神的に緊張すると全身の筋肉が硬くなります。硬くなることによって自分自身の身体を外的な危険から守ったり、攻撃しやすくしています。 これは人が大昔から引き継いできている防衛本能です。このような現象は自律神経のひとつ交感神経の作用によって起こるものです。 緊張して呼吸や動悸が早くなるのも同じ自律神経によるもので、呼吸を多くして酸素をたくさん取り込み、動悸を早くして脳に酸素を多量に運び、脳がフル回転できるようにしているのです。 このように筋肉は普段から一定の緊張状態を保っており、必要な時に目的の筋肉を動かしやすくするために備えています。そして精神的な緊張をともなうと筋肉の緊張は全体に高まります。 適度な緊張感は準備の整ったアイドリング状態を作り出し、その人の力を充分に引き出す助けとなる必要なシステムです。 しかし緊張しすぎると逆に本来の力を発揮できなくなってしまいます。ここのバランスは非常に微妙なラインです。 思い通りの声を出すために、声帯やその周囲の筋肉がある程度緊張していながら、必要以上には緊張していない状態を練習によって作り出すことが必要です。 |
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2015 08,17 07:50 |
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◆発声のワンポイント解説◆ vol.014 2015.08.17号より
☆発声にまつわるわかりにくい用語・概念や発声エクセサイズのコツなど、 テーマを毎号ひとつ選んでワンポイント解説します☆ 声の出し始めの瞬間を「起声」といいます。「声立て」「唄口」という言い方もあり、英語では「アタック」と言います。この起声の状態によってその後に続く発声がどんな声になるか変わってきてしまいます。 逆に言えば起声さえうまく出せればその後の発声は比較的容易にコントロールできます。そのため起声は発声トレーニングではとても重要です。 さて起声には、軟起声・硬起声・気息性起声(HA起声)などいくつかの種類があります。 軟起声(ソフト・アタック)は、文字通り軟らかい感じの起声です。優しいソフトな声として聴こえます。 この時は声帯がゆっくり中央に寄り部分的に声帯が合わさって振動を始め、次第に全体へと振動が大きくなることで生じます。喉に負担をかけない発声法なので最も推奨される起声といえます。 硬起声(ハード・アタック)は、軟起声と反対に力を入れて爆発するような感じで出す起声です。硬く厳しい印象の声として聴こえます。 両声帯がぶつかるように合わさって声帯にいきなり大きな振動が起こった状態です。息止めをしてから、喉に力を入れて声を出すとこの起声になりやすくなります。 過緊張発声の方はほとんどがこの起声になっており、両声帯をぶつけるようにして声を出していますので、声帯に負担がかかり、より声が悪くなったり声帯結節ができたりしやすい、あまり推奨されない発声法です。 気息性起声/HA起声(ブレスド・アタック)は、息まじりの感じの起声です。合わさって振動している声帯が部分的で、声帯全体は合わさらず開いている時に生じます。 硬起声をやめて喉に負担をかけない発声法にしたいのに軟起声がうまくできない方はこの方法を用いると比較的容易に目的を達成できます。 この他に、圧迫起声という喉全体を締めて行う起声もあります。「うなり」ともいいますが、演歌や浪曲などで使われる起声です。 起声は発声トレーニングにとってとても重要な要素ですので、しっかり理解し、自分で自由にコントロールようになると良いでしょう。 |
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2015 08,03 07:30 |
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◆発声のワンポイント解説◆ vol.013 2015.08.03号より
☆発声にまつわるわかりにくい用語・概念や発声エクセサイズのコツなど、 テーマを毎号ひとつ選んでワンポイント解説します☆ 発声に呼吸が大切なのは言うまでもありませんが、その呼吸法を解説した本のほぼ全てに「息は鼻から吸って口から吐くように」と書いてあります。これはどうしてなんでしょうか。 別に鼻からでないとたくさん吸えないというわけではありません。声を出すには声帯が適度に湿潤している必要があるのですが、鼻から吸われた息は鼻腔内で加湿されて気道に入ります。鼻から吸われた息が気道を通っても加湿されているので声帯粘膜は乾燥せずに済みます。 これが口から吸うと口腔内ではあまり加湿されませんので、乾燥した息が気道を通ることになります。そうなると声帯粘膜は乾燥しやすくなり声も出しにくくなってしまいます。そのために鼻から吸いましょうと言われているものと思われます。 さて後は口から吐くという方ですが、これは発声のための呼吸ですからできるだけ本番に近い状況で行った方が良いわけです。そういうことで口から吐きましょうということと思います。 他にヨガとか気功とか、最近よく見かけるピラティスなどでも鼻から吸って口から吐く呼吸法が指導されるようです。喉が乾燥してしまうと充分リラックスできないでしょうから鼻から吸うことが推奨されるのかもしれません。一方、口から吐くのが推奨されるのは正直よくわかりません。呼吸は意図的に繰り返すとリラクセーションを促す効果がありますから、そんな理由で呼吸を意識させているのかもしれません。 |
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2015 07,20 03:36 |
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◆発声のワンポイント解説◆ vol.012 2015.07.20号より
☆発声にまつわるわかりにくい用語・概念や発声エクセサイズのコツなど、 テーマを毎号ひとつ選んでワンポイント解説します☆ エッジボイスという言葉をご存知でしょうか。世界基準では「ボーカルフライ」といいますが、日本では「エッジボイス」という呼び方の方が広まっているようです。 エッジボイスとは発声練習法のひとつで、ウォームアップとしてこの声を出すことにより、本練習で声が出しやすくなる、ということでよく用いられている方法です。 エッジボイスの出し方は、まずしっかりした声量で声を出しながら音を低くしていきます。これ以上下げられないという高さまで行くと、声がとぎれとぎれのガラガラ声になります。これがエッジボイスです。このエッジボイスを大きな声でしっかり出してみることで、発声器官がリラックスしたり、声帯閉鎖の感覚を掴むことができるといわれています。ただしこのエッジボイスには明確な定義はありません。恐らく指導者によって出し方に少しずつ違いがあるものと思われます。 さて、科学的に言うとこのエッジボイスは租ぞう声発声をしていることになります。人によっては努力声も混じっているかもしれません。声帯の筋肉および声帯粘膜を緊張させることによって出る声です。なぜこれを出すことで声が出しやすくなるかというと、運動学でいう「最大緊張後の最大弛緩」という理論がその答えになります。筋肉は最大限に力を入れるとその直後に最も力が抜けてリラックスした状態になる、という原則です。敢えて緊張度の高い声をガツンと出すことにより、その後に声帯をリラックスした状態に持っていき、しかる後に発声練習をしよう、ということです。 確実に実施できれば合理的な方法です。一方中途半端に行うと効果がないばかりか、声帯を痛めかねない方法でもあります。確実に理論を理解した上で実行したい方法です。 |
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2015 07,06 15:55 |
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◆発声のワンポイント解説◆ vol.011 2015.07.06号より
☆発声にまつわるわかりにくい用語・概念や発声エクセサイズのコツなど、 テーマを毎号ひとつ選んでワンポイント解説します☆ 筋力トレーニングを行うための運動には2種類あります。ひとつは等尺性運動、もうひとつは等張性運動です。等尺性運動はアイソメトリック運動、等張性運動はアイソトニック運動ともいいます。 ものを動かそうと引っ張っている時のように力を込めながら関節を動かす運動を等張性運動・アイソメトリック運動といいます。関節が動くのは筋が長さを変えるからで、言い換えれば等張性運動とは筋が長さを変えながら行う運動のことです。抵抗よりも筋の収縮力が大きいと筋が短くなりながら力を出しますので、これをコンセントリック収縮・短縮性筋収縮、抵抗よりも筋の力が小さいと筋が伸ばされながら力を出すことになりますので、これををエキセントリック収縮・伸張性筋収縮と呼びます。 一方、関節を動かさないで行う運動を、等尺性運動・アイソメトリック運動と呼びます。関節を動かさないので筋の長さは変わりませんが、筋は収縮して力を出しています。動いていないので運動のようにみえないかもしれませんが、筋が収縮していますのでこれも立派な運動のひとつです。動かないものを押したり引いたりするとこの運動になります。もしくはじっとしたまま筋肉にぐっと力を入れてもこの運動になります。等張性運動は動的運動、等尺性運動は静的運動とも呼ばれます。 筋力トレーニングというと抵抗を加えながら行う等張性運動のことばかり想像してしまいがちですが、発声に関わる筋肉のトレーニングをしようとしても等張性運動を実施しにくいことが結構あります。そんな時はこの等尺性運動を行います。等尺性運動だからトレーニング効果があまり期待できないということは決してありません。外部から筋収縮に見合う最大抵抗を加えて等尺運動させると最大の筋収縮を出しやすいことが知られています。可能なら等張運動と組み合わせるとさらに効果的です。知っておくと良いでしょう。 |
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2015 06,15 15:23 |
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◆発声のワンポイント解説◆ vol.010 2015.06.15号より
☆発声にまつわるわかりにくい用語・概念や発声エクセサイズのコツなど、 テーマを毎号ひとつ選んでワンポイント解説します☆ 声楽やボーカル指導を受けるとよく喉を開いてとか喉をあけろとか言われます。これはどこをどうしろと言うことでしょうか。 あける場所としては大きく分けて二つあって、ひとつは口腔〜鼻咽腔にかけての空間、口の中とその奥の喉ヒコのあたりの空間です。ここの空間を広げると声帯で出した声がここで反響して増幅されるので、いわゆる深い声とか響く声になります。空間をあけるために動かす主な部分は上あごの後半分にあたる軟口蓋と口蓋垂(喉ヒコ)と舌です。軟口蓋と口蓋垂は上にあげる感じ、舌は平たくして喉の方に下げる感じにします。ただし軟口蓋と口蓋垂は上げ過ぎると閉鼻声という鼻が詰まった感じの声になってしまいますので、適度なところを探す必要があります。口を開けた突き当たりにある咽頭壁も動きますが、ちょっとコツが必要で練習は難しいと思います。首とか喉に力が入らず軟口蓋や舌を動かせるようになれば理想的です。 さてもうひとつのあける場所は喉頭前庭・喉頭腔から中咽頭にかけての空間、つまり声帯の上から舌の根元あたりにかけての空間です。ここの空間を広げると声帯で出した声がそのまま口腔に届くのでよく通る声になります。この喉頭前庭・喉頭腔から中咽頭にかけての空間はあけるためにどこかを動かす必要はありません。ここの空間はもともと何もしない状態で開いているので、余分な力さえ入らなければ通る声になるはずです。しかし声を出すということは声帯に力を入れるということですので、つい発声と一緒に喉頭や口腔の筋肉にも力が入ってしまいます。そうなるとこの空間は狭くなって声は通らなくなってしまいます。できるだけリラックスして目的の筋肉のみに力を入れられるようトレーニングしましょう。 なお頭の位置・首の角度などにより自然に舌や声道の形は変わりますので、それを利用して空間を広くする工夫もありますが、自分でコントロールできたほうがどんな状況でも使えて便利でしょう。喉頭を圧迫するような無理な角度はNGです。 |
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2015 06,01 10:44 |
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◆発声のワンポイント解説◆ vol.009 2015.06.01号より
☆発声にまつわるわかりにくい用語・概念や発声エクセサイズのコツなど、 テーマを毎号ひとつ選んでワンポイント解説します☆ h起声とはハ行起声とも言い、発声エクセサイズをする際に「あ」「い」「う」「え」「お」ではなく、「は」「ひ」「ふ」「へ」「ほ」を用いて発声する練習法です。なにしろ発音を変えるだけですから簡便ですし、それでいて効果が出やすいので発声エクセサイズでは最もよく使われるテクニックのひとつです。声量を上げたい場合、かすれ声や喉詰め声を軽減させたい場合、発声持続時間を伸ばしたい場合などに適応があります。 h起声でなぜ効果があるかというと、例えば「は」と言うためにはまず声帯を開いて息を出さねばなりません。それが声のない息だけの「ハー」という部分になります。その後で声帯を閉じると母音の「あー」になり、先の「ハー」と滑らかに連続することによって「は」の発音になります。ただの「あー」と違うところは先に「ハー」があり、そこから滑らかに母音の「あー」に移っていくので、徐々に声帯を閉じる動きをしていることになります。声量が乏しい方、かすれ声や喉詰め声の方、発声持続時間が短い方はこの徐々に閉じる動きが難しく急に閉じてしまうとか、もしくは喉全体に力が入ってぎゅっと締めて声を出してしまっている場合が多いと思われます。最初に「ハー」ということで喉全体に力が入るのを防ぎ、滑らかに母音の「あー」に移っていくことで声帯が急に閉じることを防ぎます。これがh起声が効果的であることの原理です。 多くの場合はこれともうひとつかふたつ程度のテクニックを併用して練習すると最も効果が上がります。かなり万能な方法ですので声を変えたい場合はまずこれで練習して様子を見てみることをお薦めします。 |
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2015 05,18 08:58 |
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◆発声のワンポイント解説◆ vol.008 2015.05.18号より
☆発声にまつわるわかりにくい用語・概念や発声エクセサイズのコツなど、 テーマを毎号ひとつ選んでワンポイント解説します☆ 発声エクセサイズをする際には必ず姿勢に注意するように言われます。背筋をまっすぐにとか、足を肩幅に開くとか、頭は肩の線に揃えてとか。中には姿勢がちょっとでも崩れると非常に厳しく注意する指導者もいます。足とか背筋とか実際声とどの程度関係あるのか疑問に思われる方もいると思います。 実のところ足幅にしろ背筋にしろその形でなければならない、ということは全くありません。発声時に一番大切なことは喉に余分な力が入っておらずリラックスしていることなのです。 足をどうこう言うのは、例えば足を揃えて立っていたりすると不安定でふらふらしやすい。そうすると立て直そうと思って体に力が入る、自然に喉にも力が入る、だからふらふらしない足幅をとっておこう、というわけです。足を閉じていてもふらふらせず、リラックスして立っていられるならわざわざ肩幅に足を開く必要はありません。頭も背筋も肩も全て同じことです。いわれた姿勢を維持しようとしてガチガチに力を込めてしまったりすると、もうなんのための姿勢だか全く分からなくなってしまいます。あくまでその姿勢をとるとリラックスする人が多い、ということにすぎません。ただし位置的に喉頭を圧迫したり、息を吸いにくい姿勢はお薦めできませんが、それを除けばあまり杓子定規に考えすぎないことです。 ところで声をよくするための工夫として、上体を倒して発声するとか、首を振りながら発声するとか、前屈しながら発声するなどのようなやり方があります。これは固定していると緊張してしまう筋を動かすことでリラックスさせようという意図で行われるものです。動きそのものには大抵それほどの意味はありません。 いずれにしろ訳も分からず言われたから、書いてあるからその通り守るではなく、意味を考えつつ自分にあったやり方を探してみるのがよいでしょう。 |
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2015 05,04 06:02 |
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◆発声のワンポイント解説◆ vol.007 2015.05.04号より
☆発声にまつわるわかりにくい用語・概念や発声エクセサイズのコツなど、 テーマを毎号ひとつ選んでワンポイント解説します☆
裏声はファルセットともいいますが、声を順に高く出していくとあるところで急にオクターブが上がったり、声が細く頭に響くような、違う聞こえ方の声に変わります。これが裏声です。声は通常は声帯を閉じて息を出し声帯粘膜を振動させることで実現するのですが、裏声の時には声帯を閉じず開いたままで息を出し声帯粘膜を振動させ発声します。裏声になると声の感じが変わるのは全く別の発声の仕方になっているためです。ボイトレの本によっては裏声は仮声帯で出すとか頭に響かせると出るとか書いてあるものもありますが、解剖学的には上記が真相です。ちなみによく声が裏返ってしまった、という言い方をしますが、このような意図していないのに裏声が出てしまう現象のことを声の翻転といいます。
さて、ミックスボイスという言葉があります。ミドルボイスとも言うようですが、これは地声と裏声の中間の声というような意味で使われているようです。地声の上限と裏声の下限の間には何度かの音程の開きがあるのですが、ボイストレーニングではこの開きの部分の音程を出せるようにして声域を広くしようという考え方があります。そのためこの開きの部分をミックスボイスと呼び、ミックスボイスのトレーニングが盛んに推奨されています。このミックスボイスですが、声帯と仮声帯を同時に使うとか、やっぱり色々誤った解釈がなされています。声を高くするのは被裂筋が声帯を引っ張るのと輪状甲状筋が声帯を引っ張るのとでやっていますが、際限なく引っ張れる訳ではもちろんありません。構造上の制限があります。地声の上限は数度であれば上げられるでしょうが、それ以上は無理です。後は裏声の下限を下げて地声と繋げると連続した感じになります。裏声の独特な聞こえを地声に近い感じに微調整すれば出来上がりです。これがミックスボイスです。
さてこの裏声は日常生活では特に出番はありません。作り声で使われるか、驚いたりした時に無意識に出てしまう程度です。ただし過緊張発声が著明な場合、裏声発声をさせることによって、過緊張発声の軽減を図ることができる可能性が考えられます。声門閉鎖を行う被裂筋の緊張が高く声門閉鎖が強すぎる場合、声門閉鎖をしない発声法である裏声発声をさせることで被裂筋の緊張を高めず発声させることが可能だからです。
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2015 04,20 06:02 |
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◆発声のワンポイント解説◆ vol.006 2015.04.20号より
☆発声にまつわるわかりにくい用語・概念や発声エクセサイズのコツなど、テーマを毎号ひとつ選んでワンポイント解説します☆ 歳をとると誰でも疲れやすくなったり転びやすくなったりします。これは筋力が衰えるためです。筋力の衰えは筋肉の量が減少することにより起こりますが、筋肉量の減少は、筋繊維の数が減ることと筋繊維自体が萎縮することにより起こります。 筋繊維の数が減るのは歳をとると筋肉の材料となるタンパク質の合成能力が低下するためです。高齢者では若年者と比べてタンパク質の合成により多くのアミノ酸が必要なことが近年わかってきました。筋量は50歳を越えると急激に減少をはじめ、1年に1%くらいの割合で減少します。75歳頃には若い頃のおよそ半分の量にまで減少してしまいます。 もうひとつの筋繊維の萎縮は不活動により生じます。不活動状態が続くと代謝が低下するため、タンパク質合成より分解の方が多くなることで、筋の容量が少なくなり、筋委縮が起こってしまいます。筋委縮は筋力低下を引き起こしますが、安静による筋力低下は、健康な人でも1週目で20%、2週目で40%、3週目で60%と言われています。歳を取ってくると活動量が減り不活動状態が続きがちになってしまいますが、筋委縮により筋力は50歳以降10年間に15%ずつ減少するといわれています。 さらに筋肉には遅筋と速筋があります。遅筋とは運動速度は遅いが疲労しにくく長い間力を発揮し続けられる、いわゆるマグロタイプの筋肉です。マラソンなど持久力が求められる選手には遅筋が多く見られます。一方、速筋とは運動速度が速く瞬間的に力を発揮できる、いわゆるヒラメタイプの筋肉です。短距離走選手などには速筋が多く見られます。歳を取ると速筋・遅筋共に数が減りますが、萎縮は遅筋では比較的軽度で、速筋の方がより多く失われます。そのためお年寄りは素早い運動ができなくなります。なお、不活動状態が続くと今度は遅筋も減少してきますので、お年寄りはできるだけ不活動状態を続けないことが大切です。 さて従来、遅筋と速筋の割合はトレーニングしても変わらないと考えられていましたが、近年、瞬発的なトレーニングをすると速筋に、持久的なトレーニングをすると遅筋に変化することがわかってきました。これはお年寄りでも同様です。軽い運動でもお年寄りにはかなりの運動になりますので、軽めの瞬発的なトレーニングを行って筋力の維持向上を図ることが充分可能です。 お年寄りで声が出しにくい場合は概ね呼吸筋の筋力不足が原因です。呼吸筋の瞬発的トレーニングを行って発声を促し、続けて持久的トレーニングを行うのが良いと思われます。 |
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2015 04,06 05:56 |
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◆発声のワンポイント解説◆ vol.005 2015.04.06号より
☆発声にまつわるわかりにくい用語・概念や発声エクセサイズのコツなど、テーマを毎号ひとつ選んでワンポイント解説します☆ 前回は神話的に語られることの多い腹式呼吸について、科学的な意味とメリットを解説しました。今回はその続きで、「発声のための腹式呼吸の科学的なトレーニング方法」について解説します。 腹式呼吸のトレーニングというと、仰向けになって頭の後ろで手を組んで起き上がる、いわゆる腹筋運動とか、同じく仰向けで脚と上体を持ち上げてV字になって発声とか、お腹の上に重りを乗せての発声とか、この辺りを想像される方が多いのではないでしょうか。実際にこれが指導されることも多いようです。しかし腹筋を鍛えて腹式発声ができるなら、散々鍛えているボディービルダー、重量挙げ選手、柔道や野球選手、サッカー選手、みんな声が良くなるはずですよね。でも現実は違う。ここには誤解があるのです。 おさらいをしますと、腹式呼吸の場合、息を吸うときには横隔膜が収縮して下がり肺が広がるので、水がスポイトで吸われるように息が肺に入ります。発声のために息を吐くときには横隔膜が弛緩するとともに、腹直筋・腹横筋などの腹筋群が収縮するため腹腔の内臓が変形・移動し横隔膜を押し上げて肺が縮み息が出ます。 ここで発声に活かすために知っておくべき重要なポイントは3つ。横隔膜を動かすには腹部の複数の筋が必要なことと、横隔膜は直接腹筋群に動かされているわけではないこと、そして、吐くとき横隔膜が充分弛緩していなければならないことです。 単純な腹筋運動は腹直筋のみの収縮を促しているに過ぎず、これだけでは横隔膜を充分動かせません。腹直筋だけ収縮しても内臓は背側や脇側などへ移動してしまい、横隔膜を押すとは限らないからです。背筋トレーニングをすごく推奨している本もありますが、そこまでではないにしてもある程度脇腹の腹横筋や背筋の収縮は必要になります。 息を吐くときには横隔膜が充分弛緩していないと横隔膜をしっかり押すことができません。発声も同時にさせるなら喉頭やその周囲もリラックスしていないといけません。V字発声などはわざわざ発声が難しい状況を作り出していることになり、決して練習法として適しているとは言えません。 そして腹式呼吸を強化したいなら横隔膜で息が吸えているかどうかの確認が必要です。胸式で息を吸っている人が、いくら腹筋群で横隔膜を押してもそもそも横隔膜は動いていないので押されようがありません。 ということで、腹式呼吸のトレーニングをするならこれらを押さえた上での実施が効率的です。 そして最後に最も重要な誤解は、これら腹直筋や腹横筋のトレーニングを呼吸と全く別にやってしまうことです。類似運動は似て非なるものにすぎません。呼気を強化したいなら実際に息を吐きながら練習するのが一番です。その考え方に基づいたトレーニング法が発声フィジ・エクセの負荷ブローイングです。ぜひサイトを参照してみて下さい。 リンク→ http://physiexvoice.client.jp/kaisetsu13 |
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2015 03,16 06:00 |
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◆発声のワンポイント解説◆ vol.004 2015.03.16号より
☆発声にまつわるわかりにくい用語・概念や発声エクセサイズのコツなど、テーマを毎号ひとつ選んでワンポイント解説します☆
発声トレーニングとかボイトレというと、たいていの指導者に「とにかく腹式呼吸ができなければダメ」と言われます。たくさん出ているボイトレ本をみてもほとんどが判で押したように「腹式呼吸で!」と書いてありますね。さながら腹式呼吸は神聖不可侵の神話のようです。でもその理由となると、力強い声になるから、声が深くなるから、大きく吸えるから、というものから、集中力が高まるから、どっしりするから、気が高まるから、支えとして不可欠だから、というものまで。これだけ多種多様ではちょっと説得力に欠けるというものです。
発声に呼気が必要なのはいうまでもありませんが、実はそこに腹式・胸式の差はありません。腹式の方が肺活量が多くなるということもありません。腹式だと声が続くというのも間違い。そもそも肋間筋などの胸式呼吸のための筋と横隔膜などの腹式呼吸のための筋の間に特に機能の差はありません。生物学的に考えても差をつける意味がありませんよね。要は息さえきちんと出ていれば声はちゃんと出るのです。胸式と腹式と二つあるのは、たぶん呼吸が生命維持に不可欠なので一方が使えなくなった時の予備システムだと思います。ちなみに通常は男女の差なく誰でも多かれ少なかれ両方の呼吸を同時にしています。その割合が人により異なるだけです。
ではなぜ腹式がこんなに推奨されるのでしょう。
問題は筋肉の場所です。胸式呼吸で主に使う筋肉は肋間筋ですが、呼吸補助筋として喉頭のそばにある胸鎖乳突筋や斜角筋も使います。胸式呼吸をすると多かれ少なかれこれらの補助筋にも力が入りますので、場所が近い喉頭筋にもつい一緒に力が入ってしまいます。そのため胸式で発声すると声道が狭くなって声が小さくなったり、響かなかったり、長く続かなかったり、ということが起こってしまいがちなのです。一方、腹式呼吸で使う横隔膜や腹筋群は喉頭から遠いため、こちらのほうは喉頭の動きに影響しません。従って呼吸によって声道が狭くなることもありません。腹式が胸式よりも有利な点はここにあります。逆に言えば、喉頭に余分な力さえ入らなければ、胸式であっても一向に差し支えないということになります。胸鎖乳突筋や斜角筋だけが働くようにコントロールすれば良いのです。
ただしウォームアップやトレーニング、呼吸のコントロールのしやすさ、ということまで考えると確かに腹式の方がやりやすいと思います。腹筋群は場所的に見やすいですし、筋肉も大きいので確認が容易ですから。
つまり腹式呼吸に良い点があるのは確かですが、その主なメリットはトレーニングがしやすい、ということに尽きます。ですから胸式の方が自分には合っているとか、腹式は練習しにくい、という方は胸式を選んでいただいて全く構いません。腹式呼吸というものは神話化せねばならないほど絶対的なものではないのです。
次回はこの続編、「腹式呼吸トレーニングの誤解」をお届けします。
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2015 03,02 06:10 |
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◆発声のワンポイント解説◆ vol.003 2015.03.02号より
☆発声にまつわるわかりにくい用語・概念や発声エクセサイズのコツなど、テーマを毎号ひとつ選んでワンポイント解説します☆
過緊張発声とは、喉にぐっと力を入れて声を出している状態で、リキみ声という言い方で言われたりもします。ごく軽いものまで含めれば、ありふれてよくみられる現象です。そして声に過緊張が起こるタイミングと部位によって3種類のタイプに分けられます。
第一は声の出し始めのタイミングで声帯に力が入ってしまう状態。これは硬起声と呼ばれて、聞き手には硬いしゃべり方に聴こえます。第二は出し始めだけでなく声を出している間ずっと力が入っている状態です。この場合は大体ガラガラ声とかダミ声といわれるような声、あるいは苦しそうな声になります。ガラガラしたような声は粗ぞう声、力が入って苦しそうな声は努力声と呼ばれます。かすれ声になることも珍しくありません。第三は声帯だけでなくその周囲、または喉頭全体に力が入っている状態。この場合はこもったような声や詰まった苦しそうな声になります。喉詰め声ともいわれ、大体の場合、声量も小さめになります。3種類と書きましたが、それぞれは単独でみられるというよりは2種類または3種類が混ざってみられる場合も多いので、パターンとしては7通りあることになります。
何らかの疾患でこのような声になる場合もありますが、多くは声帯や喉頭の筋肉をうまくコントロールできなくて、または周囲が常に騒がしいなど環境が原因で、あるいはなんらかの理由で力を入れて声を出すことが習慣になってしまってこのような声になっています。第一と第二は力を入れて声を出すために声帯が滑らかに動かずカクカクとした動きになってしまった結果です。他に息の力が弱いためにそれを補ってしっかり声を出そうとしてリキんだ声になってしまう場合もあります。
第一の硬起声の方は世間でよく見かけます。若い女性には特によくみられますが、これでお困りの方は話すことをお仕事にされる方、印象を重視される立場の方を除けばほとんどいないでしょう。第二と第三でお困りの方は一定数いらっしゃると思います。
よく喉の力を抜け、といわれますが、それでできれば苦労はないと思われます。あくびーため息法とか、笑い声発声とか、いろいろな方法がありますが、発声フィジ・エクセでは喉頭のストレッチ+は行発声によりリキみの解消を図ります。
自主練習法は以下のリンクをご覧下さい。
またこのような声の方の発声指導法は以下のリンクをご覧下さい。
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2015 02,16 06:20 |
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◆発声のワンポイント解説◆ vol.002 2015.02.16号より
☆発声にまつわるわかりにくい用語・概念や発声エクセサイズのコツなど、テーマを毎号ひとつ選んでワンポイント解説します☆
筋トレ=筋肉を鍛えること、というイメージですが、実は目的によってその中身は大きく異なりますので今回はその解説をします。
筋肉を鍛える方向性は大きく分けて三つ、第一は強い抵抗を押しのけて運動できること。これが典型的な筋トレのイメージでしょう。第二は運動のスピードが速くなること。短距離走とかタイムトライアル的なものはこれですね。第三は運動を長く続けられること。マラソンなどです。どれを鍛えたいかで方法も全く異なりますので、目的をはじめにはっきりさせておくことが必要です。それぞれの名称は筋力トレーニング、スピードトレーニング、持久力トレーニングということになります。
それでこれを発声に当てはめると、声量を上げることが目的の場合は、主に呼吸筋の筋力トレーニングが必要になります。狭い気道から一気に多量の呼気を出さねばなりませんので、イメージとしてはビーチボールの空気をギュッと押して空気を一気に出す感じです。これにはなかなか呼吸筋の力が要りますので、筋力トレーニングというわけです。声を長く出すことが目的の場合は、呼吸筋と喉頭筋の持久力トレーニングが必要になります。これはアクセルとブレーキを調節しながらゆっくり踏み続けるように呼気筋・吸気筋・喉頭筋の力を加減しながら入れ続けねばなりませんので、強い力は要らず持久力トレーニングが必要になります。スピードトレーニングは発声にはあまり必要なく、歌唱などの特殊な発声をしたい場合のみ関係します。
高齢者でも筋肉を鍛えることは可能なことが確かめられていて、特に中程度の力を出すことができて比較的疲れにくいタイプⅡaという筋肉を鍛えると増加できるといわれています。
筋力のトレーニングは負荷を中程度にして5回程度の運動が効果的。持久力のトレーニングは軽い負荷にして10回程度の運動にしますが、高齢者の場合は、同じ回数をやるにしても一回ごとに休憩をとり、疲労物質の蓄積を抑え、筋の回復を促すと良いでしょう。これにより血圧の上昇など高齢者で配慮すべきリスクも軽減できます。疲れを翌日に残すほど行うのは禁物です。
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2015 01,31 08:35 |
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◆発声のワンポイント解説◆ vol.001 2015.02.02号より ☆発声にまつわるわかりにくい用語・概念や発声エクセサイズのコツなど、テーマを毎号ひとつ選んでワンポイント解説します☆
手順はリンクを参照していただくとして、皆さんよくわからないご様子なのが、喉頭の下部側方を指でどのぐらい押すのかということです。 リンク→ http://physiexvoice.client.jp/kaisetsu23.html 筋を押すというのはどういうことかというと、 例えて言えば伸ばした輪ゴムを横から押して「く」のような形にしているということです。つまり横から押すことによって筋を伸ばしているのです。これは要するにストレッチの変形というわけです。ここの筋は構造上引っ張るような形でストレッチするのが難しいので、このような方法をとります。 ですから押せば押すほど筋は伸びることにはなるのですが、押しすぎると当然痛くなってしまいます。痛いと反射的に筋を硬くしてしまうので逆効果。つまり痛くない程度にできるだけ押すのがいいのです。自分で行う際には痛みを感じない程度に押せばいいのですが、他者に行う場合その加減を見極めるには、まず一度ちょっと押してどの程度行きそうか様子をみてから、ゆっくり押し始めます。で徐々に押していく感じにします。粘土を押していくようなイメージですね。それでおよそ行ける範囲の半分程度に来たら固定しましょう。そこまでの間でもちょっと引き気味な感じがみられたら少し緩めて下さい。指先で押すと痛くなるので指の腹を使ってできるだけ広い面が接触するように。特に爪があたったりしないように気をつけましょう。 押す際に頭部を回してやや横を向かせるのは、筋を緩ませるためです。首が正面を向いても真横を向いても筋は緊張しています。そのどちらでもない中間位が最も筋が緩んでいますので、首は斜め前向きの位置にしてストレッチしましょう。思いっきり回すのはかえって効きませんので気をつけて。 後は頭がグラグラしないよう反対側の手で支えておくとやりやすいでしょう。終わった後は少しマッサージをしておくと違和感が残らず良いと思います。ぜひ試してみて下さい。 |
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